アウトドアな日常

インドアからアウトドアへのススメ

看板娘

2008年01月08日 | 読書日記 その2
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『78(ナナハチ)』  吉田篤弘著  小学館

表題の78とは、レコード盤の78回転のことです。
この78回転のレコードにまつわる短編集です。

この短編集の中の一遍に母娘が営む喫茶店の話があります。
娘がその喫茶店の看板娘で、とはいってもそれは本人が決めるものではなく周りが決めるとっても敷居が高い決めごとなのである。

その看板娘が78回転の音楽を聴き、その良さを知り、いつか蓄音機を買い求めようとするのである。
デジタルでは表せない良さをレコード盤(アナログ)は持ち合わせているけれど、今後、デジタルはその表せない良さ追求していくのであろう。

ただこの本にも書かれてあったけれど、レコード盤と針がかもし出す音には、その当時の空気が流れている。(音は空気を伝う波長だから)
昔を懐かしむというのではなく、現実に昔の空気が蓄音機から流れてくる。

子どもの頃、仰向けになって流れる雲を眺めていたような、そんな錯覚をしてしまうのかもしれません。

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顕信

2008年01月05日 | 読書日記 その2
『いつかまた会える』  香山リカ著  中央公論新社

俳人 住宅顕信(すみたくけんしん)について書かれてあります。
20年程前に25歳という若さで白血病で亡くなられました。
経歴を見ると波乱万丈の人生をおくられたようです。

「鬼とは私のことか豆がまかれる」
「気の抜けたサイダーが僕の人生」

若さとは、ここまで自分自身を追い込んでしまうのであろうか。

そして人は年を重ねるごとに鎧をまとい自分自身の代わりに他人を追い込む、そうにしないと人は生きてはいけないのかもしれません。
誰にも若さは存在していたのに、その闇の部分は忘れ去られる。
若さに嫉妬し、若さを葬り去り、昔はよかったと朽ちて行く。

著者は顕信を通して人生の意味をひも解いて行く。

没後、「未完成」という句集が発刊され、人の魂は受け継がれ、顕信の魂も甦る。

「今は無理かもしれない。ひとりじゃ無理かもしれない。だけど、自分を信じて、夢を捨てずにこの人生を生き抜いていれば、いつの日かだれかが必ずそれに気づいてくれる。誰かが自分を見つけてくれる・・・・・。」
「別れたあの人にも、出会いそこねた人たちにも、いつかどこかで、きっとまた会える。
 私は今、そうに思っている。」(本文より)

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ドストエフスキー

2008年01月04日 | 読書日記 その2
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「21世紀ドストエフスキーがやってくる」     集英社
「過剰な人」    斉藤孝著           新潮社

ドストエフスキーの本は殆ど読みこなしていませんが、これほど多くの熱狂的なファンがいるというのは、それだけ魔力があるのでしょう。

斉藤氏の本の中にその魅力に関してこのようにあります。
「癖の強い者同士がぶつかり合うと、とんでもない摩擦熱が起きる。この摩擦熱がドストエフスキー的世界の魅力だ」

たぶん多くの人は、普通に見られなければならない、という恐怖感で暮らしているのだろうか。
どんな人も癖を持ち、皆同じではないと分かっていながら、普通であるということに固執する。
それは管理社会での組織がそうにさせるのかもしれない。

僕としては癖のある人と、たちの悪い人とは違うという解釈をします。
養老猛司氏は「教養とは他人の心が分かること」と書かれていましたが、たちの悪い人はこういった部分が欠落している、そうに思っています。

斉藤氏は「癖のある人を愛したい」と書かれていますが、そうに思える人が増えれば少しは社会は変わっていくのかもしれません。
多様性であるということは、すなわち教養的でもあるということなのだから。

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しあわせのスープの作り方

2007年12月29日 | 読書日記 その2
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『それからはスープのことばかり考えて暮らした』  吉田篤弘著 暮しの手帳社

今冬はPコートを着用することが多くなった。
ずいぶんと古いコートでここ数年思い出したように着用することしかなかった。

使用頻度が増えた理由としては、歩くことがことのほか増えたからである、というよりも歩くようにしているからである。

この著者の他の作品は数冊読んでいる。
独特の空気感が好きで、この本もその過程の中で選んでみた。

職を捨て、ある町に移り棲んできた青年。
そこにはお気に入りのサンドウイッチ屋、古い映画館がある。

便利なものを出来るだけ拒否し
「さまざまな利器が文字どうり、時間を削り、いちおう何かを短縮したことになっているものの、あらためて考えてみると、削られたものは、のんびりした『時間』そのものに違いない」(本文より)
古い映画を何度となく観て、ほんの数分しか登場していない女優に恋をする。

この町には、のんびりとした「時間」があり、あたたかいスープの匂いが漂う。
映画「かもめ食堂」が好きな人は、この小説のおもしろさを分かっていただけるだろう。

僕はといえば、Pコートを羽織って僕の町を探索してみようかしら。
そうそう最後の2ページに「名ななしのスープ」のレシピが載っています。
『期待をしないこと』、から始まり、『とにかくおいしい!』で終わっています。

しあわせのスープの作り方は、
「なによりレシピに忠実につくることが大切なんです」(本文より)

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才能

2007年12月26日 | 読書日記 その2
『コッコロから』  佐野洋子著 マガジンハウス

才能とは、どんなことを指すのだろうかと思う時があります。

この本の主人公は、20歳くらいの美人ではない女性です。
でも彼女の周りは、いつも暖かい空気が流れています。

読んでいて可愛い女性だなあと思いました。
女優でこの主人公を演じるとすれば、20歳くらいの時の小林聡美さんでしょうか。
他に見当たりません。
(彼女が美人ではないということではなく、あくまでも雰囲気で)

こんなセリフがあります。
「人生の主人公から降りないということは、自分の心に正直に素直でありつづけること、どんな時も、打算に走らないってことだと思う。」

思春期ならば、自分には何ができるだろうか才能はあるのだろうかと思い悩むことは多いことだと思います。
才能とは、主人公から降りないこととも思います。

大丈夫、僕たちがスポットライトを当てるから。
( http://masagoro.mo-blog.jp/masa/2007/05/post_6939.html )

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