日々適当

hibitekitou

ガールズ&パンツァー 劇場版メイキングセミナー

movie/anime |2016-03-13
ちょくちょく修正・追記
3/12に秋葉原のUDXギャラリーで行われたToo.主催のガルパンのメイキングセミナーが開かれました。申し込み多数だったために抽選になったようですが、幸いにも受講票が送られてきたので参加してきました。なかなかに長丁場のセミナーとなってます(14:30スタートで18時過ぎまで行われたのかな)。

Too.のセミナーということで、まずは製品紹介のデモです。ShotgunとMassive for maxのデモでした。

休憩挟んでユーザーセッションが始まります。

グラフィニカの3Dディレクターの柳野氏とプロデューサーの向田氏により行われます。セミナー時間に比して内容が盛りだくさんなので、この手のセミナーである会社紹介はスキップしてWebページをみてください、ってことでした。

劇場版においてやってこととして、TV版戦車全車両・戦車のリグ・キャラクターモデル・エフェクト・3DBG各々をバージョンアップし、もちろん新規戦車もあり、インハウスツールも作るという盛りだくさんな内容となっているそうです。セミナーではそれぞれの紹介をしていくわけですが、その前に3D監督の仕事の紹介がされました。

3D監督の仕事。
ワークフローの設計。仕様書・発注書の作成。打ち合わせへの参加(絵コンテからどう落としこんでいくか・提案も)。チェックバック。この辺まではいわゆる監督のお仕事ですけど、柳野監督の特殊事例として戦車全部にリグを入れる、というのがあったりします。カット制作も行ったそうです。後者二つは監督の仕事というより柳野氏のお仕事ってことですね。ただ現場を指揮するトップがテクニカルなことをちゃんと把握した上で回している様子が伺えます。
柳野氏の好きな戦車はシュトルムティーガーで(これは前回のセミナーで言っていたそうで)、今回の劇場版にすの姿が登場したのだけど、作画なのが残念そうでしたw
テントの話もしていましたね(会場に持ち込んでいたようです)。一人用のテントを社内での寝泊まりに利用していたそうです。大切なのは中に敷いてあるキャンプ用のシートだそうです。熟睡できるそうで。寝袋はダメという話もしていました。参考にする状況には陥りたくないものです。

ということで、テレビ版のメイキングのおさらいが行われました。おそらくこちらで紹介されているセミナー [あんこうニュース] の内容のおさらいだったのでしょう。
テレビ版のワークフローをベースに劇場版のフローを作ったから、テレビ版を押さえておく必要があるという事でした。急ぎ足だったとはいえ、非常に興味深かったです。

3Dがやるべき事は、タイトルの中にあるガールズとパンツァーの中のパンツァーへのこだわり、戦車ファンに納得してもらえるレベルを目指すというものだそうです。具体的には戦車の形と動きにこだわったということですね。

形については、原田氏 [Polygon Model] からモデル(LWデータ)を借りるところから始まったようです。そして取材をし(総合火力演習とか本とか?)、予算内で限界までこだわってモデルづくりを行ったそうです。

動きについては戦車のギミックの分析を行ったそうです。その上でリアルな戦車の挙動を再現するってことですね。大写しにならない部分であってもそのギミックを再現したアクションをしており、それが(おそらく映像の説得力のために)大切なことなのだとおっしゃっておりました。
そうするためのリグです。ボタン一発で地面の傾斜を拾い出しそれに合わせて地面に張り付くことができる機構を用意したそうです。傾斜に沿って走ることができる。物理シミュレーションではなく、手付けアニメーションをベースとした(そのノウハウを生かせる)リグ構造となっているそうです。アニメータにとっての面倒な要素を半自動化することで演技づけに集中してくださいってことですな。

ワークフローによる効率化をはかっています。作画と3Dで同時にレイアウトをし、待ち時間を無くすという目的のフローとなります。3Dアニメータをオペレータから絵描きにする、のだそうです。3Dアニメータがいちから絵作りをする、という意味ですな。
レイアウトを作画と3Dでどちらがするかという話。3DCG要素が画面の主体になっていない時は作画先行で作画に合わせて3D作業を行うが、戦車主体のカットは3D先行でレイアウトも起こしてしまうのだそうです。アニメ制作現場に関わったことがないので分からないのですが、3DCGで完結するようなカットも作画でレイアウトが起こされることが多いってことなんですかね。

で、チェックを二つの段階に分けているそうです。まずレイアウトチェックをします。maxの画面のプレビュー素材で監督チェックを受けてしまうのだそうです。従来レイアウトチェックの段階で本番素材によるチェックを受けることが多かったそうですが(きちんとレンダリングした素材を使ってチェックを受けていたという意味かな?)、試行錯誤の手間の増大の割に効果が薄いってことのようです。というわけで、レイアウトチェクは簡易なプレビューで行い、その後の工程のT撮チェックで本番素材でのチェックを受ける、ということになるそうで(T撮って何の略?)。

モデリングワークフローとしては、外部参照を積極的に使うということをおっしゃっておりました。ラフモデルをチェックに出している間にリグを作ってアニメーションもつけてしまうのだけど、外部参照を使っているからモデルのOK出た段階でアニメーションまでつけられたラフモデルを本番モデルに差し替え、そのままレンダリングする、ってことっすね。
レンダリングについては、ほぼ一発レンダリングで全素材を出せる形にし、それを定型のコンポジションに流し込むことで完成する、というものになっている様子です。結果、誰がやっても同じ質感を再現することが出来るということで。ちなみに柳野氏は、複数素材を出すためにレンダリングを何度も回すことが大嫌いというようなことをおっしゃっておりました。まぁ好きな人も少ないだろうけど、必要な素材を出すために一発レンダリングで終わらせる手法を知らないとかで何度もレンダリングを回すとか、最終的な結果を得るには余計な素材も出しているとか、そんな無駄が嫌いなんだろうな、という印象ですかね。

こうしてテレビシリーズが終了しました(その後OVAが作られます)。

劇場版に向けて、演出(監督)方面からの要望がいろいろ届いてきたそうです。水島監督曰く「次は東部戦線ですねー」。
戦車10両追加で資料がない戦車もいっぱいある。
3D背動が多い。
3Dキャラクターがよりでいっぱい出る(車長を全員3Dで用意)。
解像度の増大(これについてはテストの結果、1920x1080より大きいサイズではあまり差が感じられなかったということで、このサイズに落ち着いたそうです。それでもテレビ版より大きいサイズだそうで、123.7%って数字をおっしゃっておりました。テレビ版はいくつのサイズでやってたんでしょ?)。
3DBG(自然物(草木)、雨のシーン)

これを受けて3D制作の課題としては以下のようなものがリストアップされます。
戦車モデルの大画面への対応(ポリゴン・テクスチャの粗、細かいミス)。
ミリタリー的に既存モデルは気になるところが多い(たぶんテレビシリーズ中もその後も資料が集まるたびにストレスをためていたようです)。
戦車が3ds max上に5台しか置けない(リグが重い)
3DCG総体としてビジュアルを上げる(エフェクト・キャラ・3DBG)
というのをあげていました。

前提としてクオリティを上げつつスピードを落とさないというのが商業作品として必要ってのがあります。

まずは形。戦車モデルですね。大画面に表示された時の粗の解消(ポリゴンを割り振るとか?)はモデラーの方々が課題を洗い出したそうです。ミリテリー的に気になっていた部分は以前からメモしていた部分を作り直しに反映したり、監修にチェックを依頼したそうです。
新規戦車は10両。テレビでは戦車モデルの購入や提供を受けてそこからアニメにあったものに修正して行ったそうですが、今回はいちから資料をもとに作成を行ったとのこと。OVAの時にそのやり方で作成した際、制作期間の短縮がはかられ、制作物の結果が良くなったそうです。その結果を受けてのこの制作手順ということですな。あらかじめセルルックに向けて最適な形に作成することができるからのようです。

作業工程としては、まず設計図を作成し、それを監修にチェックしてもらい、OKが出たらモデル制作をする。そんな流れだったようです。モデル制作が始まると、ラフモデル→監修による細かいチェック→それに応じて修正、という流れ。
カメラが寄る部分はポリゴンを割くことでパキパキした見た目の軽減を行ったり、迷彩戦車(チハ)制作にはMariを採用という話もありました(柳野氏自身は触ってはいない模様)。設計図を作るところで分からないところがあると、監修の人が独自のルートで資料を入手してくるという恵まれた体制であったという話もありました。具体例はBT-42についてだったかな。
話だけ聞いていると、想像で勝手に構造を作成するということは極力していない、きちんと下調べをして作業を開始しているような印象ですね。とても大事なことだと思います。
綺麗なモデルができたとして、しかし戦車は作中で壊れるわけで、だから壊れモデルというものが用意されます。これについてはテレビ・OVAで培ったフローを体系化したそうです。どーやってモデルを壊すかって話じゃなくて、どこが壊れるかという情報を整理していく情報の整理の話ですね。エクセルでシートを作成し云々ってことなんだけど、それを体系化したフローで管理していったんでしょう。

次に動き。リグのバージョンアップを行った模様。動作の軽量化、物理シミュレーション、使い勝手の向上、スクリプトによる管理。そんな内容のようです。max 2014の描画性能の向上でいっぺんにシーンにおける戦車の量が増えたって話もしていました(ってことは劇場版は2014で作ってたのかな?)。

リグを利用することで作業が省略されるので、アニメータには細かい演技をつけて欲しいという要請をしたようです。
・物理的に正しい動きで重量感
・タメツメのある動き
・コミカルな演技のところはその周辺の動きをリアルに
・戦車ごとのキャラクターを
キャラクターの例としてあげられたカットは洗女チームが遊園地に向かうための一般道に降りていくところで、戦車ごとに違う動きで斜面を下ったり、クルセイダーが画面手前を横切ったりというようなことをしているところを上げていました。
(もう一項目あったはずなんだけど、なんだっけ。迫力ってメモには書かれてた…)

で、maxを使った説明ではBT-42が読み込まれたシーンで行っています。
リグの特徴
・ボタンひとつで管理できる(ボタンを押したら地面に張り付き、ボタンを押したら地面に応じて傾く)
・ミリタリーの知識がなくてもちゃんと動く(これ以上動かないと言った制約が設けられている、のかな)
BTがハンドル操作で動作するとき、そこの機構もちゃんと再現されている様子が示されました(画面に映ったときに絶大な効果)。それ以外にも駆動輪部分の動作とか、知らないとできない部分があること示されています。

インハウスのツールの紹介です。リグを一括管理するツール。複数の戦車を同時に制御するときに便利なツールを用意。外部参照をボタン一発で行えるツール(Pencil+の設定まで行われる)。外部参照を選択した戦車のみ置き換えるような動作をする、とか。地面から浮いたり沈んだりを簡易にできる仕組み、とか。
会社ごとにディレクトリのパスが違うので、それを置き換えるためのツールなんかもあったそうです。複数会社で動くとき、これは大切ですね。

エフェクトの話。テレビではAfterBurnを使っていたのかな。それをFumeFXに変更したそうです。それはボリューム感を出したり、セルのエフェクトに寄せるため。
大量のバンクを作ったそうです(合成素材を作ったってことかな。もしかしたらFumeの設定をたくさん用意したってことなのかも)。いろいろな動きを想定して作っているということが示されます。出来上がった素材は、テレビ版と比較すると随分と変わっていることが分かる絵が表示されました。
またFumeFXを使えないスタッフでもシーンにエフェクトを簡易に配置できるような仕組みも用意したそうです(柳野氏自らのツール)。
その他、手数を減らすための様々な試みを行っていることが話されました。

キャラクターの強化。作画監督の修正を元に仕様書を作りモデリングしていったそうです。リグは楽園追放のモブキャラのためのものをカスタマイズして使用しているそうです。口も簡単なカスタムリグ。
会場のスクリーンには作画か3Dかどっちでしょうって質問とともに、例がいくつか流れました。その正解は発表されませんでしたけど(ちゃんとしているならどっちでもいいでしょってことで)、仮に3Dであったとしても、かなり自然な仕上がりになっていることが確認できました。おそらく作画と思われているところも実は3Dってのがあるんでしょうね。

3DBGの強化。この後のセッションに登場する小俣氏を中心とした部隊を作り、独自のワークフローを作り、社内で統括することで物量をこなす体制にしたそうです。

雨エフェクトは社内の撮影監督が特殊処理を作成。戦車上の水の跳ね返りを撮影上で行っているそうです。最低限の素材を出すことで実現する構造のものになっているようですよ。
流体シミュレーションはX10(クロステン)が行ったとおっしゃってました。

観覧車。ゴンドラの揺れは物理シミュレーション(MassFX)で、観覧車本体の転がりは移動距離を回転数に換算するリグが組まれていたそうです。が、それを利用すると結局滑って見えるので回転については手付けで行ったようです。このリグは柳野氏が突貫で作ったとのこと。結果として出来上がった表現は、滑っていないという意味で1941には勝ったのではないかって言っておりますw
ヴォイテクについて。その構造は、タイヤは動いていないが足は動いているというものだそうです(足が前後に動いているけど、タイヤは動いていない)。それを実現するリグも組んだそうで。物語ラストのヴォイテクは作画だそうだけど、これがタイヤと足が一緒に動いてしまっているのでリテイクを出したって話をしていましたが、映画観ると動いているんですよね、足と一緒にタイヤも。ってことはブルーレイ向けにリテイクかかっているとかでしょうか?
ガルパンの制作会社の丸山氏が
ガルパン劇場版リテイクもOVAも無事終了しました。
って3/19にツイートしているんで、ブルーレイでは絵が変わっているのかもしれません。


カール自走臼砲。コンテから推測して発射・着弾を類型化したそうです(効率的に素材を作れるようにってことでしょう)。エフェクト部分は後ろの美術と混じっても違和感がないというのが実現できているようです。
カールのエフェクトの質感(セルルックじゃなくて割とリアル系だったです)については異質感を出すために、3D側から演出に提案したそうですね。
カールのギミック(弾込め)は、一連の動きが自動化されているような話もしていましたかね。

というような話で休憩となりました。

続いて背景モデリングリードの小俣氏を加えてのセッションが始まります。
3DBGとカールのモデリングを担当したのが小俣氏とのこと。

カール自走臼砲。
クビンカ戦車博物館にあるカールの作成が依頼されたそうで、その制作は資料を集めるところから始まったそうです。実際のカールには無いパーツも戦車道の試合に出すための設定として新たに起こされているそうです。そんな資料集めの結果、専門家の方も驚くような発見もあったようです(それぐらい資料を読み込んでいたってことなのでしょう)。
テクスチャの特殊効果は強めにかけているそうです。テクスチャに質感を随分と乗せているってことですね(他の戦車にはそこまで乗せていない)。出力素材も他の戦車には無いアンビエントオクリュージョンと入射角度を考慮する素材を出しているそうです。それを追加することで他の戦車とは異質なものであると表現しているってことなのでしょう。
ハンドルとかそれに付随するギミックが連動するような構造を構築しているという話もありました。モデリングもギミックも相当細かく作りこんでいるようです(そのための詳細な設定があったということですね)。カールの走行時と発砲時の姿勢が違うところなんかも再現しているそうで。

商店街の話題です。大洗の商店街はテレビ版でも話題になった部分ですが、劇場版ではより長い尺で使われています。ということでスタッフの皆さんでロケハンし、スタート地点から肴屋に突っ込むところ、その先の曲がっていくところまでの写真を撮りまくっているそうです(この写真の撮り方も手法が確立しているようでそれに従って撮影を行ったようですね)。それを元にモデルを作成しているそうで。作業量が膨大だったので、テクスチャはカメラマップで張り込んだようです。面白い話題として、協力してくれたお店をちゃんと出そうとしたのだけど、魚忠って店(劇中では魚剣)の建物が奥まっていて劇中のカメラワークでは見えてこないため、代わりに店先にアンコウを吊るしているそうです(が、その後劇場で見た時、確認できなかった。今度行った時(行くのか?)ちゃんと確認したい)。
というわけで、相当のこだわりでこの商店街の作成を行っていることが語られました(テレビ制作の後に街灯の形が変わっていることも把握していて、それを反映していたりとかしてるそうですよ)。
ちなみに、モデルが完成したこの通りを一人称の視点でIV号を追いかける場面は柳野氏自ら担当しているそうです。

遊園地のところの話題では、シーンの重さが語られます。遊園地の広場の部分のシーンをmaxで開かれたものを見せてもらったわけですが、このシーンを開くのに5分かかるそうです。
設定資料を元にモデルを起こし配置していくわけですが、そこで戦車が演技を行うわけで、それに適した形にアトラクションの構造物の配置を思考錯誤した様子が語られました。
ここの場面(背景)、いろいろとミリタリーネタが仕込まれているそうですよ。
で、問題はここの物はいろいろ壊れなければならないということで、全26箇所分、壊れた形状のデータも作成しているそうです。その壊れ方の指示書が柳野氏から渡ってきたそうです。
(ここでヴォイテクの構造をモデルデータを見ながら確認させてもらいました。ヴォイテクはホコリで少し白くなっているバージョンとホコリが吹っ飛んでいるバージョンの二つが用意されているような話もありましたか。)

エスカレータのモデルも見せてもらいました。アウトレットに実際にあるエスカレータですけど、細かいところまで再現されている様子が示されました。エスカレータ上の電光掲示部分とかも実物と同様に動作しているそうです(今度行った時確認したいですね)。

観覧車の細かいこだわりについてのお話もありました。(転がりながら飛び散るガラスとか)

3DBGはかなり広範囲で利用されているそうです。そして地面については寄り用、引き用のテクスチャを作成しており、シェーダの方でカメラからの距離に応じてどちらを表示するかを決めているという話がありました。
3DBGの例でいくつか映像を見せてもらっています。もちろん3Dだけで完結している所ばかりではなく、臨機応変でカメラマップ用の素材を発注していたりもしているそうで。
ちなみにそこの部分の小ネタで、西のチハの模様が曲がっているのは試作機だからで、それ以外は量産機として描かれ、模様はまっすぐなのだそうですよ。

というようはお話を聞かせてもらいました。

最後のセッションには演出の藤井氏が加わります。主に前半部の演出を担当されたそうです。
ロケハンの話。ロケハンで実際にどんな風に撮影したのかという撮影風景の写真を交えつつのお話です。で、演出として藤井氏は大洗の街にどう戦車を出すか、キャラクターをどう描写するかというところに腐心したそうです。具体例としてIV号がターンしてクルセーダーを最初に撃破するところがあります。忠実に現場を再現するとそこは非常に狭い道であり、また、周りの建物との比較で戦車が意外と小さく見えてしまうのだそうです。戦車のスケール感を出すために周りの建物を調整しつつ、敷地面積は変えないとか、戦車をよりよく見せるための指示をしていったそうです。
あるいは戦車は意外と小さいということを理解しつつスケール感を出すために、リアルなサイズ感で物を配置しつつ、細かいところでサイズに嘘をついて(カーブミラーとか道路標識を小さくしたり)戦車を表現したそうです。
水族館のシーンではカメラが昇っていく場面は気持ち良さを優先し実際よりも相当高くカメラが昇って行ったというような話もしています。
リアルと嘘のボーダーラインの感覚は人それぞれなので、制作者それぞれの感覚で作るとバラバラになってしまうために、その基準を作って行くお仕事をしていたということですね。

Googleのストリートビューはロケハンの計画を立てるのには使えるが、必ず現地に行った方がいいという話もしていました。大洗の町役場の前でのどんぱちはストリートビューを見ながら想定していた場面なのだけど、実際に行ってみたらものすごく狭かったということが実感としてわかり、結果として、建物の大きさを随分と嘘をついた状態になっているそうです(町役場手前のカーブから町役場までの距離がそう以上に近く、そのまま再現すると、なかなか相手に命中しないという状態にならないため、距離を稼ぐために建物を長くしたってお話)。またストリートビューは情報が古い可能性があることも注意しないといけないようです。



大洗を忠実に再現することよりも、作品を面白く見せるために、どうアレンジするかが大切というお話もしておりました。

3D主体でレイアウトがされた場面は、3D斑がガイドが出てきて、それに従って美術が背景を作っていくわけだけど、ここでどう嘘をつくかというような指示を出して行ったようです。(大勘荘のところでの押し合いのところが例に出されておりました。実際にはそんなに距離がないけど、こーやって嘘をつくというような設計をしたということなのでしょう)

戦車は箱型でパースが正確であるので、大洗の背景の日本家屋の複雑な形状を2Dで引いて使ったら上手くいかなかったとか(立体物のパースがカメラが動くと変わるはずなのに、1枚の絵をスクロールさせるだけだと手前の戦車がリアルなだけに嘘が強調されてしまうってことかな)、劇中の速度感で動くと戦車がものすごく高速で走っていることになってしまうので、背景を調節してそれを和らげる工夫をしたとかそんな話がありましたか。
また迫力を出したり、演出上の要請で嘘をつくために、奥はズームレンズだけど手前は広角レンズでというような絵を作ったりしているそうです。

こうして書いてみると、いかにうまく嘘をつくかってことに腐心しているように見えてくるなぁ

2Dと3Dの歩み寄りをもっとやればよかったという反省を語っております。
大洗におけるB1bisが吹っ飛ぶところで、煙は手書きだったそうですけど、その手書き素材をうまく3Dに重ねるのに苦労する結果があった話がありました(3D側の素材に手書き素材を挟み込むように3D側に素材発注をできなかった、ってことかね)。作り始める前に綿密なセッティングを行うべきだったって話ですね。力技ではなくちゃんと方法を探っておくべきだった、ということです。
ちなみにここでの面白い話として、学園艦上に着陸したC-5Mですけど、これ、手描きなのだそうです。会場はそこでどよめきが起こったことが印象に残っております。計器類なんかは実に細かく、また理屈をもって動いているようですよ。またC-5Mから戦車が放出される場面は、戦車はグラフィニカ、飛行機は別会社の人の3Dモデル、機内の壁面は手描きの素材が張り込んである、というそんな状態という話もありました。
いろいろなところで作られた素材をまとめるのも演出のお仕事だったってことです。

といったところで時間が来て、セッションが終了しました。

個人的にはmaxは全く使っていないし、その細かい使い方のセッション内容でもなかったし、3Dアーティストの制作に直接役に立つようなものではなかったと思いますけど、でも、いろいろと刺激になる内容でした。どちらかというとプロジェクトのマネージメント方面の話題ってことになりますかね。っていうかガルパンファンとしては仕事抜きにして普通に興味深い話の連続で、多分3DCGを業務としていない人も楽しめたんじゃないかなって内容だったと思いますよ。

ちなみにセミナー参加者にはのちほど粗品進呈ってなっておりましたが柳野氏のツイートによると、抽選に外れた人にも送られるそうです。大盤振る舞いですね。届くのを楽しみに待ちたいと思います。
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