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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

国民の方が高い‘知的レベル’

2024年09月16日 10時33分29秒 | 日本政治
 先日、自民党総裁選挙への小泉進次郎氏の立候補表明の記者会見にあって、フリーランスの記者から知的レベルの低さを問題視する質問を受けたことが、メディアやSNS等で話題となりました。一般の社会にあっても、本人に面と向かって‘知的レベルの低さ’を指摘することはめったにはありませんので、その暗黙のマナーを破るような質問に驚かされたのです。かくして、知的レベルの問題が、突如として政治の表舞台に登場してくることとなったのですが、実のところ、知的レベルは、国家や国民にとりまして大問題であるように思えます。

 もちろん、政治家の知的レベルが低い場合、全ての国民に被害や損害が及ぶこととなります。法律や政策は凡そ全国民に対して法的効果が及びますので、政治家が杜撰で浅慮な決定を行なえば、国民は愚かな判断の巻き添えとなり、国家滅亡を憂き目にあいかねません。また、知的レベルが低いが故の偏狭さが自己中心となって現れる場合には、私利私欲から権力を私物化してもそれが、国民に対する背任にも当たり、政治倫理に反することに思い至らないことでしょう。そして、さらに恐れるべきことは、知的レベルの低さこそ、最も望ましい‘操り人形’としての素質であり、適性である点です。自分で考えない人ほど操りやすいのであり、それが政治家ともなりますと、国民は、自国の政府が外部の‘傀儡政権’であることを疑わざるを得なくなるのです。これは、国家の独立性並びに民主主義の危機でもあります。

 小泉候補者に対する質問は、国際会議等における他国の首相達とのコミュニケーションに際しての知的レベルの差を問題としたのですが、政治家の知的レベルの問題は、内政外政の両面において国家的な大問題と言えましょう。この点は、国民の誰もが理解するところなのですが、それでは、国民の側の知的レベルはどうでしょうか。

 国民の知的レベルと申しますと、先ずもって、衆愚政治が思い浮かばれます。民主的な国家体制も、国民が感情に流されやすく、愚かであれば自壊してしまいます。政治家が愚かな場合とは別の意味でリスクが高いのは、古典古代の政治哲学者も述べるところです。しかしながら、ここで述べるのは、衆愚とは逆に、国民の知的レベルが高い場合に起きる問題です。政治家も国民も共に高レベルの状態が最も望ましいのは言うまでもありませんが、政治家あるいは‘権力者’のレベルが低く、国民のレベルが高いというケースもあり得るのです。

 とある国際調査によりますと、嘘か誠か、最も平均IQの高い国民は日本国民なそうです(平均を100とすると105なそう・・・)。ノーベル賞受賞者も数多く輩出しており、日本国民は、決して愚かな人々ではないはずです。そして、この国民の知性の高さが、今日、至る所で摩擦を起こし、国民の不安並びに不満を高めているように思うのです。

 例えば、今日、多くの国民から批判が寄せられている皇族の進学問題一つをとりましても、この知性の格差問題が浮かび上がってきます。皇族は、権威とはされていますが、宮内庁は政府の一機関ですし、皇室典範も公法の一つです。今般の進学問題は、東大の推薦入学の資格要件を皇族である悠仁氏が入学し得るように変更させ、かつ、マスメディアを使って‘ご優秀神話’を拡散したことにあります。公的大学入試制度を変えさせたとなりますと、法的根拠もなく‘権力’を行使したことにもなるのですが、果たして、どれだけの国民が、皇族、あるいは、政府の措置を是とし、マスメディアが連日のように報じる‘ご優秀神話’を信じるのでしょうか。

 今日、凡そ全国民が義務教育を受けており、相当数の人々が高等教育に進んでいます(高等学校進学率97%以上、大学進学率凡そ60%・・・)。戦前ならばまだしも、国民の教育レベルが格段に向上した現代にあって、公的制度の公平性を歪めるような特権を認め、政府サイドが流す、あり得ないような神話を事実として信じ込む人は、極めて少数の人となりましょう。もしくは、創価学会や旧統一教会など、皇室との繋がりのある新興宗教に洗脳されてしまった人々なのかも知れません。

 そして、このことは、政府サイドでは、‘国民の知的レベルは低く、プロパガンダを信じるほどの知性しかない’と高をくくっているか、‘フィクションであることが分かっていても信じよ’、という精神的な圧力を国民にかけていることを意味します。あるいは、政府側の知的レベルが低く、本気で国民がプロパガンダを信じるものと‘信じている’のかもしれません。何れにしましても、皇族、延いては象徴天皇制を維持するためには、国民の知的レベルが低いことが要件となるのであり、より知性の高い国民に忍耐を強要しているとも言えましょう(あたかも北朝鮮のよう・・・)。この問題は、皇族の問題に限らず、今般の自民党総裁選挙における小泉政権擁立の戦略も、既に多くの国民に見透かされているのではないかと思うのです。

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