万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

安倍首相の日中関係改善発言の不可解

2018-09-02 14:27:14 | 国際政治
本日の産経新聞朝刊の第1面には、「首相 対中改善に自信」とする見出しで、自民党総裁選挙を前にした安倍伊首相のインタビュー記事が掲載されておりました。‘完全な正常軌道に戻った’とする小見出し付きで。

 この記事を読んで、不安に駆られた読者も少なくなかったのではないでしょうか。今日、無法国家としての中国の暴力性、並びに、侵略性が露わとなり、国際社会においては中国警戒論が高まっております。米中関係の緊張も増す一方であり、経済分野における貿易戦争は氷山の一角に過ぎず、中国の軍事的野心や人権問題等に対しても、アメリカは最早黙ってはいません。中国国内を見ても、習近平国家主席による独裁政権は、先端技術を駆使した情報統制と監視体制の徹底により中国国民を抑圧し、ソ連邦さながらの監獄国家へと歩を進めているのです。

こうした悪しき国家との関係改善が‘善’であると感じる国民は、果たしてどの程度存在するのでしょうか。むしろ、常識的な判断からすれば、‘距離を置くべき’と考える国民の方が圧倒的に多いはずです。中国と云う全体主義国家そのものが‘異常’なのですから、‘完全な正常軌道に戻った’のフレーズが意味するところは、‘日本国も異常軌道に同調する’いうことになりかねません。暴力団と一般人との関係に喩えれば、一般人が‘暴力団と仲直りした’と発言すれば、周囲の人々は、この人は‘暴力団の仲間入りをした’と解釈し、警戒心を以って接せられることでしょう。国際社会も同様であり、日本国が中国との関係改善に動けば、当然に、日本国は、中国の仲間、延いては、将来的には中国陣営への参加を意図しているのではないか、と疑われても致し方ありません。たとえ首相の真意が別のところにあったとしても…。

かくも重大なリスクがありながら、安倍首相が、この時期に、対中改善発言を行ったのは不可解です。同記事は、中国当局が記者の取材を拒否した産経新聞社の紙面上に掲載されていますので、なおさらもって謎が深まります。同事件は、中国による報道統制の強化を象徴しており、今日の中国の異常性を際立たせているからです。首相は、‘戻った’とも表現していますが、時間の経過によって、中国は過去よりも現在の方が遥かに危険な国家に変貌しております。

かつて、安倍首相は価値外交を提唱し、自由、民主主義、法の支配、基本的権利の尊重といった普遍的価値を掲げ、これらの諸価値を基準とした外交の展開を志向しておられました。しかしながら、今や、事実上の日本国の首相選出となる総裁選を目前として、日本国民の大半が危険視している中国政府との関係改善をアピールしています。おそらくこのアピールの対象は日本国民ではないのでしょうが、一体、日本国をどちらの方向に導こうとしているのでしょうか。

過去の二度の世界大戦が示すように、大国間の対立の激化は、一般的には陣営の形成を伴うものです。5Gにおける日中技術協力は中国陣営への参加疑惑を呼びましたが、日本国民の多くは、米中対立を前にして、現在アメリカと同盟関係にある日本国が、その同盟国を乗り換えて中国に与することなど望んでいません。朝鮮半島の両国は、既に中国陣営に組み込まれたとする指摘もありますが、安倍首相の発言の背後に中国等の諸国や国際組織、あるいは、国内の親中組織による積極的なロビー活動があったのでしょうか。仮に、何らかの工作活動、あるいは、内政干渉の結果としての発言であるならば、日本国は、既に、政経両面において混乱を極めた戦間期を髣髴させるような、いよいよ危ない局面にあるのかもしれません。ここで舵取りを誤りますと、日本国民にも、そして、全人類にも大参事が待ち受けているように思えるのです。

よろしければ、クリックをお願い申し上げます。

にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
コメント (2)