第84号では函館市医師会病院の黒川貴則外科科長を取材した。
日本では2016年に保険適用となった甲状腺疾患に対するVANS法(内視鏡補助下甲状腺手術)は、整容性に優れた術式として注目を集めている。国内では「吊り上げ法」としてアレンジされて以来、普及が進んできたが、函館市医師会病院(金子行宏病院長)は2019年1月からVANS法を導入、同病院で手術を希望する患者が増えている。外科科長の黒川貴則医師に話を聞いた。
黒川医師は北大卒後、関連病院勤務を経て、2004年函館市医師会病院に赴任した。日本外科学会や日本消化器外科学会の専門医・指導医のほか、日本内分泌外科学会の内分泌外科専門医・指導医の資格を有する甲状腺疾患を専門とする外科医だ。
甲状腺は喉ぼとけの下に蝶が羽根を広げたような形で左右に広がる臓器で、代謝調節や成長促進を促す甲状腺ホルモンを分泌している。甲状腺の疾患には、甲状腺にしこりができる良性・悪性腫瘍や、ホルモン分泌に異常が生じる甲状腺機能低下症・同亢進症などがある。
甲状腺の悪性腫瘍には、乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、髄様(ずいよう)がん、未分化がんなどがあるが、乳頭がんは甲状腺がんの90%以上を占める。黒川医師は「乳頭がんは女性に多く、若い人から高齢者まで幅広い年代にみられます。極めてゆっくり進行し、予後がよい悪性腫瘍で、ガイドラインでは転移や浸潤を認めない1㎝未満の乳頭がんは経過観察でも良いとされています」と話す。
「濾胞がんは甲状腺がんの中で2番目に多いがんで(約5%)、血行性転移では肺や骨など遠くの臓器に転移することがあります。髄様がんと未分化がんは共に甲状腺がん全体の1~2%程度です。未分化がんは非常に予後の悪いがんで、急速に進行します」
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函館市医師会病院の黒川貴則外科科長