万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

TPP―国家と市場の調和を

2011年11月14日 15時24分55秒 | その他
もう止まらない「TPP交渉参加」という名の電車 政府・業界の議論迷走で置き去りにされた国民の不安(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
 戦後の国際社会の流れを観察していると、興味深い現象を見つけることができます。それは、政治の分野では、国家分離・独立が急激に増加して細分化される一方で、経済分野は、逆に国境を越えて拡大方向に向かっているということです。このため、国家と市場とは、得てして敵対関係として描かれてきました。

 とりわけ、80年代以降においては、市場のグローバル化が進み、EUを始めとした地域経済圏の成立もまた、こうした経済活動の広域化を背景としています。そうして、ついにTPPへの参加議論が持ち上がったことで、日本国もまた、国家と市場との軋轢問題に直面することになったのです。自らの国を保持したいという保守的な願望と自由で広々とした空間で経済活動をしたいという願望は、しばしば一人の人間が同時に抱くアンビバレンツな感情でもあります。果たして、これらの両願望を同時に充たす解は存在しているのでしょうか。今日では、政治の論理に走って鎖国政策を採ることはできませんし、経済の論理を極大化して、国民の多くが職を失い路頭に迷ったり、農地がペンペン草が生い茂る荒れ地になることを望む国はないはずです。

 TPPの成否は、実のところ、この国家と市場との調和点を見つけることにあるのかもしれません。この問題は、21世紀に解決すべき困難な問題の一つでもあります。このように考えますと、TPPの議論とは、国家と市場の問題に真剣に取り組む重要な機会となるのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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