今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

081 福井(福井県)・・・城跡を役人どもが占拠して

2007-09-10 14:45:12 | 富山・石川・福井

福井は(私にとって)地味な土地である。私にとって、というのはこれまで縁が薄く、出身の知人も少ないという個人的印象によるものであって、ここを故郷とする人には地味どころか、豊かで誇るべき土地なのであろう。事実、県のパンフレットは「平均寿命は男女とも全国2位、1住宅あたりの住まいの広さ2位、共働き世帯数の割合1位、社長輩出数1位」と、誇らしげである。うーん、しかしやはり地味なんだなあ。

派手な方がいいのかといえば決してそうではなくて、重要なことは住民の幸福度だ。かつての「住みよさランキング」では上位常連だった福井は、きっといいところなのだろう。ただ「福井といえば**」という代名詞的存在が思い浮かばないから、印象はどうしても地味になる。なかなか「そうだ! 福井に行こう」とはならない。私も今回が、初めての訪問だったのである。

私はかねがね、地方の城下町で城跡が官庁街になっていることを不愉快に感じてきた。濠の周囲に県庁や市役所、裁判所、検察事務所といった無味乾燥な建物が並んでいることが多く、城跡というせっかくの公共財を役人が占有している鈍感さに腹が立つのだ。県庁や裁判所など窓口業務の少ない機関は、街の中心に存在する必要はない。城跡は絶好のランドマークとして、市民に開放されてしかるべきだ。さて、結城68万石の城下町・福井はどうであろう。

「北ノ庄城」は福井駅にも近い中心市街地にあって、見事な石垣と広い濠に囲まれている。ところが本丸に続く御本城橋に立って、私は空いた口がふさがらなかった。城内は県庁、県議会議事堂、県警本部に完全に占められているではないか。何という愚かな都市計画だろう。こんな状態を黙認してきた市民は無知であり、何も感じないで執務している知事以下職員たちは無恥である。僭越ながら私は福井市に「官尊民卑1位」の烙印を押させてもらった。

だが街を歩くと、それほど変な街ではないのである。足羽(あすわ)川を挟んで市街地と緑地がバランスよく広がり、小さい街ならばこその暮らし良さがありそうだ。「やさしくぬくもりのあるふるさと創造」などと、いまどき気恥ずかしくなる標語を掲げていて、案外、生真面目な気風の土地なのかもしれない。

駅は北陸新幹線開業を見越して早々と改築されたようで、モダンな駅舎脇に「福井は日本の真ん中、より近くより便利に」と大書した看板が立てられている。新幹線で東京と直結することが悲願なのだろう。開業により現在より50分短縮され、2時間40分で東京に行くことができるのだという。より近くより便利になるのかもしれないが、「より幸福に」なれるかどうか。

継体天皇が越前出身だということが誇りなのだろうか、博物館の「即位1500年記念展」のポスターが目立つ。しかしイベントとしてはいささか地味だ。昼には名物だという「ソースカツ丼」と「おろしそば」のセットを食べた。そこそこ美味しかったけれど全国的に名を成すほどの味ではなさそうだ。料理もやはり地味だ。

突然の驟雨にすっかり濡れ、駅前広場に立ちすくむと、間もなく雲が切れて北陸の夕陽が差し込んできた。小さくて地味な街は、夕暮れも静かであった。(2007.8.31-9.1)

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