今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

001 函館(北海道)・・・啄木も寒いのだろう背を向けて

2007-01-13 12:52:17 | 北海道

「北海道2泊3日2万2000円」という格安ツアーとは、いったいどんな内容なのだろうかという興味が発端で、夫婦二人の函館-小樽-札幌ツアーが決行された。冬休み直前というシーズン・オフだからか、3つの街のクリスマス・イルミネーション見物という、いささか侘しい売り物ではあるが、往復ともJALを利用、朝2夕1の食事付でこの料金というのだ。

羽田から小さな飛行機で函館に飛ぶ。搭乗手続きなどは個々に行うから、ツアーといっても団体行動のわずらわしさはない。実によくシステム化されていて、自分が何かの流通物資になったかのように錯覚するほどだ。羽田を発ったのが午後1時ころだから、函館着はすでに2時を回っている。2泊3日といっても初日の半分は無駄になる。こうした時間設定だからこそ格安にできるのかもしれない。

冬の北海道ということで身構えて出かけたのだが、函館は曇ってはいたものの寒くはなかった。空港に現地添乗員が待ち受けており、あわただしくバスに詰め込まれる。そしてまずはトラピスチヌ修道院(写真・上)。定番コースのツアー開始である。修道院の前庭と小さな展示施設を見ただけで「観光」というのだから凄い。あわただしく五稜郭へと移動する。

かつてこの地で、新しい国を造ろうと血を滾(たぎ)らせた人たちがいた――などと感慨に耽りたいのだが、冬枯れの五稜郭はひたすら殺風景である。城郭中心となるあたりにイチイの樹が植えられていたが、当時からのものだろうか、なぜイチイなのか、いささか興味を覚えたが聞きそびれた。

街路樹のナナカマドの赤い実を眺めながら元町に着くと、街はすっかり暮れていた。ツアーには失礼して夫婦で別行動を取る。閉館間際の旧英国領事館に駆け込んだ。所持するカードを提示すると記念品がもらえることをチェック済みだったのだ。われわれはしっかりした旅行客なのだ。

静かな住宅街でおしゃれな店を覗いたり、ケーキ屋でシュークリームを頬張ったり。急な坂を上ったり下ったりして、函館山山麓を徘徊する。「それにしても、街の人たちはどこにいるのだろう」と不審になるほど人影が少なかったのだが、坂を降り、海に近い倉庫街に行くと、おしゃれなモールがびっくりするほど込み合っていた(写真・下)。

そこがお目当てのクリスマス・ファンタジーの会場だった。青年会議所らしい年恰好の人たちが、涙ぐましいパレードをしてきてツリーに点灯すると、港の方角なのだろう、花火が打ち上がった。日が傾いた冬曇りの半日を歩いただけの印象は、「何と暗く、寂しい街か」というものだった。だからこそ、みんなが頑張っているのだろう。

バスの窓から、茫々たる海に向かって坐す啄木の像がちらりと見えた。寒々とした灰色の空に向き合う後ろ姿は、孤独で寂しそうであった。わがツアーも、その背のごとくひたすらわびしい。ホテルは、二度と御免蒙りたい老朽貧弱殺伐さであった。

駆け足で移動したわずかな体験ではあったが、他の土地では感じることのできない匂いを嗅いだ思いがした。函館は、存在感のある街だった。 (2006.12.21)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 000 街・町・坊・京・城・巷... | トップ | 002 吉祥寺(東京都)・・・... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

北海道」カテゴリの最新記事