北海道新聞みなみ風の「立待岬」。
2月29日掲載のタイトルは「東北の鍋セットの思い出」。
寒さが身に染みる冬の夜は鍋が一段と美味しくなる。全国各地にはその地域ならではの鍋料理があるが、この時期になると東北地方のある鍋のことを思い出す。
12年前、全国紙に小誌のことが紹介された。地域限定の医療雑誌という珍しさがその理由だろう。記事には「これからも地域に根ざした医療情報の発信を続けるが、各地に同じ試みがあったら、是非連携したいとも考えている」というコメントも紹介された。
地方の医療雑誌と連携したいという考えは、今も変わらない。各地の医療機関や医療者の取り組みには、それぞれ特徴がある。
地域の情報を互いの誌面で紹介する試みは面白いと考えていた。全国から問い合わせがあったが、特に熱心だったのは東北と関西の、どちらも出版業とは異なる経営者で、地方医療雑誌発刊の意欲があった。
その年の暮れに東北の経営者から、小誌への質問が同封された鍋セットが送られてきた。おいしい味を堪能した後で、A4判3枚を埋め尽す質問に、どうにか回答を書き上げた記憶がある。
その経営者からは記者を雇ったと連絡があったが、収益は見込めず、発刊には至らなかったようだ。私はビジネスモデルとして始めた訳ではなく、収益を上げるための仕組みと考えたこともない。冬になると東北の鍋の味がよみがえる。各地の人に誤解されたのかもしれない雑誌は今冬、57回を数えた。
(メディカルはこだて発行・編集人)