最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。

函館で地域限定の医療・介護雑誌を発刊している超零細出版社「メディカルはこだて」編集長の孤軍奮闘よれよれ・ときどき山便り。

薬が効き過ぎた

2015年03月03日 12時22分02秒 | 新聞コラム
北海道新聞みなみ風の「立待岬」。
3月2日掲載のタイトルは「薬が効き過ぎた」。



 「大みそかに芝浜を聞きながらこれを書いています」。落語好きの知人の年賀状だ。大金入りの財布を拾った仕事嫌いで酒好きの亭主とその女房を描いた人情話「芝浜」を演じる噺家は多いが、立川談志が演じた女房は愛らしさが心に残る。 
 談志の「金玉医者」も好きだ。大店(おおだな)の旦那の娘が伏せてばかりいる。原因不明でどの医者もさじを投げるが、評判になっているうさんくさい医者に診療を依頼。「ふたりだけで診察をするので入らぬように」とふすまを閉める。治療らしい治療はしていないようだが、3、4度と往診すると娘はすっかりよくなった。
 旦那は治療の秘密を知りたくなり、医者を訪ね、さらに100両の謝礼を渡して問いただす。「他人に言ってもらっちゃ困りますよ」。治療は着物の前をはだけながら、立膝をする。下帯(ふんどし)はゆるめてあるので、ときどきぶらぶらするものが見える。気の病の娘はそれを見て笑うようになる。
 「ばかばかしい。それなら、わしでも治せる」。そのうち再び娘の具合が悪くなると、旦那は真似をしたが、娘は絶叫し、目を回す。あわてて医者を訪れ、「娘が大変です。先生と同じことをしたんですが」。「いっぺんに全部見せた。そりゃいかん。薬が効き過ぎた」。
 示唆に富む噺だが、江戸時代に実在のモデルがいたそうだ。薬が効き過ぎるのは医療の世界ばかりではない。効果がありすぎると逆の結果になるのはよくあることだ。
                                       (メディカルはこだて発行・編集人)

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