アウトドアな日常

インドアからアウトドアへのススメ

極北の動物誌

2023年03月26日 | 本と雑誌 その2

「極北の動物誌」(ウイリアム・プルーイット著)を読む

プロローグ ↓

「1959年にアラスカがアメリカ合衆国の州になって以来、乱開発は急増しており、タイガの生態系のもろさがより一層明白になっている」

「カナダのタイガで探鉱と乱開発が野放しで行われた結果、連鎖的に発生した災害をわたしたちは目の当たりにした」

エピローグ(1988年)↓

「タイガでは経済システムの優位順位と方向をまったく逆にする必要があるのはあきらかだ。第一に優先されるべき基準は生態系の安定であり、その次が地元の人間が必要とすることがらである」

「今日、極北の動物たちが直面する非常に多くの問題は、ほとんどが生物学や野生生物管理技術やさらには科学一般の領域ではなく、政治の領域に属している。我々は何をなすべきか、あるいは何をなすべきではないのか、技術的にはわかっている。知識を科学者から政治に伝え、伝達した知識を行動に移し、規制を実施し、一般市民の態度を強制的に変えさせることこそが問題なのである。本書の発展させて目指すべきは、人間の政治の領域であろうと私は考える」

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本書は1976年に発刊されました。写真家の故星野道夫氏が敬愛していた本です。

日本では2021年に復刊、それを機に星野道夫夫人の直子さんが復刊に寄せての文章が記されています。

それによると、40年以上もの間、開発か保護かの論争が続いていた北極圏野生生物保護区での開発が、バイデン政権の元で一時停止されたそうです。

 

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サピエンス全史

2023年03月24日 | 本と雑誌 その2

「サピエンス全史(文明の構造と人類の幸福) 上」(ユヴァル・ノア・ハラリ著)を読む

・人類が初めて姿を現したのは、約250万年前の東アフリカで、約200万年前、この太古の人類の一部が北アメリカ、ヨーロッパ、アジアの広範囲に進出して住み着いた。

・ヒトは卓越した視野と勤勉な手を獲得する代償として、腰痛、肩こりに苦しむことになる。女性の代償は酷く、直立歩行するには腰回りを細める必要があったので、産道が狭くなった。

 それによって、お産の時に女性は命の危険にさらされるようになる。

 頭の小さな赤ん坊が早い段階で出産した方が女性が無事に行き長らえることができるので、自然選択によって早期の出産が優遇される。

 しかし、生命の維持に必要なシステムの多くが未発達になり、何年にもわたって年長者を頼りにしなくてはならなくなるが、教育によって、キリスト教にも仏教にも、資本主義にも社会主義にも、戦争を好むもの平和を好むものにも育てることができる。

 進化は強い社会的絆を結べるものを優遇した。

・人類が頂点への道のりにおける重大な一歩は、火を手懐けることだった。一部の人類種は80年万前には火を使っていたかもしれない。約30年前には、ホモ・エレクトス、ネアンデルタール人、ホモ・サピエンスの祖先は日常的に火を扱っていた。

・サピエンスの成功の秘訣はなんだったのか?今なを議論は尽きないが、最も有力なその答えは、議論をすることが言語のおかげではないだろうか。

・人はなぜ肥満に陥るのか?多くの生き物に食べ尽くされる前に、食べられるだけ食べるというのが理にかなった答え。そうした本能はDNAに刻み込まれているのだ。

・平均的なサピエンスの脳の大きさは、狩猟採集時代以降、縮小しているという証拠がある。狩猟最終時代には、生き延びるための素晴らしい能力があったのだ。

・古代の狩猟採集民は、感染症の被害が少なかった。その理由は、家畜(感染症の多くは家畜から)が少なかったから。

・多くの学者は古代の狩猟採集民は、一般にアニミズムを信じていた傾向がある。アニミズム(魂や霊を表す「アニマ」というラテン語に由来する)とは、ほぼあらゆる場所や植物にあり、自然現象には意識と感情、人間と直接思いを通わせられるという信念。

・1万年ほど前に全てが変わった。いくつかの動植物種を操作することで、全ての時間と労力を傾けた。一日中、種子を蒔き、青々とした草原に羊を放ち、より多くの果実、穀物、肉を手に入れた。すなわち人間の生活の革命、農業革命だ。

・歴史の数少ない鉄則の中に、贅沢品が必需品となり新たな義務が生じさせるというものがある。それに慣れてしまうと当たり前となり頼り始める。果たしてそれは前よりもゆとりのある生活だろうか。

・野生の鶏の寿命は7〜12年くらいで、牛は20〜25年ほど。それとは対照的に家畜された鶏、牛の寿命は数週間から数ヶ月で殺される。経済の視点からいうと、それが最適だからだ。

・農業革命のせいで、未来が重要になった。農耕民は未来を念頭に入れて、未来のために働くようになった。

・農耕のストレスは、広範な影響を及ぼす。それが大規模な政治体制や社会体制の土台となった。至る所で支配者、エリート層が台頭し、余剰食料で暮らす。その反面、農耕民は精一杯の生活に甘んじる。こうして没収された余剰の食料が、政治、芸術、哲学の原動力となる。近代後期まで、人類の9割以上は農耕民で一日中、額に汗して働いた。

 

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生物に世界はどう見えるのか

2023年03月11日 | 本と雑誌 その2

「生物は世界をどう見えるのか(感覚と意識の階層進化)」(実重重実著)を読む

・帰巣行動ができる昆虫はナビケーションシステムを思っている。動き出して距離、移動を把握しているという。身体の方向を変えるたびに、方向と距離を測っている。こうした出発点と位置を割り出す方法を積路積算という。

・アリや帰巣性のあるカメムシは、太陽の位置をコンパスとして用いる。ミツバチ、サバクアリは太陽の位置だけではなく、投射される光線の偏り(偏光)を用い、ミツバチは地磁気もコンパスと用いる。

・多くの昆虫の色覚は3原色であるが、アゲハチョウは5原色・シャコの一種には16種類もの色覚があるものもいる。この場合、擬態をしてもすぐにバレてしまう。

・鳥は網膜の上に細い血管で作られている櫛の形をした構造がある。これによって動きを察する完治が上がり、空中でう早く動く昆虫を捕獲することができる。

・平均的な鳥は1年間に100万匹もの昆虫を捕らなければならない。鳥の飛翔するエネルギーは膨大で、トカゲに比べて15〜20倍ものエネルギーを消費する。そのエネルギーを獲得するために1日に2740匹の虫を捕らなければならない。

・鳥の脳は小さいので、1年に1回記憶を書き換えなければならない。このため鳥の海馬は10月頃になると急速に更新が進む。毎日2%の細胞が死に新しく生まれる。

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人間は生物を擬人化し、とるに足らないものとして扱ってしまう。しかし、彼らの生活を丹念に観察すれば、愛おしむに値する生き物だとわかります。

 

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21 lessons

2023年03月02日 | 本と雑誌 その2

「21lessons (21世紀の人類のための21の思考)」(ユヴァル・ノア・ハラリ著)を読む

・古代の狩猟採取民族は、平等主義であった。それはほとんど財産というものがなかったから。2100年までに1%の最富裕層が世界の富だけではなく、創造性、健康を手に入れるかもしれない。

・人々は最も貴重な資産である個人情報を、無料の電子メールサービス、面白おかしい猫の動画と引き換えに喜んで手放している。

・自分たちのような人々を、よそ者よりも好むことを人類は何百万年もやってきた。外国人嫌いはDNAに組み込まれている。ただし、スウエーデン、ドイツ、スイスのような平和で繁栄している自由主義の国は、ナショナリズムの強固な感覚を享受している。逆に国民の絆を欠いている国は、アフガニスタン、ソマリア、コンゴ他は機能不全になっている。

・毎年テロリストが殺害する人は、EUで約50人、アメリカで約10人、中国で7人、全世界(主にイラク、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア、シリア)で最大で2万5000人を数える。それに対して、交通事故死はヨーロッパで約8万人、アメリカで4万人、中国で27万人、全世界で125万人。糖尿病、高血糖のせいで毎年最大で350万人が亡くなり、大気汚染でおよそ700万人が亡くなる。

・政治家が聞こえの良い観念的な言葉を使って話し始めたときには、いつも用心しなくてはならない。

 

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