万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

女性宮家創設―制度矛盾と深刻なリスク

2011年11月25日 11時23分10秒 | 日本政治
「女性宮家」創設検討を…宮内庁、首相に要請(読売新聞) - goo ニュース
 宮内庁は、野田首相に対して、”女性宮家”の創設の検討を提案したと報じられています。しかしながら、”女性宮家”は、制度的には矛盾に満ちていますし、日本国が、将来において深刻なリスクに直面する可能性も否定できません。

 宮家とは、宮号鎌倉末に最初の世襲親王家が創設されたことに始まりとし、江戸時代には、新井白石が、徳川御三家の制度を参考に、皇位継承を確かにするために閑院宮家などを創設しています。白石の立場を踏襲するならば、”女性宮家”の創設は、意味のないものとなります。何故ならば、宮家の女性当主の子である王が、父系から皇統を継がない限り、天皇に即位する資格がないからです。つまり、皇位継承の安定性には全く寄与しないのです。この矛盾を解決するためには、男系男子継承を定めた第一条を改正し、女系男子でも皇位を継承できるようにしなければなりませんが、今度は、初代の神武天皇から続く皇位継承の慣例を途絶させることになります(歴代女帝は、すべて独身の皇女や皇族を配偶者としていた寡婦の皇女・女王など、配偶者のいない皇親女性)。父系から皇統を継がない天皇は、日本の歴史上、存在していないのです。もし、母系からしか皇統を継がない天皇が即位するとなれば、それは、天皇の正統性が失われることになりかねません(国民の多くが、正統な天皇とみなさなくなった時点で、天皇家の権威は失墜する・・・)。

 将来的なリスクとしては、東宮家で既に表面化しているように、女性宮家には、配偶者やその親族に利用される可能性が極めて高く、背後に、新興宗教団体や外国勢力が蠢くことが予測されます。明治憲法は、こうした事態を怖れて男系の女性天皇さえ否定したのですが、皇族に自由恋愛を許している現在では、このリスクは、明治時代の比ではありません。宮家ともなれば、国費が支給されるわけですから、外戚や特定の支持団体による皇室利用は、国民感情が許さないのではないでしょうか。

 この他にも、この提案には様々な問題があるのですが、宮内庁が充分に国民に対して情報を提供していない中で、”女性宮家”の創設を提案しましても、国民の多くが賛同するとはも思えないのです。

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