日中首脳会談 首相「両国の協力の地平線は広がりつつある」
北朝鮮に対するアメリカの圧力が強まるにつれ、背後で同国を支えてきた中国とロシアは軍事的結束を強めています。ロシア軍が極東、並びに、シベリアで今月11日に開始した大規模軍事演習には中国軍も参加しており、おそらく、仮に、トランプ政権が北朝鮮に対して軍事制裁に踏み切る場合には、第三次世界大戦をも‘人質’とした軍事的支援を行う準備があるとするメッセージなのでしょう。中ロ接近は、アメリカの同盟国である日本国に対する効果をも狙っており、この脅威は、他人事ではありません。
明治以降の歴史を顧みると、ロシアは、常に日本国の軍事的行動を方向づけてきました。日露戦争は言うまでもなく、それに先立つ日清戦争も、直接的な対戦国は清国であったものの、主たる開戦理由は、‘ロシア帝国の南下政策が忍び寄っていた朝鮮半島の安全を確保するために、清国の冊封下にあった李子朝鮮国を独立させる必要性があった’から、と一先ずは説明されています。第二次世界大戦後は、冷戦構造における東西陣営の線引きが日本国とソ連邦を隔てたため、対立関係は当然のことのように引き継がれたのです。
一方、中国との関係を見ますと、上述した日清戦争以降も、同国との軋轢は日本国を泥沼の戦いに引き込む最大の要因となってきました。女真族の故地であった満州国の正当性をめぐり、日本国は、国際聯盟を脱退するに至り、その後は、盧溝橋事件、あるいは、それに続く第二次上海事件等を発端として、日本軍は、半ば内戦に干渉する形で、長く苦しい大陸での戦争を闘うこととなるのです。その後、共産党が内戦に勝利をおさめ、中国大陸で共産党一党独裁体制が成立すると、計画経済の失敗により中国の軍事的脅威は著しく低下し、暫くの間、中国は、日本国の安全保障を脅かす、あるいは、軍事行動を引き起こす存在としては認識されない状況が続くのです。
ところが、80年代後半に至ると、上記の様相は一変します。東欧革命を経てヨーロッパにおける冷戦が終結してソ連邦が崩壊する一方で、中国は、政治的には共産主義を堅持しながら、経済的には、改革開放路線に舵を切るからです。この時、日本国は、いささか楽観的な見通しの下で、こうした変化に対処したように思えます。冷戦の終焉と同時にソ連邦の脅威も消滅したかのような錯覚に囚われましたし、中国に対しても、依然として共産主義国家である事実を直視しようとはしませんでした。そしてこの忘却とも言える態度は、今日なおも、政府から民間に至るまで日本国内に蔓延しています。
純粋に地政学的な見地に立ちますと、日本国は、中ロに南北から挟まれる形勢となりますので、両国が軍事的脅威であることは昔も今も変わりはありません。しかも、中国は、世界第二位の経済大国にも成長しており、地政学のみならず、経済力を政治的目的に用いる国家の行動に注目した地経学の観点からも、周辺諸国に重大な脅威を及ぼしているのです。今日、日本国は、その歴史上はじめて中ロの両国による地政学、並びに、地経学上の脅威に直面していると言っても過言ではありません。言い換えますと、戦後に多大な犠牲の上に構築されてきた国際法秩序が崩れ、国際社会が無法地帯化した場合、戦前にも増して、日本国は、政治経済の両面において危機的な状況に置かれることが予測されるのです。
日ロ間に横たわる北方領土については、日本国政府は、ロシア側が否定しているにも拘わらず、平和条約交渉の進展を理由に対ロ経済協力を進めようとしておりますし、中国に対しても、13億の市場に対する期待感からか、日中経済協力を深めようとしています。しかしながら、予測される危機に思い至れば、日本国は、ロシアが経済力を備えた第二の中国とならぬよう(両国の伝統的な戦略は、敵を大陸奥地まで誘き入れ、退路を断って殲滅する…)、資金と技術を求めるロシアには対しては協力を慎むべきですし、市場規模の魅力と笑顔で手招きをする中国に対しても距離を置き、アメリカと歩調を合わせて経済制裁に転じるのが、長期的な視点からすれば得策のように思えるのです。
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北朝鮮に対するアメリカの圧力が強まるにつれ、背後で同国を支えてきた中国とロシアは軍事的結束を強めています。ロシア軍が極東、並びに、シベリアで今月11日に開始した大規模軍事演習には中国軍も参加しており、おそらく、仮に、トランプ政権が北朝鮮に対して軍事制裁に踏み切る場合には、第三次世界大戦をも‘人質’とした軍事的支援を行う準備があるとするメッセージなのでしょう。中ロ接近は、アメリカの同盟国である日本国に対する効果をも狙っており、この脅威は、他人事ではありません。
明治以降の歴史を顧みると、ロシアは、常に日本国の軍事的行動を方向づけてきました。日露戦争は言うまでもなく、それに先立つ日清戦争も、直接的な対戦国は清国であったものの、主たる開戦理由は、‘ロシア帝国の南下政策が忍び寄っていた朝鮮半島の安全を確保するために、清国の冊封下にあった李子朝鮮国を独立させる必要性があった’から、と一先ずは説明されています。第二次世界大戦後は、冷戦構造における東西陣営の線引きが日本国とソ連邦を隔てたため、対立関係は当然のことのように引き継がれたのです。
一方、中国との関係を見ますと、上述した日清戦争以降も、同国との軋轢は日本国を泥沼の戦いに引き込む最大の要因となってきました。女真族の故地であった満州国の正当性をめぐり、日本国は、国際聯盟を脱退するに至り、その後は、盧溝橋事件、あるいは、それに続く第二次上海事件等を発端として、日本軍は、半ば内戦に干渉する形で、長く苦しい大陸での戦争を闘うこととなるのです。その後、共産党が内戦に勝利をおさめ、中国大陸で共産党一党独裁体制が成立すると、計画経済の失敗により中国の軍事的脅威は著しく低下し、暫くの間、中国は、日本国の安全保障を脅かす、あるいは、軍事行動を引き起こす存在としては認識されない状況が続くのです。
ところが、80年代後半に至ると、上記の様相は一変します。東欧革命を経てヨーロッパにおける冷戦が終結してソ連邦が崩壊する一方で、中国は、政治的には共産主義を堅持しながら、経済的には、改革開放路線に舵を切るからです。この時、日本国は、いささか楽観的な見通しの下で、こうした変化に対処したように思えます。冷戦の終焉と同時にソ連邦の脅威も消滅したかのような錯覚に囚われましたし、中国に対しても、依然として共産主義国家である事実を直視しようとはしませんでした。そしてこの忘却とも言える態度は、今日なおも、政府から民間に至るまで日本国内に蔓延しています。
純粋に地政学的な見地に立ちますと、日本国は、中ロに南北から挟まれる形勢となりますので、両国が軍事的脅威であることは昔も今も変わりはありません。しかも、中国は、世界第二位の経済大国にも成長しており、地政学のみならず、経済力を政治的目的に用いる国家の行動に注目した地経学の観点からも、周辺諸国に重大な脅威を及ぼしているのです。今日、日本国は、その歴史上はじめて中ロの両国による地政学、並びに、地経学上の脅威に直面していると言っても過言ではありません。言い換えますと、戦後に多大な犠牲の上に構築されてきた国際法秩序が崩れ、国際社会が無法地帯化した場合、戦前にも増して、日本国は、政治経済の両面において危機的な状況に置かれることが予測されるのです。
日ロ間に横たわる北方領土については、日本国政府は、ロシア側が否定しているにも拘わらず、平和条約交渉の進展を理由に対ロ経済協力を進めようとしておりますし、中国に対しても、13億の市場に対する期待感からか、日中経済協力を深めようとしています。しかしながら、予測される危機に思い至れば、日本国は、ロシアが経済力を備えた第二の中国とならぬよう(両国の伝統的な戦略は、敵を大陸奥地まで誘き入れ、退路を断って殲滅する…)、資金と技術を求めるロシアには対しては協力を慎むべきですし、市場規模の魅力と笑顔で手招きをする中国に対しても距離を置き、アメリカと歩調を合わせて経済制裁に転じるのが、長期的な視点からすれば得策のように思えるのです。
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