私は中老男である。
2年以上の封切りを延期されていた映画
「峠」(役所広司主演)
が公開された。
やはり地元民(大きな意味で)の私とすれば、鑑賞しないわけにはいかない!
というより、このところ私が見た映画は・・・・。
すべて「司馬遼太郎原作」なのである。
「関ケ原」「燃えよ剣」いずれも岡田准一主演・原田眞人監督だった。
そして今回の「峠」は、小泉堯史監督(脚本も担当)・役所広司主演である。
どれくらい変わった感じになるのであろう?と思いながら・・・。
17日(金)公開で18日の10:30(2回目)の上映にギリギリ間に合った。
その映画館で「これほど席が埋まったこと」は見たことがない。
席を選ぶ時点で・・・。
最前列の4つしか残ってなかった。
中に入ると・・・すでに暗転。
本編前のCMが始まっている。
最前列のほぼ真ん中。
・・・非常に「観にくい」
常に見上げる状況。
右となりのカップルの男性が「また、隣に来たよ・・・・」とつぶやく。
左どなりに来た夫婦のご婦人は「だから土曜日の映画なんて★※→▼△」と嘆く。
そんな中しめやかに映画が始まる。
★★★★★★★★★★ここからは「ネタバレ」があります。注意して読んでね★★★★★★★★★
徳川慶喜(東出昌大)が・・・。
延々「大政奉還」の状況を家臣(大名たち)に説いている。
2年前だからか・・・。(例の騒ぎの前だっけ?)
この徳川慶喜という人のについては、それこそ映画にできるのであるが・・・東出かぁ。
全体的にとにかく「狭苦しい」感じ。
近い距離間で人と人が向き合っているシーンが多い。
役所広司は今や日本男優の中でも「重鎮」になりつつある。
その分「重すぎる」感が私には強い。
以前から書いているのだが・・・・
役者には「役の人(この映画では河井継之助)がそこにいる」場合と「役者(役所広司)がそこにいる」場合がある。
私の感覚では役所広司は後者であろう。
そうした場合、なかなか「原作の面白み」が生かされにくい。
イメージとして「役所広司の映画」感が強すぎる作品になっている。
それは決して「悪いこと」ではなく、かれの魅力で映画が成立しているとも言えるのだが。
舞台となっている「越後長岡藩」のことや背景となっている「幕末・明治維新」と共に少しばかりであるが勉強した人間とすると・・・。
やはり、少々「喰い足りない」感が強い。
有名な「小千谷談判」も、なんの先入観もなく見ると「ただそれだけ」の描写に見える。
岩村精一郎役が吉岡秀隆なのは、ある意味秀逸なのだが・・・。
この時に官軍側の軍監が「土佐藩の若手・岩村」であることが、戊辰戦争発端のキーなのである。
さらに、この後の「戦闘シーン」の中に「官軍側の幕僚の描写」がないのが残念。
長岡城落城後に河井が軍事総督として長岡城を奪還するのであるが
それは官軍の戊辰戦争の中で最大の「驚愕・敗戦」なのが表現されていない。
古い話で申し訳ないのだが、大河ドラマ「花神」の中で同じシーン。
山縣狂介(有朋)が城を奪還され驚愕して逃走しながら「河井は人間じゃねぇ」とつぶやく(荒っぽい記憶で申し訳ない)のである。
映画としては決して短くないこの映画で、泣く泣くお蔵入りになったシーンも多かろう。
多分、この官軍の長岡攻めの軍事会議も当然あったはずだがカットされた公算が強い。
全体としては「ベテラン俳優たち」の存在感がとてもよかった。
田中泯・仲代達也・井川比佐志・香川京子そして松たか子(もうベテランに入れていいよね)
田中泯の「真剣を振るシーン」や井川比佐志の「諭すシーン」松たか子の「盆踊りのシーン」は「さすが!」と思った。
結論として。。。。はっきり分かったことは
司馬遼太郎の小説は「映画にするには無理がある」ということ。
彼の小説の真骨頂は、主人公が「身近にいる人間」として描かれていることに尽きると思う。
「心の襞」とか「精神状態」が小説では現わされている。
伏線も多々盛り込まれてる小説がほとんどなので「映画」という枠では描き切れない。
それらを表現するには時間枠が映画では足りないのだ。
大画面を生かす「スペクタクルシーン」などが迫力的に素晴らしく「戦闘シーン」などは
とてもよかった。
原作をいかに映像化(映画化)するかは、永遠のテーマであろう。
そうした中で司馬遼太郎の小説は「映画原作には向かない」というのが、今回の映画鑑賞での再確認であった。
今回も最後までお付き合いいただきありがとう。これを読んでいる皆さんも、映画をしっかり楽しみますように。
May
芳根京子の「お嬢」のこととかも、原作を読んでいないとわからないし、そもそも小説としては河井の江戸での修行期や戊辰戦争に至るまでが読みどころだし・・・。
蛇足です。 エンドロールに協力として地元の放送局等々の名前が次々と示されたのだが、そのなかに「FMPORT」があった。なつかしい・・・2年近く前にこのラジオ局は閉局したっけ。