ニューヨークに学ぶオープンスペースのあり方 安藤 洋一
1 高層ビル周囲のオープンスペース
建築界の巨匠ミース・ファンデル・ローエの設計によるシーグラム・ビルは、50年前に建てられたオフィス・ビルであるが、未だに古さを感じないどころか周囲のビルと比較しても輝いて見える。ニューヨークでも家賃の高い方のビルである。前にあるオープンスペースが素晴らしい。ミースは、斜線規制をきらい、箱状の形態のビルにするために、前面道路から、セットバックし、広いオープンスペースを確保した。周囲のビルと比較しても、段違いに広く、ビルに風格を与えている。高層ビル周囲のオープンスペースの重要性がこのビルから認識できる。水をあしらい、ミースらしいすきのないデザインとなっているが、通りから誰でも利用できる。公開空地の取り方の手本となるビルである。
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シーグラムビルと公開空地1
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シーグラムビルと公開空地2
2 ポケットパーク
1967年頃から、小さな空地を利用した小公園がいくつもつくられるようになった。たまたま通りかかって見かけたポケットパークである。
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ポケットパーク1
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ポケットパーク2
港区にも小公園はあるが、ニューヨークのポケットパークと港区の小公園の違いは次のような点である。
・ ポケットパークは、主に大人のくつろぎの空間で子どもだけを対象にしていない。
・ 大きな通りに面しており、間口より奥行きがあるが、通りからよく見える。
・ ビルの壁面を生かしている。水を流したり、花やつたなどの植栽で飾ったりしている。
・ 全体にお金をかけており、デザインの質が高い。
港区でも、オフィス街などに、こんな公園があったらかなり利用されるのではないかと思う。
3 ブライアントパーク
ニューヨークのど真ん中、公共図書館前にある公園で、何度もいきたくなる居心地のよさそうな公園である。大勢の人が思い思いのスタイルで楽しそうに利用していた。こんな公園が港区にもできれば、住む人も働いている人も利用できるのにと考えてしまう。
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ブライアントパーク1 それぞれが自分のスタイルで楽しむ
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ブライアントパーク2 明るく、にぎわいがある
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つたがすばらしい
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すずかけのきの植栽
実は、この公園、かってはドラッグの売買、売春、ホームレスのたまり場など犯罪の温床になっていた。造園計画に問題があったようだ。1988年に造園家の手で再生され、多くの人が利用するようになり、かっての暗いイメージが一掃されたとのこと。造園計画が社会に及ぼす影響を示すよい例であろう。下の部分に葉が茂らないスズカケノキの植栽で、公園を明るく見せている。ツタの植栽も魅力的である。
4 セントラルパーク
高層ビルが林立するニューヨークで信じられないが、人口一人あたりの公園面積はなんと29.3㎡もある。港区の一人あたり公園面積は6.59㎡で、ニューヨークのわずか22%しかない。ニューヨークのほぼ中央にあるセントラルパークは面積341haもある。公園・緑地は、大きくまとまればまとまるほど、動植物の生態や都市の環境を保全する役割が大きくなる。ニューヨークのマンハッタンは、高層ビルが林立しても、ヒートアイランドはあまり問題となっていない。それは、マンハッタンが東西、河に挟まれており、南は海に面し、中央に大きなセントラルパークがあるので、水と緑に囲まれているためと考えられる。港区、東京とは環境面で根本的に違うのである。港区は決してニューヨークの高層ビルの林立を手本にしてはいけないのである。セントラルパーク東側周辺のマンションは、ニューヨークでも最も価格が高い高級住宅地になっている。公園の存在が経済価値を生んでいる。
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セントラルパーク
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セントラルパーク
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上から見たセントラルパークとマンハッタン グーグルアースより
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南の海から見たマンハッタン