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アイラ・レヴィン「ステップフォードの妻たち」

2005-08-25 12:56:37 | 読書
 映画「ステップフォード・ワイフ」の原作で、映画を観たあと読んだのは失敗だった。映画が原作に忠実ではないが、ジョアンナを演じたニコール・キッドマンやボビイ役のベッド・ミドラーがちらついて集中できなかった。イメージが具体的に提示されていると勝手が違う。

 ステップフォードに引っ越してきたジョアンナが最初に見たのは家事に精を出す妻たち、そしてお茶の誘いにも断られる始末。そんな妻たちに批判的な二人の親友もやがて同じような妻に変貌していく。自分も変わるかもしれないと危機感を抱いたジョアンナはほかの町へ引越しを決意するが、夫のウォルターは納得しない。

 精神科医と相談したり、図書館で男性協会のメンバーがディズニーランドの「機械仕掛けの人形館」で働き動き、話す大統領の人形制作に協力した人や、コンピューター・システム開発の技師や、ビニール・ポリマーの研究者、マイクロ回路部門の社員、音響部門社員、自動安定装置の社員といった情報を集めたりして、ある確信にいたる。

 それは妻たちのロボットを作っているということ。美人で健康でよく働き従順、おまけにすばらしい肉体とそれに男たちの最大の関心事セックス・テクニックに優れているという夢のような女を作っている。本物の方はどうなる?焼却炉?それともステップフォード池の底?で、はなしの結論として、ネタバレになるが、結局女のロボットは、ジョアンナの勘違いでステップフォードの妻たちの仲間入りを果たすことになる。

 くどい表現もなく適度のユーモアでアメリカ郊外の生活を、サスペンスにくるみ描写している。ただこの作品が書かれた1972年頃は、ウーマンリブ運動が盛り上がっていて女性の地位向上や性の解放が叫ばれていた。ジョアンナも性革命の主唱者ケイト・ミレットや全米女性機構の設立者のベティ・フリーダンの名前を口にしている。当時の若い女性は少なからずウーマンリブ運動に影響されていたのかもしれない。

 この本の解説にも“保守的な考えの男たちにとって、ウーマンリブ運動を単なる頭痛の種とはいえないような巨大な邪魔者に成長してきたのである。「ステップフォードの妻たち」が、明確に女性解放を諷刺する作品だといえるかどうか、筆者には分からない”といっている。

 時代がやや古いので、こんな描写が分かる人は少ないと思う。
「ピーター・ローレ見たいな顔つきの子にとってはね」とボビイが言った。
このピーター・ローレというアメリカ映画の脇役のことを知っていればにやりとする箇所だ。独特の雰囲気を持っていて、私の好きな俳優の一人だった。ずいぶんと昔の時代設定になっているが、トヨタやソニー製品が出てくるのも、このころすでに日本は頑張っていたのだなーと感慨深い。

 ピーター・ローレを知らない人のために、映画「カサブランカ」からの写真をつけておきましょう。
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