島崎藤村は『夜明け前』で、主人公・半蔵に「あの山の向こうが中津川だよ。美濃は好い国だねえ」と語らせている。そこは馬籠宿下の「これより北 木曽路」となる十曲峠でのエピソードである。古い街道の本陣を守る定めに縛られ、世の変動に届かないもどかしさと苦悶する半蔵にとって、中津川は峠から遠望する「大きな世」であったのだろう。ここには「街と鄙」の象徴的な対比がある。時代が激しく移ろって行く渦中での「所在の差」である。 . . . 本文を読む
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