最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。

函館で地域限定の医療・介護雑誌を発刊している超零細出版社「メディカルはこだて」編集長の孤軍奮闘よれよれ・ときどき山便り。

人間は危険な存在になった

2011年04月05日 05時04分08秒 | 新聞コラム
2ヵ月に1回にサイクルで書いている北海道新聞「みなみ風」の「立待岬」。
4月4日分は「人間は危険な存在になった」。



 生活の風景すべてが一気に消えてしまった街の姿を見ていると、こちらの気持ち
も津波に流されていく感覚に襲われてくる。さらに福島では終わりの見えない原発
事故が起きた。
 隘路(あいろ)を手探りで進むかのように一進一退を続ける原発のニュースに接
していると頭の芯がしびれてきた。泡盛をすすってぼんやりしていると、頭の隅から
広島平和記念資料館や長崎原爆資料館を訪れたときの光景がにじんできた。
 被爆の惨状は焼けただれた女学生の制服や時計、三輪車などが教えてくれるが、
特に長崎の被爆者が描いた絵は強く心に刻まれた。体育館に寝かされた生死不明な
人たち。荼毘の絵は、重ねた木材の上に遺体が置かれ、木が燃え始めている。どれも
描いた人の悲しみと無念さがひしひしと伝わってくる。歩いて逃げて来た人は誰もが
手にぼろぞうきんを持っていた。しかし、これは焼けただれた自分の皮膚が手の先で
ぶら下がっているのだった。
 2年前の原発の耐震性再評価に関する国の審議会で、東北に大津波が押し寄せた
869年の貞観(じょうがん)地震再来の可能性があるとの指摘を東京電力は軽んじた。
また原子力村(原子力で飯を食う専門家の集団)では批判的な学者は村八分にされる
実態も暴露された。
 昔、全能の神ゼウスは無知と暗闇の中にいた人間に火を与えることを、「人間は
危険な存在となってオリンポスを荒らしにくる」と反対したが、人間は火を操ること
で人間にとって最も危険な存在になった。
                     (メディカルはこだて発行・編集人)

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