アウトドアな日常

インドアからアウトドアへのススメ

リアリテイー

2009年03月02日 | 読書日記 その5
『性犯罪被害にあうということ』  小林美佳著  朝日新聞出版

「24歳の夏、私は見知らぬ男二人にレイプされた。・・」と始まります。

「私は、いまどこでどうしているかも知れない加害者を許すことはできない。
 しかし、私が許せないのは、彼ら個人ではなく、彼らが自分の興味や欲望を満たすためだけに個人を巻き添えにしたことである。彼らはきっと、何も気づいていないだろうし、もう私のことなんか忘れているはずだ。
 もしも覚えているのなら、「ごめんね」と思っていてほしい。」

最近になって、被害者の人権ということが叫ばれて伝わるようになりましたが、一瞬の出来事が個人の未来を闇にしてしまう現実は、日常の生活にも垣間見られる。

以前に山田太一氏のエッセイを読んでいたら、他人の気持ちを理解できても、優しくなれるわけではない、という文章に出くわしました。
作家であれば、人間観察は怠りなくしているわけですが、それが優しさへと変わるわけではないというリアリテイー。

私にこんなことが起きるわけがない、と思っても起きてしまうリアリテイー。
なぜ私だけが、と泣き叫ぶリアリテイー。

そして僕らは、なにもできずポツンと傍観するリアリテイー。

それでも著者は、MR.Childrenの「タガタメ」という曲に自らを託す。

「でももしも被害者に加害者になったとき
 かろうじて出来ることは
 相変わらず、性懲りもなく 
 愛すること以外にない
 タダタダダキアッテ(ただただ抱き合って)
 カタタタキダキアッテ(肩たたき抱き合って)
 テヲトッテダキアッテ(手を取って抱き合って)
 タダタダタダ(ただただただ)
 タダタダタダ(ただただただ)
 タダダキアッテイコウ(ただただ抱き合っていこう)」

コメント
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