今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

1128 芸術の森(北海道)彫像を眺めせっせと栗拾い

2023-10-13 07:58:09 | 北海道
札幌を再訪する機会があれば、必ず行ってみようと思っていた。「札幌芸術の森」である。市の中心部から南へ約15キロ、地下鉄の終点・真駒内駅からバスで真駒内川を遡る。ずいぶん遠いと感じたけれど、さほど山の中というわけではない。「芸術の森」は南区のれっきとした町名なのであって、40ヘクタールに広がる芸術公園と、札幌市立大学がほぼ全域を占めている。アートが点在する森の小道。私はこうしたロケーションにめっぽう弱い。



例えば箱根の「彫刻の森」が知られるけれど、むしろ鹿児島県の「霧島アートの森」がいい。霧島温泉郷から山中をずいぶん登った先の山腹に、作品はのびのびと点在して陽を浴びている。桜島も見えたかもしれない眺望を、私も一緒に楽しんだ。そして岐阜県の「養老天命反転地」は、理解不能な奇妙さが何とも面白かった。あとはイタリアにあるニキ・ド・サンファルの「タロットガーデン」に行きたいのだけれど、私にはもう時間がないかもしれない。



札幌の森はより野趣が濃く、緩い坂を登りながら木漏れ日を浴びて行くと、思い出したように様々な彫像が現れる。具象的な人物像もあれば前衛的なオブジェがそそり立ったりしている。ノルウエーの作家だというグスタフ・ヴィーゲランの作品広場があって、おおらかな人体像が森の空気に溶け込んでいる。赤児を掲げる「母と子」の像は、緑に染まって心が和む。美術館はありがたい存在だけれど、立体作品はやはり自然光の中で鑑賞したい。





「Portlandia」と刻まれた像が現れ、そういえばと気がついた。札幌市は米国オレゴン州のポートランドと姉妹都市なのだ。この像とそれを覆う木造建築はポートランド市民から贈られたものだという。ポートランドには日本国外で最も美しいと評価される日本庭園があって、庭に置かれた石灯籠には札幌市からの寄贈だと書いてあった。両市は太平洋を挟んでほぼ同緯度で、札幌が、開拓の歴史を持つ米国から多くを学んだ街であるからだ。



芸術の森には佐藤忠良を記念する子供アトリエもあって、子供の視点に合わせた可愛い作品が並んでいる。この彫刻家が楽しんだのだろう、陶芸作品も展示されていて、「まさに、私はこんな造形を作りたかったのだ」と思い当たり、たまらなく粘土遊びがしたくなった。私の造形もかなり似た風合いに近づいていたのだ。趣味の陶芸を店じまいして3年になるが、本当はまだ遊びたくて仕方ないのだろう。こうした瞬間だけは、老いの進行が恨めしい。


子供たちが大勢見学に来ている。市内の小学5年生で、近くの宿泊施設に1泊しての校外学習なのだという。札幌の子供は環境に恵まれている。「写真いい?」と声をかけると、ハイと答えてさっとノートを取り出し、学習中のポーズになる。恵まれた札幌の子供はしっかり者でもある。頭上
から栗がポタポタ落ちて来る。熊や猿が狙っているのかもしれないけれど、艶々した新しい実をたくさん横取りする。帰宅してさっそく茹でる。実に美味かった。



札幌と米国の深い関係を思い出し、クラーク博士にご挨拶しようと北海道大学に行く。街の中心部なのにキャンパスは鬱蒼として心地よい。博士の胸像は見つかったものの、よく知られる右手を挙げた立像が見当たらない。通りかかった女子学生に訊ねると、一瞬「またぁ?」といった表情を見せ、「あれは羊ヶ丘展望台というところにあって、遠いです」と言う。私のような無知な年寄りが、しばしば同様の迷惑をかけているのだろう。(2023.10.3-6)





























(ポートランドの日本庭園)

(同)

(同)



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