[特 集]
函館稜北病院 副院長・総合診療科科長「川口篤也」を知る
急性期病院を持ち回りで開催する「函館オープンカンファレンス」の取り組み
急性期病院を持ち回りで開催する「函館オープンカンファレンス」が、医療や介護などの関係者に高い評価を受けている。2016年12月に1回目がスタートし、今年8月末までに9回が開催された。オープンカンファレンスは急性期病院を退院後に在宅や施設などで亡くなった患者について、情報を共有し合うことで患者や家族の全体像が明らかにされる。さらに経過のプロセスを振り返り、新たな視点でケアを考えることで、次のケアの在り方や方法を検討することを目標としている。
このオープンカンファレンスを企画し、毎回の進行役を務めているのが函館稜北病院副院長で総合診療科科長の川口篤也医師だ。2003年北海道大学医学部を卒業した川口医師は勤医協中央病院で初期研修医をスタート。以降は勤医協苫小牧病院内科、釧路協立病院内科、勤医協中央病院総合診療科、東京医療センター総合内科、勤医協中央病院総合診療センターを経て、16年4月に函館稜北病院に赴任した。
川口医師はオープンカンファレンスのほかに、道内外で開かれる多くの講演会の講師に招かれている。その講演内容は昨年1年間だけに限っても、一部を紹介すると、「SEAの手法を用いた振り返りカンファレンス〜SEAの理論とその応用方法について〜」「ものがたりを重視した在宅医療のススメ」「立ち止まる臨床倫理」「事前指示からACP(アドバンス・ケア・プランニング)へ」「人生覚書〜話し合って考える人生の最終段階〜」「アドバンス・ケア・プランニングを終末期医療に活かす」「在宅医療・介護連携における在宅での看取り」「在宅医療と感染症 実際どうする?治療から感染対策まで」「食べるに関わる倫理問題に直面した時、どう考え行動するか」などで、講演内容は多岐に渡ってる。
川口医師を知るためのキーワードは「地域のために」「多職種」「連携」「オープンカンファレンス」「函館ジェネラリストカレッジ」「ものがたり在宅フェローシップ」「もやもやよさらば!」などが代表的なものだが、その活躍は「八面六臂」という言葉が相応しい。今回は「オープンカンファレンス」について話を聞いた(3回連載します)。
第8回函館オープンカンファレンスで進行役を務める川口篤也医師。
[ピックアップニュース]
様々な医療現場で活躍するIVR(画像下治療)
がん難民の最後の砦として治療や痛みに貢献する
村上健司(函館五稜郭病院放射線診断科医長)
様々な医療場面で活躍の場を広げている治療法がIVRだ。IVRはインターベンショナルラジオロジーのことで、日本語では「画像下治療」と訳している。名前の通り、X線(レントゲン)やCT、超音波などの画像診断装置で体の中を透かして見ながら、カテーテルや針などの細い医療器具を入れて、標的となる病気の治療を行っていく。函館五稜郭病院放射線診断科医長の村上健司医師は道南地区では珍しいIVRの専門医だ。IVRについて村上医師に話を聞いた。
鳥取市に生まれた村上医師は鳥取大学医学部を卒業後、手稲渓仁会病院(札幌市手稲区)、聖マリアンナ医科大学病院(神奈川県川崎市)を経て、昨年4月函館五稜郭病院に着任した。「IVRに興味を持ったのは大学時代からです。鳥取大学ではIVR部門は中国・四国地方はもちろんのこと全国的にも見ても高いレベルの診療を行っていました」。IVRの治療を行うのは、そのほとんどが放射線診断(診療)科に所属する医師で、治療には正確な画像診断技術が求められる。
「IVRの特徴は外科手術のように胸や腹部を切らずに、体の奥にある臓器や血管の治療ができることから、患者さんの体への負担が圧倒的に少ない」と村上医師は語る。「カテーテルなどの医療器
具を入れる穴も数ミリ程度と小さく、器具を抜いた後は縫う必要も
ないので、処置後の傷もほとんど残りません」。1980年代の中頃から日本でも広がり始めたIVRは、今では多くの医療領域で欠かせない存在となっている。
函館五稜郭病院放射線診断科の村上健司医長
[ピックアップニュース]
在宅や施設で予期せぬ死亡(急変)時の対応は
医師も戸惑う医師法20条と医師法21条の正しい理解
福徳雅章(函館おしま病院院長)
日本は高齢化に伴って死亡する人が増える「多死社会」が到来しようとしている。厚生労働省によると、2016年の年間死亡者数は約131万人で、戦後最多を更新。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、団塊の世代全員が75歳以上になる25年には死者は150万人を超え、ピークを迎える40年には約167万人に達すると予測されている。
このような多死社会が進むと、在宅や施設における「看取り」の重要性が増すことが予想される。在宅や施設で療養する場合、無益な延命治療をせずに、自然の課程で死を迎えたいと希望する人も少なくないが、予期せぬ死亡(急変)時には家族や介護者が看取りに際してパニックになることも少なくない。在宅や施設で予期せぬ急変時に、どう対応するのか。函館おしま病院の福徳雅章院長に話を聞いた(2回連載します)。
看取りをしている家族が急変時に慌てて救急車を呼ぶことは少なくない。その結果、死亡時には在宅での看取りのはずが、救急隊や運ばれた病院が警察に連絡をすることがある。警察に届け出ると、どうなるのか。
福徳院長は「警察官あるいは検察官によって検視が行われ、遺体が警察署に運ばれることも多いです」と語る。「犯罪性がなければ警察委託の検案医や監察医により死体検案が行われ、死体検案書が発行されます。検案が行われても、死因が不明な場合は行政解剖が行われることもあります」。自宅での看取りによる最期を望んでいたはずなのに、どうして検視が行われたり、場合によっては行政解剖まで実施されるのだろうか。それは医師法第20条が医療関係者などにも正しく理解されていないことが大きな理由だ。
5月22日道南在宅ケア研究会で「医療法20条、21条の誤解と正しい理解〜死亡診断のルール、異状死体の届出とは〜」と題して講演する函館おしま病院の福徳雅章院長。