北海道新聞みなみ風の「立待岬」。
7月15日掲載のタイトルは「古本の値段」。
中古本販売チェーンという新業態を確立したブックオフコーポレーション。全国にチェーン店を拡大させてきたが、中古本市場の縮小や新規参入の影響で、「本」から中古家電の買い取りなど「何でもリユース」へと転換を進めている。
昔は函館も古本屋が市内に点在していた。通い慣れた店では、ある外国人作家の小説を続けて買った。「同じ作家ばかり読んでるね」。店主が初めて声をかけてきた。面白いからと答えたら、面白いだけの二流よりも一流を読みなさいと諭す。それからは面白くない小説も一緒に選んだ。
最初に本を売ったのもその店だった。店主は一瞥してつまらなさそうな顔をした。こういう本しか読んでないと思われたくなかった。若かったのだ。次回は惜しむことをしなかった。「変わったのを読んでるね」という店主の顔は前とは違った。そのとき渡されたお金の額は意外だったが、あなただから高くしたとも言われた。当時は余計なことをしてという気持ちだけだったが、今ならお礼をいって通い続けているだろう。
チェーン店では本について店員との会話はないが、それに代わるのがレシートに明示される個々の買い取り価格だ。最近ではピケティの「21世紀の資本」が950円、DVD「黒い雨」が1140円と評価されたようだ。東海林さだおの本が100円、伊集院静の本は5円というのは需給ギャップによるものだろうか。
(メディカルはこだて発行・編集人)
7月15日掲載のタイトルは「古本の値段」。
中古本販売チェーンという新業態を確立したブックオフコーポレーション。全国にチェーン店を拡大させてきたが、中古本市場の縮小や新規参入の影響で、「本」から中古家電の買い取りなど「何でもリユース」へと転換を進めている。
昔は函館も古本屋が市内に点在していた。通い慣れた店では、ある外国人作家の小説を続けて買った。「同じ作家ばかり読んでるね」。店主が初めて声をかけてきた。面白いからと答えたら、面白いだけの二流よりも一流を読みなさいと諭す。それからは面白くない小説も一緒に選んだ。
最初に本を売ったのもその店だった。店主は一瞥してつまらなさそうな顔をした。こういう本しか読んでないと思われたくなかった。若かったのだ。次回は惜しむことをしなかった。「変わったのを読んでるね」という店主の顔は前とは違った。そのとき渡されたお金の額は意外だったが、あなただから高くしたとも言われた。当時は余計なことをしてという気持ちだけだったが、今ならお礼をいって通い続けているだろう。
チェーン店では本について店員との会話はないが、それに代わるのがレシートに明示される個々の買い取り価格だ。最近ではピケティの「21世紀の資本」が950円、DVD「黒い雨」が1140円と評価されたようだ。東海林さだおの本が100円、伊集院静の本は5円というのは需給ギャップによるものだろうか。
(メディカルはこだて発行・編集人)