20日、ホテルテトラ会長の三浦孝司さんが、膵頭部がんのため死去した。
三浦さんは1986年、父が創業したホテルテトラの2代目社長に就任。当時は函館市内の1ホテルだけの経営だったが、後継者不足などに悩む道内外ホテルの運営を引き継ぐなどして事業を拡大。現在は道内のほか、青森県から福岡県まで26のホテルを運営している。
20年以上前になるが、三浦さんに会って話をしたことがある。交換した三浦さんの名刺はホテルのフロントで掲示すると割引されるので、札幌のホテルで何度か利用した。
膵臓は胃の後ろに位置している長さ20㎝、厚さ2㎝ほどの細長い形をした臓器で、食物の消化を助ける膵液をつくり分泌する外分泌機能と、血糖値の調節をするインスリンなどのホルモンをつくり分泌する内分泌機能の2つの役割がある。
膵臓は、膵頭部(すいとうぶ)、膵体部(すいたいぶ)、膵尾部(すいびぶ)の3つの部位に分けられ、がんが発生する部位としては、十二指腸に近い膵頭部がもっとも多い。また膵臓がんの多くは膵管に発生する。悪性度が高く、早期発見が難しいことから治療成績は悪い。5年生存率も他のがんと比べて著しく低い。
膵臓がんの検査について、函館五稜郭病院消化器内科の井上宏之主任医長に話を聞いたことがある。
井上医師は三重大学出身。同大学消化器肝臓内科で胆膵診療を専門に行ってきた。
膵臓がんは、まず危険因子を知ることが大切だと井上医師は話す。「危険因子は家族歴が膵臓がんや遺伝性膵がん症候群。合併症疾患として、糖尿病、肥満、慢性膵炎、遺伝性膵炎、膵管内乳頭腫瘍。喫煙と飲酒などが挙げられます。家族歴は、第一度近親者(親、兄弟、子)に膵がんの患者がいる場合、1人いれば4.6倍、2人では6.4倍、3人では32倍のリスクがあるといわれています」
胃の裏に位置する膵臓はがんが見つかりにくい。ステージは7段階に分類されていて、がんの大きさや周囲への広がり、リンパ節や他の臓器への転移の有無によって決まる。
「がんの大きさが2㎝以下で膵臓内に限局し、リンパ節への転移もないステージ1でも完治は難しいです。5年生存率が高いのは1㎝未満で、がんが膵管の上皮内にとどまっているステージ0の1㎝未満で見つけることが重要です」
膵臓がんの疑いがある場合はさまざまな検査が行われる。まず行われるのは腫瘍マーカーと画像診断検査。膵臓がんの腫瘍マーカーは精度が低い。
腹部超音波検査は膵臓が胃の裏側に位置することや消化管のガスの影響で見えづらいことがある。通常のCT検査では分からないステージ0のがんについては、「造影剤を急速注入して行うダイナミックCTや、膵管のわずかな変化もわかるMRI検査が有用です」
MRCP(膵胆管MRI検査)はMRI装置を用いて膵管と胆嚢や胆管を同時に描出する検査だ。「膵臓の嚢胞性病変や膵臓がんの発症母地である膵管の評価に優れていて、胆石や胆管結石など胆道の評価も可能です。身体の負担が少ないためスクリーニング検査として有用です」
超音波内視鏡検査(EUSーFNA)は、口の中から超音波内視鏡を入れて、カメラの先から胃の壁越しに針を刺して細胞を取る。「確定診断のために行いますが、病変が固まりのないものでないと針を刺すことができないので、対象はステージ1以上です。ステージ0の場合、胆管や膵管の造影検査をし、膵液を採取して細胞を調べる検査をして診断をします」
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)は特殊な内視鏡を使用する。「十二指腸から膵管や胆道に造影剤を注入し、カテーテルを挿入することで胆管や膵管を造影する手技です。膵液、胆汁を採取し細胞診断することができます」
膵臓は非常に微妙な臓器だ。「膵管に直接造影剤を入れることで、一定の割合で膵炎が起こることがあります。そのためERCPを実施する際には注意が必要です」
内視鏡を用いるEUSーFNAとERCPは、消化器内科の胆膵を専門とする医師の高い技術が求められると井上医師は語る。「膵臓がんの5年生存率を高めるためには、がんをごく小さい段階で発見することが重要です。危険因子がある場合には積極的に検診を受けることを勧めます」