MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

貞淑な醜女になるべきか否か

2013-09-02 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
米原 万里さんの名著
「不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か」の中に表題にもなっている逸話がでてきます。

通訳には「不実な美女」(つまり正確な訳ではないが日本語として響きが良い)と
「貞淑な醜女」(美しくはないが内容が正確に反映されている)があり使い分けていると。

米原さんはロシア語の同時通訳者だけど、
在住外国人支援のコミュニティ通訳はどうなのでしょう。

そういえば、10年ほど前、
助産師で昔から医療通訳の活動をしているKさんと
「通訳技術に優れているが、接遇技術にかける通訳者」と
「気働きができて、対人援助技術は抜群なんだけど通訳技術はそこそこの通訳者」と
どちらがいいだろうと議論したことがあります。

Kさんは即答で前者だと答えました。
接遇は訓練でなんとかなるけど、通訳技術は簡単には身につかない。
なるほどなあと思いました。

外国人支援の現場では、後者の通訳者に人気があります。
通訳技術はほどほどでも、優しくて気働きのできる通訳者。
ユーザーにとって携帯を教えてくれたり
時間をあわせてくれる都合のいい通訳者も人気があったり。
通訳技術より、横にいて手を握ってくれる通訳者がいいという人もいます。
そんな世界にどっぷりつかっていると、
通訳技術はまあまあだけど・・という通訳者が出来上がっていきます。

「両方できるのが一番いい。」

もちろん、そうなのですが、
在日外国人の人たちの在日年数が伸びで
日本語能力が進んでくるにしたがって、
まあまあの通訳者は「通訳」としては駆逐されていく運命にあります。
それに変わって外国人の診療支援をできるコンシェルジュのような人が
必要になってくるのかもしれません。
それは分けて医療通訳と分けて考えなければなりませんね。