MEDINT(医療通訳研究会)便り+

医療通訳だけでなく、広く在住外国人のコミュニケーション支援について考えていきます。

怒りの矛先

2013-07-08 00:00:00 | 通訳者のつぶやき
通訳相談員という仕事をしていると
「怒り」という感情を表に出さないようになります。

通訳や相談員が先に怒ってしまうと
本来、怒るべき当事者が怒れなくなってしまうからです。
だからできるだけ客観的にその場所を見るようにこころがけています。

でも時々、「ハラワタが煮えくり返る」場面に出会うことがあるのです。

それは、言葉ができない、日本の法律がわからないということで外国人を騙す人がいること。
これは日本人に限らず、同じ国の同胞が騙すこともあります。

給与明細が読めないから、
契約書がわからないから、
就業規則が理解できないから、
日本の法律がわからないから、
わからない外国人が騙される。

これは、通訳相談員としては許されない思いです。

もし、その人が言葉ができたら、
書いていることが理解できたら、回避できたトラブルだからです。

契約期間終了間際に社会保険料が控除されている。
給与明細をきちんと読めなければ、何のための控除が理解できない。
それも巧妙に金額はきちんと標準報酬月額にあわせてある。
その一枚だけをみたら何の不明な点もない給与明細。
だけど、辞めていく人間のために1ヶ月だけ社会保険に入る会社はない。
「1ヶ月だけでも社会保険に加入しているなら保険証を発行してください。
また、この給与明細をもって年金事務所で厚生年金の支払いの確認をします。」
と、伝えると会社は全額返金してきました。
だけど、何も言わなかったらこのお金はどこに行ったのでしょう。
そう考えるとすごく悔しい。
弱い人間が弱い人間を騙すという構造がとても悲しいと感じます。

外国人相談窓口ではこんなことが日常的におこるので、
読めないものはすべてFAXしてもらえば、電話で翻訳していきます。
日本語で書かれたものを必要部分抽出して電話口で読んでいくので、
内容がわかならいと読めませんが、Faxを受理してから5分程度の時間があるので
そのあいだに読み込みます。

翻訳をしながらいつも思うのは
「彼らに強くなって欲しい」ということです。
どんな社会でも移民は本当に大変です。
彼らが日本社会の中で生きやすく強くなるために、
私たち通訳者を使ってくれるのであれば
私たちはよりよい道具になろうと思うのです。

医療現場の通訳は基本的に治療のために皆が力をあわせている現場なので
そうした怒りを感じることはありません。
医療現場では怒りを感じることなく、
リラックスして安心して治療が受けられる日本社会でありたいと思います。