完全無欠な「もうすぐ前期高齢男」日記

「もうすぐ前期高齢男」に進級「老いの自覚」を中心にUpしていきます。

山本一力著「あかね空」読み終わりました。

2006年04月03日 | 
私は中年である。
中年は、時代劇が好きだった。
しかし、何でも良いというわけではない。

「水戸黄門」や「遠山の金さん」などは
子供の頃にイヤというほど見てしまい
今は五年に一度くらい見るだろうか。

さりとて大河ドラマ「功名が辻」も、
私の好きな司馬氏の原作でありながら、
ほとんど見ない。

つまり、今の時代劇にはほとんど興味が
わかないのだ。なぜなら、本を読んで感じる
「イマジネーション」に勝る「映像」を
見ることができないからだ。

読書から得たイメージに完全に一致する
俳優は今の時代にはほとんどいない。

しかし、一世代前には、そうした俳優がいたのだ。
キミは、高橋英樹の”桃太郎侍”を見たことがあるか。
勝新太郎の”座頭市”を知っているか!
萬屋錦之介の”子連れ狼”に胸を躍らせたことはあるか!!
(取り乱してしまいました・・・。)

さらに、主役以外の脇役・斬られ役(いわゆる”大部屋”)
にもプロがいて、今の水戸黄門の助さん・角さんの
ように現代劇の若手が、ただチョンマゲを付けただけの
ような不自然がなかった。

日本人は近年得に体格が良くなり素晴らしい体型に
なってきている。残念なことに、そのことが時代劇を
いかにも嘘臭くしてしまった。

昔の名作・名優を知っている「中年」のおじさんには、
そのことに、ひどく寂しさをおぼえるのである。

さて、前置きが長くなったが、
山本一力著「あかね空」を読み終わった。

第126回直木賞受賞作品だ。
直木賞で時代物が選ばれたのは、かなり久しいのでは
ないだろうか。

今の時代劇は大河ドラマ系(徳川幕府・源平合戦等)と
お約束系(金さん・水戸黄門・大岡越前等)の
二つが主だ。

しかし、この「あかね空」は、そのどちらでもない。
いうなれば「庶民系」である。
江戸の下町のイキイキした生活ぶりが見事に
描かれている。
その描写は雑駁ないい加減さでなく、江戸時代に
漂っていた「匂い」が伝わってくる。

その「匂い」と「男と女」「夫婦」の情愛が
現代にも通じるものとして行間に溢れている。

時代小説には、著者一人一人の持っている「感覚」が
如実に表れ、それが独特の「味」になる。

山本氏のそれは、過去の大家に負けない「味」が
そこはかとなくあるように思う。


褒めてばかりでは、なんなので少々苦言を呈しておこう。
第二部以降の展開が少々緩慢になる。
この章を設けずに一気に終盤まで駆けてしまい、
ページ数を50ページ程減らす方が締まった出来に
なっただろう。

本はいい!本当にいい!

最後までおつきあい頂き、ありがとう。
これを読んだみんなに幸多かれ。  may








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