最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。

函館で地域限定の医療・介護雑誌を発刊している超零細出版社「メディカルはこだて」編集長の孤軍奮闘よれよれ・ときどき山便り。

天丼のふた

2014年03月02日 18時49分41秒 | メディカルはこだて
北海道新聞みなみ風の「立待岬」。2月21日掲載のタイトルは「天丼のふた」。



 丼物が好きだが、その中でも天丼は金メダル候補の筆頭だ。東京で高級な天ぷらの店へ連れて行ってもらったことがあるが、途中で天丼が食べたくなった。
 天丼にはふたがのせてあって、そこから少し天ぷらのはみ出している姿が好ましい。さめないようにするふたには、タレの香りをどんぶりの隅々に行き渡らせる役割もあるのだろうか。そんなことを考えながら一呼吸だけ我慢してふたをとる。
 最初は静かに天ぷらだけを食べる。それから持ち上げたどんぶりを左手で下からささえると、右手に持った箸で一気に食べ進めていく。「流し込んでいるみたいだな」と言われたこともあるが、確かにそうかもしれない。
 車も仕事もないときには日本酒も一緒に注文する。エッセイストの平松洋子さんが書いていたが、天丼が大好物だった五代目古今亭志ん生は、上にのせてある天ぷらやご飯をさかなにして日本酒を飲み、七分目まで食べたあと、コップに少しだけ残しておいた日本酒を回しかけてふたをし、いったん蒸らしてからおもむろに開けて食べたそうだ。平松さんが「好きが高じてやっているだけの当の本人でなければ。格好がつくものではない」と言うように、やはりそうした粋な真似をするのはちょっと難しい。
 天丼は東京の下町に名店が多いが、60年前の冷蔵庫が現役で活躍している松風町の店も、ふたをとるとおいしさが一気に立ちのぼってきた。
                                                      (メディカルはこだて発行・編集人)
                     

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする