北海道新聞みなみ風の「立待岬」。
4月11日掲載のタイトルは「104年の歴史が途絶えた秘湯」。
3月は特急「スーパー白鳥」「白鳥」、急行「はまなす」がラストランを迎え、函館駅などでは鉄道ファンが別れを惜しんだ。歴史に終止符が打たれたのは列車だけではない。104年の歴史を刻んできた奥ニセコの新見温泉(磯谷郡蘭越町)も3月で閉館した。
広島県出身の新見直太郎さんが温泉旅館「新見温泉」を開業したのは1912年(明治45年)。52年には新館が完成し、直太郎さんの息子たちがそれぞれ新見本館、新見温泉ホテルとして営業を続けてきた。新見渓谷内の沢の水力を利用した水力発電所を造り、北電による供給以前から電気の自給自足も行ってきた。
3月下旬に新見温泉を訪れた。蘭越から道道を進むと、それまでの春の装いが雪景色に一変した。温泉から先は5月末まで通行止めだ。新見本館は廊下も脱衣場も底冷えがした。
本館の露天風呂には有名な厚い雪庇はなかったが、まだ1メートル以上の雪があった。露天は混浴でカップルも多く、湯の中での楽しそうなおしゃべりが続いていた。歴史ある温泉が姿を消していく要因には利用者の減少に加えて、施設の老朽化や後継者難もある。経営を維持することに苦慮している温泉施設は少なくないはずだ。
誰もが露天から出ようとはしない。やさしい泉質の湯が名残惜しくて随分と長湯をした。雪の中にせっかちなフキノトウが一つだけ生えていた。
(メディカルはこだて発行・編集人)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/11/a93bf352777e9ecfa2e2b99725e7dd4c.jpg)
新見本館
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/4d/b346f64ed90105766e72b9efdbdb0ed7.jpg)
新見温泉ホテル
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/ca/e2005ac33603112b8f00bc1f4de3996f.jpg)
新見本館の露天風呂