万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

菅政権は狂い咲きのグローバリスト内閣?

2020年10月07日 12時34分09秒 | 日本政治

昨日、10月6日付の日経新聞の一面には、菅新首相のインタヴュー記事が掲載されており、企業統治改革に関する同首相の見解が掲載されておりました。見出しには「管理職「女性、外国人を拡充」」とあり、政府としては、日本企業に対してさらなる女性や外国人の管理職登用を促したいようです。

 

 政府が主導の企業統治改革とは、政府による民間への介入ともなりかねないのですが、今日、グローバリズムは曲がり角に至っているように思えます。その理由の一つは、現状にあってさえ、とりわけ外国人に経営権を握られるようになると、日本国の国益や日本人の雇用、あるいは、日本国の慣習などは、一切、無視されることに気が付き始めているからです。

 

ソフトバンクグループを率いる孫正義氏は朝鮮半島の出身者ですが、携帯通信事業で莫大な利益を上げながら日本国に対する納税額は僅かであり、割高な通信料金から得た資金は、海外企業の買収や出資など、国外における事業拡大に投じられています。こうした事例は同グループに限ったことではなく、先進国で上げた収益を途上国での事業拡大に振り向けるのは、グローバル企業の典型的な戦略です。この戦略に従えば、グローバル企業に富が集中する一方で、先進国は国家も一般の国民も貧しくならざるを得ないのです。

 

また、日産の会長であったカルロス・ゴーン被告の逮捕劇に象徴されるように、外国人経営者は、いわば、‘支配者’、あるいは、‘搾取者’として来日するケースもあります。同氏が背任罪に問われたように、日本企業は、言葉が悪くて申し訳ありませんが‘食い物’にされてしまうケースものないわけではありません。

 

また、武田製薬では、2014年にクリストフ・ウェバー社長の下でアイルランドの製薬大手のシャイアー社を過去最高とされる凡そ6兆円で買収し、一気に世界製薬トップ10に入るグローバル企業として躍り出ることとなりました。グローバル化に成功する一方で、日本人に長らく親しまれてきた一般市販薬の事業(武田コンシューマーヘルスケア)については、アメリカの投資会社ブラックストーン・グループへの売却が予定されています。こうした経営決断も、グローバル企業にとりましては当然すぎるほどに合理的な判断であり、全世界を視野に入れての事業展開からすれば、日本国は、本社が所在する拠点に過ぎないのです。

 

因みに、武田コンシューマーヘルスケアの売却予定先であるブラックストーン・グループについては、2007年6月に、中国の政府系投資ファンドである中国投資有限責任公司が30億ドルで株式約9.37%を取得しています。同グループの創設者であり、かつ、CEOでもあるスティーブ・シュワルツマンは‘中国の清華大学に3億ドルを寄付して経済管理学院顧問委員会に名を連ねて自らの名のついたカレッジも設立している親中家’とされていますので、将来的には、武田コンシューマーヘルスケアは、同グループを介して中国の製薬大手の手に渡る可能性も否定はできません。間接的であれ、直接的であれ、家電分野で起きた現象、即ち、資金力に優る中国企業による日本企業の吸収が、今や、全ての事業分野に広がりつつあるのです。

 

菅首相の企業統治改革の新方針は、海外からの投資を増やし、企業の競争力を高めることが狙いとされていますが、‘投資’とは、日本企業の統治権が海外に移ることを意味しかねず、実際に、上述した中国投資有限責任公司は、日本企業に対して‘投資’しているそうです。しばしば、経団連等の中国寄りの経営方針が‘自滅行為’、あるいは、‘より手厳しく売国行為’として批判を受けていますが、日本の経済界の親中姿勢は、中国による日本企業への‘投資’が原因しているのかもしれないのです。

 

株主としてのみならず、今後は、経営に参画する外国人も増加するとなりますと、日本企業は、そして、日本国民の雇用状況は、一体、どうなるのでしょうか(事実上、中国を含む外国勢力に合法的に乗っ取られる?)。事業を世界規模に最も収益が高まるように効率的に展開したいグローバル企業は、当然に、自国への拘りはありませんので、拠点を海外に移すことも躊躇しないでしょうし、幹部であれ、一般社員であれ、積極的に外国人を登用・採用することでしょう。今日、アメリカ等ではグローバリズムに歯止めがかかりつつありますが、菅首相は、ブレーキを踏むべき時に、アクセルを踏んでいるように思えるのです。


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