最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。

函館で地域限定の医療・介護雑誌を発刊している超零細出版社「メディカルはこだて」編集長の孤軍奮闘よれよれ・ときどき山便り。

虚偽の死亡診断書 医師の男に有罪

2023年06月28日 22時51分21秒 | 函館・道南情報
父親の死亡診断書に虚偽の死亡日を記載するなどしたとして、虚偽診断書作成、有印私文書偽造・同行使、詐欺の罪に問われた、医師脇坂好孝被告(61)の判決公判が27日、函館地裁であった。酒井孝之裁判官は、懲役2年6カ月、執行猶予4年(求刑懲役3年)を言い渡した。
判決理由で、酒井裁判官は、脇坂被告の行動について「父親名義の預金を独占する」目的だったとし、「責任転嫁を図る虚偽の弁解を重ねており、反省の情が見受けられない」と指摘。一方で、銀行から引き出した現金はその後、銀行に返していることなどを考慮し、執行猶予を付けた。
判決によると、父親は2021年11月29日ごろに死亡していたにもかかわらず、死亡日時を同年12月10日と記載した虚偽の診断書を作成。複数の銀行で父親から依頼を受けたように装って払い戻し請求書を偽造し、父親名義の口座から計約320万円を引き出した。
(6月28日北海道新聞朝刊より)

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医療事故2件で函館市が和解金

2023年06月26日 20時15分39秒 | 医療・介護関連
函館市は21日、市立函館病院で診療を受けた男性2人が死亡する医療事故があり、双方の遺族に和解金を支払う示談が成立したと明らかにした。2人とも同病院に救急搬送され、医師が症状が緩和したと判断して帰宅させた後、容体が悪化し死亡した。
同病院によると、死亡したのは40代男性と60代男性。40代男性は2019年7月、嘔吐などの症状で救急搬送され、翌日死亡した。死因は遺族の希望で公表していない。60代男性は22年1月、胸が苦しいなどとして救急搬送された。帰宅後に嘔吐があり再び来院したが死亡した。死因は急性大動脈解離。
市と遺族が協議し、今月までに示談が成立した。和解金は19年の事故が5300万円、22年の事故が1800万円。市は28日開会の定例市議会に和解金を盛り込んだ本年度病院事業会計補正予算案を提出。可決されれば8月31日までに支払う。
同病院は二つの事故について「多角的に判断するための人手が不足していた。心からおわび申し上げる」としている。22年の事故については新型コロナ対応に伴う医療現場の逼迫が影響した可能性があると説明した。
(6月21日北海道新聞朝刊より)

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生物はなぜ死ぬのか

2023年06月10日 19時02分41秒 | 読書
「2022新書大賞」で第2位となった小林武彦さんの「生物はなぜ死ぬのか」(講談社現代新書)は14万部を超えるベストセラーとなった。生物学の視点から見ると、すべての生き物、つまり私たち人間が死ぬことにも「重要な意味」があるようだ。 生き物が死ななければいけないのは、主に2つの理由が考えられる。その一つは食料や生活空間などの不足で、もう一つの理由は「多様性」のためだとする。
現在の日本人は、食料や生活空間の不足はほとんどないが、保育所や教育環境、親の労働環境など、いくつかの子育てに必要な要素が不足している。それにより、子供を作れなくなる少子化圧力が強まり、出生数は減り続けている。死亡率が上がるのも、出生率が下がるのも、人口が減るという意味では同じ。この減少が、日本人の絶滅的な減少に繋がるか、あるいは出生率が低い状態で安定するのかは、今後これらの少子化圧力要因がどのくらい改善されるかにかかっている。不足は衣食住の物質面だけではなく、精神面においてもある。子供を作りたくなくなるという将来の不安要素は当たり前だが、確実に少子化を誘導する。
小林さんは、何も対策を取らなければ、「残念ですが日本などの先進国の人口減少が引き金となり、人類は100年も持たないと思っています。非常に近い将来、絶滅的な危機を迎える可能性はあると思います」と警鐘を鳴らす。
生物は、激しく変化する環境の中で存在し続けられる「もの」として、誕生し進化してきた。その生き残りの仕組みは「変化と選択」。変化は文字通り、変わりやすいこと、つまり多様性を確保するように、プログラムされた「もの」であり、その性質のおかげで、現在の私たちも含めた多種多様な生物にたどり着いた。
具体的には遺伝情報(ゲノム)が激しく変化し、多様な「試作品」を作る戦略である。変わりゆく環境下で生きられる個体や種が必ずいて、それらのおかげで「生命の連続性」が途絶えることなくつながってきた。そのたくさんの「試作品を作る」ためにもっとも重要となるのは、材料の確保と多様性を生み出す仕組みであると小林さんは教えてくれる。材料の確保については手っ取り早いのは、古いタイプを壊してその材料を再利用すること。小林さんが本書で何度も繰り返してきた「ターンオーバー」で、ここにも「死」の理由がある。
「生き物にとって死とは、進化、つまり変化と選択を実現するためにあります。死ぬことで生物は誕生し、進化し、生き残ってくることができたのです」。生と死、変化と選択の繰り返しの結果として、ヒトもこの地球に登場することができた。「死があるおかげで進化し、存在しているのです。死は長い生命の歴史から考えると生きている、存在していることの原因であり、新たな変化の始まりなのです」


生物はなぜ死ぬのか
講談社現代新書


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祖国を離れる中国人

2023年06月10日 17時57分07秒 | 新聞コラム
北海道新聞みなみ風の「立待岬」。
6月9日掲載のタイトルは、「祖国を離れる中国人」



 「四日、午前二時すぎなり。突如、地響きたてて来たるものあり。戦車なり」。1989年6月4日、作家の水上勉さんは中国・北京の天安門近くの北京飯店に宿泊していた。天安門広場は民主主義を求める学生らで埋め尽くされたが、共産党政権が武力で鎮圧し、多くの死傷者が出た。
 天安門事件に遭遇した時から水上さんの不調は始まった。帰国後の入退院の日々を描いた「心筋梗塞の前後」には当時、ホテルの便箋に走り書きした多くのメモが紹介されている。
 十数年前、函館市内の病院に勤務していた中国人の精神科医Kさんと会った。好きな日本語は「暴飲暴食」。自分の腹を指さして「その結果がこれ」と笑った。天安門事件当時、大学生だったKさんは大学を中退して来日。「大学で反省文を書かされる毎日に嫌気がさし、外から自国を見つめる良い機会」と決意した。
 1年後に京大学工学部に入学。卒業後はエンジニアとなるが再び受験勉強をして大阪大医学部に合格。「精神医学を勉強していた友人に触発」され、精神科医となった。函館を離れたKさんは現在二つの診療所を運営している。
 中国では民主化を求める勇気ある行動はなくならない。今月3日には北京市内で女性が自由と民主を求めるビラをまく動画が、ツイッターで拡散した。Kさんにとっても天安門事件は終わっていないはずだ。
(メディカルはこだて発行人・編集人)

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