万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

タイ洪水―政治の調整力で水門問題の解決を

2011年11月05日 14時53分26秒 | アジア
タイ洪水 水門開閉、せめぎ合い 住民デモ、行政は対立(産経新聞) - goo ニュース
 大洪水が続く中、タイでは、政府とバンコク市との間で水門の開閉をめぐる対立が発生しているそうです。水門を開けるとバンコク市に被害が及び、水門を閉めると上流部の被害が深刻化するという、まさに、ゼロ・サム問題です。

 貧しい農村部を支持基盤としているインラック首相としては、水門を開けたいところなのでしょうが、バンコク市としても、人口が集中し、かつ、行政の中枢部でもある首都は、何としても守りたいはずです。こうした場合は、何らかの妥協が成立しませんと、結局、洪水被害の拡大と混乱を抑えることはできませんし、水が引いた後にも、両者の間に感情的な対立を残すことになります。タイの迅速な復興を考慮すれば、首都や重要拠点を優先して守ることには一理はあります。しかしながら、それでは、上流部の人々だけが被害を背負い込むことになりますので、より大きな被害を受ける上流部の住民の方々には、何らかの代償を約束する必要があると思うのです。例えば、復興期にあっては、政府が、責任をもって早期の復旧に努めるとともに、住民の被害に対しては、給付金や補償金を支給するといった措置を約束すれば、あるいは、水門の開閉問題に対する理解を得られるかもしれません。

 政治には、判断に苦しむゼロ・サム問題に直面することがしばしばあります。タイの大洪水もまた、苦渋の決断を要する問題なのですが、調整力を上手に働かせることができれば、被害を最小限にとどめ、速やかに復興に向かうことができるかもしれないと思うのです。

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