最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。

函館で地域限定の医療・介護雑誌を発刊している超零細出版社「メディカルはこだて」編集長の孤軍奮闘よれよれ・ときどき山便り。

糖尿病重症化予防に地域ぐるみの取り組み

2015年04月29日 16時55分35秒 | メディカルはこだて
第54号の特集は「糖尿病重症化予防に地域ぐるみの取り組み~疾病管理MAPによる地域疾病管理とは」


慢性疾患、特に糖尿病は重症化に伴って起こるさまざまな合併症が医療費高騰の一因ともなっている。慢性透析の患者数は年々増え続けているが、新規透析導入の原因となる病気の第1位が糖尿病で、右肩上がりで増加している。このような糖尿病の重症化防止や合併症予防には、医療職だけでなく介護職や行政職も含んだ地域総力戦を支える体制が必要だ。そのためには地域の慢性疾患全体の「見える化」を図り、地域のヘルスケアに関する関係者を集めた連携体制とすることが課題となっている。
日本慢性疾患重症化予防学会の道南支部を立ち上げた函館稜北病院の佐々木悟副院長。医療と行政の連携・協働による先進的な事例として、南檜山地域における糖尿病重症化防止の取り組みを行っている江差保健所企画総務課保健推進係長の笠島総子さん。透析リスクの高い患者に地域ぐるみの指導を実践することで、糖尿病の重症化予防、しいては透析予防への高い効果を目指している道南勤医協江差診療所の大城忠所長の3人に話を聞いた。
特集の概略は下記の通り。


「日本慢性疾患重症化予防学会の函館支部を立ち上げ。高齢者の慢性疾患重症化予防が地域の医療を守る」


◎函館稜北病院の佐々木悟副院長

慢性疾患、特に糖尿病は重症化に伴って起こるさまざまな合併症が医療費高騰の一因ともなっている。慢性透析の患者数は年々増え続けているが、新規透析導入の原因となる病気の第1位が糖尿病で、右肩上がりで増加。透析導入に至ると健康保険団体が治療費を全額負担することになるが、その負担額は患者1人当たり年間約500万円にもなる。透析医療費の増大は医療経済上におけるインパクトも非常に大きく、政府も糖尿病腎症による新規透析導入患者数の減少を目指すことが、最終目標の一つとしている。同学会でも糖尿病性腎症の防止が第一の目的だ。
具体的にはどのようなことを実施していくのだろうか。佐々木医師は「疾病管理MAPを活用し、透析導入の可能性が高い患者をスクリーニングする」と話す。疾病管理MAPは対象患者全体を母集団として、介入優先度の高い患者のトリアージ(抽出層別化)を行い、全体での診療の最適化を図る集団疾病管理のツールだ。ミニマムデータセットと呼ばれる、評価に不可欠な最小限の臨床検査項目のデータ群を管理することにより、対象患者集団の臨床検査の欠測の把握や測定された検査項目ごとに定められた規定値により、層別化して優先介入し疾病管理を行うことができる。
(以上、本文より一部を抜粋)


「南檜山地域での糖尿病重症化予防の取り組み。医療と行政の連携・協働による先進的な事例として注目」


◎江差保健所企画総務課保健推進係長の笠島総子さん

南檜山の糖尿病を取り巻く医療環境は、道平均に比べ人口当たりの医師数が少なく、基幹病院の専門外来担当医が短期間で交替しているが、各町保健師の就業数は全道平均よりも高いのが特徴だ。
「そこで、各医療機関と各町保健師・栄養士が相互にその機能を発揮し、糖尿病合併症や重症化予防を目的とした保健医療連携体制の構築を目指すために『南檜山糖尿病重症化予防プロジェクト』を立ち上げました」。
昨年3月にスタートしたこのプロジェクトの目的は糖尿病療養者に対して、かかりつけ医・専門医・地域関係者が効果的な連携のもとに疾病管理を行う体制を構築することにより、糖尿病性腎症を中心とした糖尿病合併症の重症化を予防し、将来の医療費抑制や地域住民のQOL向上を目指すもの。プロジェクトチーム会議のメンバーはかかりつけ医、専門外来担当医師・看護師、各町の保健師、保健所で、会議の内容は疾病に関する学習、保健指導媒体の検討事例に関する意見交換、プロジェクトの評価などである。
(以上、本文より一部を抜粋)


「糖尿病患者への保健師や栄養士の在宅訪問指導が効果。透析リスクの高い患者に地域ぐるみの指導を実践」


◎道南勤医協江差診療所の大城忠所長

1986年診療所の開設時から3年半所長として勤務してきた大城忠医師は、2007年同診療所に再び赴任。診療所の入院機能の廃止をきっかけに、従来以上に訪問診療や医療連携などに力を入れるようになった。医師不足の南檜山で現在、訪問診療に出ることができるのは大城所長だけだ。
大城所長が再赴任後の2008年以降、江差では「地域医療・道立病院を守る集い」や「南檜山の医療を考える草の根の会」、「南檜山医療介護連携推進会議」など、地域医療に関する様々な出来事がうねりとなって起きてきた。「そのなかでも最も大きなうねりのひとつが糖尿病重症化予防プロジェクト」と大城所長は話す。
同プロジェクトは地域の慢性疾患の重症化を予防したいと考えた江差保健所が仕掛け、日本慢性疾患重症化予防学会の平井愛山理事長が大きく後押しをした。
2012年9月江差町で平井理事長の講演が開催された。「年々増加する糖尿病が悪化すると透析など重症な状態へ進行し、医療財政の問題まで発展します。コンピューターを活用し、地域の医療機関や保健師、栄養士などが地域ぐるみで連携し重症化を予防しましょう」という講演内容は「地域の医療・保健関係者への平井愛山菌の感染第一歩でした」。
(以上、本文より一部を抜粋)


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「メディカルはこだて」の最新号(第54号)が発刊

2015年04月29日 14時49分26秒 | メディカルはこだて
「メディカルはこだて」の春号(第54号)が25日に発刊しました。



現在、函館市内および近郊の書店で販売中です。

【特集】
糖尿病重症化予防に地域ぐるみの取り組み
疾病管理MAPによる地域疾病管理とは

日本慢性疾患重症化予防学会の函館支部を立ち上げ。高齢者の慢性疾患重症化予防が地域の医療を守る
佐々木悟(函館稜北病院副院長)

南檜山地域での糖尿病重症化予防の取り組み。医療と行政の連携・協働による先進的な事例として注目
笠島総子(江差保健所企画総務課保健推進係長)

糖尿病患者への保健師や栄養士の在宅訪問指導が効果。透析リスクの高い患者に地域ぐるみの指導を実践
大城 忠(道南勤医協江差診療所所長)


悪性腫瘍の精密な手術はロボットへ推移。函館五稜郭病院は前立腺がん、胃がんに続いて婦人科でもダ・ヴィンチの手術を開始
西岡嘉宏(函館五稜郭病院産婦人科主任医長)

PAD(末梢動脈疾患)の治療にEVT(カテーテル)を積極的に施行。高齢化や糖尿病・透析患者の増加で、患者数も増える
柴田 豪(市立函館病院心臓血管外科)

【トピックス・リポート】昨年11月から臨床工学技士の勤務体制に「当直制」を導入した函館中央病院
秋本大輔(函館中央病院医療機器管理室業務担当係長)

【トピックス・リポート】四つの「看護外来」を開設した函館五稜郭病院
木村ルリ子(函館五稜郭病院糖尿病看護室看護師)
木村利子(函館五稜郭病院看護師主任)

【トピックス・リポート】 江口眼科病院は網膜機能を調べる「多局所ERG」を導入
蝋山敏之(江口眼科病院視能検査室主任)
折登 健(江口眼科病院視能訓練士)

【トピックス・リポート】函館五稜郭病院は1年10カ月に及ぶ新中西棟・既存棟改修工事が完了
コンセプトは医療需要の変化への対応や災害時の対策等

【ピックアップニュース】 肝臓の硬度を測定する機器を道南で初めて導入
平方奈津子(市立函館病院中央検査部臨床病理科主査)

【ピックアップニュース】画論ザ・ベストイメージで市内2病院が優秀賞を受賞
駒野圭史(函館中央病院診療放射線技術科主任技師)
大須田 恒一(函館五稜郭病院医療部放射線科診療放射線技師)

【ドクター・クローズアップ】 神経放射線を専門とする放射線診断専門医
高橋千尋(函館中央病院放射線科科長)

『機能性ディスペプシア』の漢方治療について(その1)
久保田達也(久保田内科胃腸科医院副院長)

【インタビュー】中高年に発生頻度の高い「脂漏性角化症」とは
須藤 聡(すどうスキンクリニック院長)

痛みとしびれに画期的な治療の「遠絡療法」とは
久米 守(久米整形外科院長)

古い布を再利用した「ふんどし」が女性に人気
田中はる枝(teteの会代表)

看護部長へ就任 全国でも珍しい院内保育所の学童保育が人気
岩田明美(函館渡辺病院看護部長)

病院広報誌「電車どおり」を毎月欠かさず発刊して十年目。
道下 篤(函館中央病院総務課主任)

「セラピア便り」  扇の要、函館から
平田 聡(特定非営利活動法人理事長)

安全安心の居住スペースと利用者が満足できる環境を提供
葛西直也(アプタスくうら施設長)

お薦めの一冊 「酢タマネギでやせる!病気が治る!」
日隠 修 (栄好堂美原店スタッフ)

The 矯正インタビュー Before&After ⑪
古田樹己(ふるた矯正歯科院長)

診断・治療に能力を発揮するマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)
川瀬 敬(川瀬デンタルクリニック院長)

インプラント治療のトラブル症例 (1)
村田真介(吉田歯科口腔外科院長)

東洋医学の治療院から~臨床の実際 仙腸関節由来の腰痛症治療
益井 基(益井東洋治療院院長)

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匠の森公園のカタクリ

2015年04月24日 06時31分13秒 | 函館・道南情報
この10年は毎年訪れている北斗市村山(旧大野町)にある「匠の森公園」。
ここには道南では珍しい「カタクリ」の群生地がある。



サクラの開花が早ければ、カタクリも早い。
開花期間は約2週間と短いことから、ニリンソウなどとともにスプリング・エフェメラル(春の妖精)とも呼ばれている。



花言葉は初恋、嫉妬、寂しさに耐える。

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吸い上げられる街

2015年04月23日 09時22分32秒 | 新聞コラム
北海道新聞みなみ風の「立待岬」。
4月17日掲載のタイトルは「吸い上げられる街」。



 雲の切れ目から差し込む日差しが透明のストローのようだ。その大きなストローが街中から空に向って何本も伸びている。
 三十数年前に誕生したコンビニは函館の街の景色を大きく変えた。その後もスーパーやスポーツ店、書店、薬店、家電、家具、ホームセンター、外食など相次ぐ管外資本の進出で、関連する地元の店は縮小や淘汰を余儀なくされている。
 大都市との間の交通網が整備されることで地方の人口や資本がより求心力のある大都市に吸い取られるストロー現象はよく知られているが、函館の街からストローが吸い上げているのは売上金のようにも見える。進出する店は一部の業種に恩恵を与えるが、日々の売上はすべて本店や本部に送金される。地元に還元されるのはどのくらいだろうか。
 仕事の合間に酒のさかなを買いに鮮魚店へ足を運ぶ。市内には活気のある市場が多い。雨の日には「こんな天気のときに来てくれてうれしいよ」と値引きしてくれる。会話は記憶に残り、市場で店主に渡したお金は再び地元で回っていく。
 資本の論理は地方に住む消費者の利便性や購買欲求も満たしてくれるが、その見返りに失ったものは小さくない。ストローが吸い上げるのはお金だけではない。札幌や道外にいる子供のところで暮らすために、故郷を離れる「呼び寄せ移住」の空家も目立つようになってきた。
                                       (メディカルはこだて発行・編集人)

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函館でサクラが開花

2015年04月23日 08時57分22秒 | 函館・道南情報
21日、函館のサクラが開花した(標本木は五稜郭公園の北側)。
開花は昨年より7日、平年より9日早い。
函館地方気象台が1953年に観測を始めてからは2番目に早い開花となった。
五稜郭公園の桜は、場所によってはまだ蕾のものもたくさんある。


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