漱石の『吾輩は猫である』に、迷亭が「どうせ僕などは行徳の俎と云う格だからなあ」と苦沙味を煙に巻く場面が出てくる。苦沙味は「まずそんなところだろう」と澄まして応えるのだが、実は「行徳の俎」の意味が分かっていないのだと猫に見破られている。漱石が「行徳の俎」についてそれ以上説明していないのは、明治30年代の東京界隈で、この言い回しを知らないのは世相に疎い苦沙味くらいだ、と強調してみせたのだろう。 . . . 本文を読む
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