最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。

函館で地域限定の医療・介護雑誌を発刊している超零細出版社「メディカルはこだて」編集長の孤軍奮闘よれよれ・ときどき山便り。

祖国を離れる中国人

2023年06月10日 17時57分07秒 | 新聞コラム
北海道新聞みなみ風の「立待岬」。
6月9日掲載のタイトルは、「祖国を離れる中国人」



 「四日、午前二時すぎなり。突如、地響きたてて来たるものあり。戦車なり」。1989年6月4日、作家の水上勉さんは中国・北京の天安門近くの北京飯店に宿泊していた。天安門広場は民主主義を求める学生らで埋め尽くされたが、共産党政権が武力で鎮圧し、多くの死傷者が出た。
 天安門事件に遭遇した時から水上さんの不調は始まった。帰国後の入退院の日々を描いた「心筋梗塞の前後」には当時、ホテルの便箋に走り書きした多くのメモが紹介されている。
 十数年前、函館市内の病院に勤務していた中国人の精神科医Kさんと会った。好きな日本語は「暴飲暴食」。自分の腹を指さして「その結果がこれ」と笑った。天安門事件当時、大学生だったKさんは大学を中退して来日。「大学で反省文を書かされる毎日に嫌気がさし、外から自国を見つめる良い機会」と決意した。
 1年後に京大学工学部に入学。卒業後はエンジニアとなるが再び受験勉強をして大阪大医学部に合格。「精神医学を勉強していた友人に触発」され、精神科医となった。函館を離れたKさんは現在二つの診療所を運営している。
 中国では民主化を求める勇気ある行動はなくならない。今月3日には北京市内で女性が自由と民主を求めるビラをまく動画が、ツイッターで拡散した。Kさんにとっても天安門事件は終わっていないはずだ。
(メディカルはこだて発行人・編集人)
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