函館五稜郭病院(中田智明病院長)と高橋病院(高橋肇理事長)は、肺がん患者の術前リハビリテーションの連携を開始した。肺がん患者は函館五稜郭病院で手術をする前に高橋病院に入院し、約1週間程度のリハビリを実施する。目的は術後の合併症を減らし回復を早めるため。術前リハビリを急性期病院と回復期病院とが連携するのは、国内ではほかに例がない取り組みだ。肺がんは1998年に胃がんを抜いて肺がんが死亡率の第1位となった。肺がんの患者数は増加傾向にあり、道南地区では肺がんと診断されるのは年間約600人で、そのうち60%以上が同病院で診療をしている。同病院では増えている肺がんを始めとする呼吸器疾患の早期からの集学的治療と予防を目指して2019年に「肺がん・呼吸器病センター」を開設、診療科や職種横断的な診療体制を整えている。肺がんの集学的治療の一環としてリハビリを積極的に行ってきたが、その結果として合併症率は低く抑えられてきた。術前リハビリも術後の合併症の発生率低下に効果があるとされている。
呼吸器外科科長で肺がん・呼吸器病センター長を兼務する上原浩文医師は「呼吸器リハビリに習熟した多くの理学療法士が在籍している高橋病院とは、昨年より連携実現への課題など話し合いを重ねてきました。一人暮らしの高齢者が手術後に自宅に戻って、以前と同じ生活をするためにはリハビリが必要です」と話す。しかし同病院のような急性期病院では入院期間も限られることから十分なリハビリを行うことはできない。
副看護部長の鈴木沙織さんは「今までは手術後の回復に時間を要する患者さんが回復期病院へリハビリ転院をすることがありました。それを手術前から回復期病院でリハビリを行うことで、手術後の回復を早めることが可能になると考えています」と言う。「術前リハビリによりADL(日常生活動作)能力が手術前のレベルに速やかに戻れることを期待しています」
(第89号記事より一部を抜粋)
写真左から函館五稜郭病院呼吸器外科科長の上原浩文医師、副看護部長の鈴木沙織さん、
リハビリテーション科の浅地菜々子さん、地域連携・PFMセンター主任の古川伊代さん、
呼吸器外科の慶谷友基医師、リハビリテーション科科長の中釜郁さん
函館五稜郭病院(中田智明病院長)と高橋病院(高橋肇理事長)は、肺がん患者の術前リハビリテーションの連携を開始した。肺がん患者は函館五稜郭病院で手術をする前に高橋病院に入院し、約1週間程度のリハビリを実施する。目的は術後の合併症を減らし回復を早めるため。術前リハビリを急性期病院と回復期病院とが連携するのは、国内ではほかに例がない取り組みだ。
高橋病院で術前リハビリを担当するリハビリテーション科は50人以上のセラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が在籍している。呼吸器リハビリテーションに習熟している多くの理学療法士がいるが、科長の三島誠一さんは日本胸部外科学会、日本呼吸器学会、日本麻酔科学会の3学会合同の呼吸療法認定士として、2008年高橋病院に赴任。同病院の前は、山形医療技術専門学校(山形県山形市)の教員として、呼吸器系や循環器系の運動負荷に関する指導と研究を行っていた。
肺がんの術前リハビリについて、三島さんは「手術前の筋力や栄養面の強化は整形外科の領域では経験がありますが、がん患者のリハビリを行う試みは、とても興味深いと思いました」と語る。「術前リハビリは非常に注目されるようになってきました。術後より術前の効果が認められるという論文も次々に発表されています」。連携は今年4月から本格的にスタートし、6月までに10人が連携を利用している。「術前リハビリのメニューは個々によって違ってきます。痰が出しにくいなど、この患者さんはどの部分が弱いのかを見極めてメニューを決めます。リハビリ中には手術後に自分で自主トレーニングを行うことも覚えてもらいます。患者さんの情報に関しては、IDーLink(医療,介護の多職種の情報共有ツール)が非常に役立っています」
(第89号記事より一部を抜粋)
写真右から高橋病院リハビリテーション科科長の三島誠一さん、栄養管理室室長の丸山祥子さん、
地域包括ケア病棟師長の塚本美穂さん、総合支援センター地域連携室室長の石井義人さん