蕎麦喰らいの日記

蕎麦の食べ歩き、してます。ついでに、日本庭園なども見ます。風流なのが大好きです。

江戸平  浅草橋

2010-07-15 23:15:34 | 日本料理
もうすでに二十年以上前からお江戸の天麩羅は、うす衣のカリッと揚げて素材の水抜きを図る系統と、伝統的な天麩羅の様式で、ふっくらと軽く衣で種の生きを包み込む系統が共存してきたような感がある。


こちらのお店は後者の中でも比較的新しい昭和七年の創業。海老はあくまでも小ぶりの芝海老がスタンダードのようである。


ブロッコリーとは、なかなか斬新な試みだ。確かに、揚げたての中身から、ほこほこの香りが口の中にただよう。
その隣のキスも丁寧な仕事がしてあり、素晴らしかった。


左からピーマン、椎茸(非常に肉厚なものが選ばれ、香りが忘れられない)、紫蘇の葉で包んだ烏賊。烏賊はおそらく モンゴウイカだろう。率直に紫蘇の香りを引き立てる。


〆はかき揚げ。
種は海老、小柱、それに白魚である。白魚は思ったより成長していて、御主人にこの白身は何の魚ですか?とヤボを聞いてしまった。ふんわり揚がったかき揚げを半分塩で、半分は天露でいただいた。白魚ぐらい香りで分らなければと反省した。


文豪と言うべき谷崎潤一郎が贔屓にしたお店である。
店内に谷崎の色紙が飾られている。昭和16年というから、源氏物語の最初の現代語訳の直後で大変な達筆である。平安朝の貴族を思わせる小筆で「空を行く 電車の下に か々まりて 油にしみて くふうまさかな」とあるようだ。
その見事な平安朝風な筆跡と、江戸っ子気風あふれる歌はアンバランスなこと譬えようもないが、食というものはこのような状況でも見事に昔を思い出すものと、正直に感嘆の念を表さざるを得ない。