『78(ナナハチ)』 吉田篤弘著 小学館
表題の78とは、レコード盤の78回転のことです。
この78回転のレコードにまつわる短編集です。
この短編集の中の一遍に母娘が営む喫茶店の話があります。
娘がその喫茶店の看板娘で、とはいってもそれは本人が決めるものではなく周りが決めるとっても敷居が高い決めごとなのである。
その看板娘が78回転の音楽を聴き、その良さを知り、いつか蓄音機を買い求めようとするのである。
デジタルでは表せない良さをレコード盤(アナログ)は持ち合わせているけれど、今後、デジタルはその表せない良さ追求していくのであろう。
ただこの本にも書かれてあったけれど、レコード盤と針がかもし出す音には、その当時の空気が流れている。(音は空気を伝う波長だから)
昔を懐かしむというのではなく、現実に昔の空気が蓄音機から流れてくる。
子どもの頃、仰向けになって流れる雲を眺めていたような、そんな錯覚をしてしまうのかもしれません。