蕎麦喰らいの日記

蕎麦の食べ歩き、してます。ついでに、日本庭園なども見ます。風流なのが大好きです。

鈴庵  春日部市

2014-09-30 22:51:23 | 蕎麦
国道4号線の下り斜線は、休日の昼前には渋滞の巣窟になる。ほのかな蕎麦の香りを、のどかに味わおうという私の意図とはかけ離れた世界である。


しかし、一歩横道に入れば稲穂の実りが豊かな農地を抜ける、静かな田舎道になる。鈴庵さんは、そんな環境にあるお店である。


こちらも、北関東のお店によく見られるように、一茶案で修行されたご主人のお店のようだ。
見事な三色蕎麦を出す。


こちらでも、私が一番心引かれたのは田舎である。見事に整った姿ではあるが、それなりの力強さがある。
余計な甘みのない汁少量と、辛みおろしを合わせれば、なかなか得られない充実した味わいになる。


驚いたのは、更級もきっちり蕎麦の味を感じさせる点である。
これだけ味があれば、変わり蕎麦のベースとするには勿体ない気がする。


田舎に劣らない蕎麦の香り、味わいがあった。
このお店の蕎麦では、せいろが一番特徴的かもしれない。確かに、これで鴨せいろにしたら、蕎麦としての完成度は非常に高いものになりそうな気がする。


御馳走様でした。


石岡の街並  石岡市

2014-09-29 22:31:30 | 古民家、庭園
夕暮れ直前の時刻に石岡に辿り着いた。この町は、大正・昭和の看板建築が残る街として知られている。


この黄昏れた空気が良い味を出していると思う。看板建築ができれば、17世紀イタリアのロッジア風の様式もお手の物である。


二階の格子戸が見事な東京庵。お蕎麦屋さんである。
昭和初期の建物のようである。その当時、蕎麦屋の二階と言えば・・・
格子戸の意味が知れよう。


石岡を代表する看板建築に、蔵造りの店が並ぶ。
幸いな事にこの街の交通量は限られていて、休日の夕暮れ時でもそんなにあわだたしい思いをしなくても、建築物の全景を撮影できる。


丁字屋さんは昭和4年の大火以前から残る唯一の民家である。




通り庭から、見物客を無料で受け入れている。夕暮れ時でも、一声かければ町家造りの古民家の内部を見学できる。




一階の奥座敷。座敷の更に奥には別棟の蔵がある。別棟にするのは延焼を防ぐ為であろう。蔵の前は今は井戸があるだけだが、その昔は坪庭が設けられていたのではないかと推察する。
向かって左側には、通り庭が蔵まで通っている。




急な階段を上れば、二階には更に拡張高い座敷が控えていた。
これ程の規模の床の間を造るのは、何かいわくがありそうである。


蕎麦切り よし吉  上田市

2014-09-26 22:46:38 | 蕎麦
上田の町から青木村へ向かって直線的に伸びる国道143号線の北側に面して、よし吉さんができたのはいつ頃だったろう。おそらく十年以上前の事ではないかと思われるが、はっきりとした知識を持たない。


この古民家風の店構えに大分前から注目していたのは間違いない。店構えが少し小振りになった印象もあるかもしれないが、よく見ると向かって右側に少し低い屋根の一棟を建てましたために小振りに見えるようだ。


おしぼり蕎麦を注文した。今の時期、大根が結構辛いですが大丈夫ですかとすかさず問われた。
信州で一番辛いのは冬場の辛み大根だろうと考えていたので、構わないと答えた。
確かに辛めのおろしではあるが、蕎麦の味を損なうものではない。




蕎麦の味が濃く、強い。
おろしに負け、蕎麦の味が飛んでしまうようなやわな造りではなかった。
蕎麦自体が活き活きとしている。茹で起きのような蕎麦では全く実現できない蕎麦の鮮度である。これ程のレベルの蕎麦を出すお店に、もっと早く入らなかった事を後悔した。


それもその筈、自家栽培、自家製粉のお店であった。
自家栽培の蕎麦粉へブレンドする量は、最小限に止められているのだろう。


御馳走様でした。

大宝寺三重塔  長野県青木村

2014-09-25 21:37:18 | 神社仏閣
青木村は塩田平の西端に位置する。この辺りは信州の高原にしては気候が比較的温暖で、鎌倉時代からの仏教遺跡が数多く残されている。


この三重塔は14世紀前半には造営中であったという文献が残されているそうで、上田平を代表する文化財のひとつである。



三重塔は本堂の左手奥に少し離れて建てられている。
水平距離はたいしたこともないのだが、三重塔が建つ所まで登るのだけで一苦労。




屋根の反り、壁面の意匠、どれも極めて地味で真面目に見える。




この土地の人々は、おそらく非常に篤い信仰心をもっているのだろう。
木造の三重塔がよくその形を保っているのは、手厚い手入れがなされているからなのだと思う。




国宝に指定されている三重塔の数はそう多くはない。そのひとつを、静寂な空気の中でゆっくりと見る事が出来た。


たばちょ  高崎市

2014-09-24 23:38:59 | 蕎麦
高崎には城が築かれていて、今でも堀跡がある。


その堀のぎりぎり内側にある連雀町。名前にも格がある。夜となるとその昔を伝える倉がライトアップされる。


前の写真の倉から10メートルも離れていない所に新しく蕎麦屋さんが開店した。
天せいろを弔問したら、天婦羅には別皿で塩が付くし、なかなか真面目なお店である。高崎の中心地に位置するだけあり、夜には二次会的な扱いを受ける事もありそうだが、それでも一々真面目に対応していると察せられる。


空腹時には悪魔的な魅力のありそうな天婦羅。実際、量は十分。
こういう、ぼりっとした天婦羅を出すなら、天婦羅の下に敷く和紙はおおらかに出して、油を最大限吸いきってもらえると嬉しい。


蕎麦は、ゆっくりと楽しめる。確かに、水切り後の数秒の勝負に気合いを入れるのも蕎麦の食べ方として素晴らしいが、そればかりでも疲れてしまう。あえて、ゆっくりも蕎麦の食べ方としてありだと思う。


御馳走様でした。

いけや  伊香保温泉

2014-09-21 21:46:51 | 蕎麦
その昔はいざ知らず、今日の伊香保は急坂の地形に旅館が建ち並んでいる印象がある。
坂道もアスファルト、旅館もコンクリートでいささか殺風景な姿と感じた。




そうのような町の中でも、裏通りを探せば、このような人間的なスケールの居心地の良さが一目で感じられるお店も存在する。


こちらのご主人は、塗り職人としても名のある方だそうだ。確かに、蕎麦が出てくる前のお盆の姿が美しい。


三色蕎麦を注文した。
こちらの蕎麦も、足利の一茶案との距離の近さを感じさせる端正な姿であった。


それでも、せいろ蕎麦には、このお店独特な路線を感じさせるしっかりとした主張があった。
なによりも、大型の観光バスがひっきりなしに急坂を発進したり、停車したりしているざわついた温泉街で、ゆっくりと蕎麦を楽しめる環境がありがたかった。


御馳走様でした。



旧佐藤家住宅  魚沼郡大倉

2014-09-19 22:10:11 | 古民家、庭園
旧佐藤家は国の重要文化財である。


重要文化財に指定された直後の昭和54年の解体修理工事で、18世紀前半の建築物である事が分かった。




建築様式としては、奥の本屋に手前の中門(兜造の屋根を載せる)を取り付けたものである。


中門の中の馬屋。冬場の積雪が3メートル近くになり、冬場は屋敷の内に馬を飼う方が合理的であったようだ。これは、形式にこだわった豪農ではやりにくかった事だろう。


流しは座り流し。今でも家の北側の森から、澄んだ水が引かれている。


ちゃの間には、昔使われていた道具が多数展示されている。


茅葺き屋根の館は、自然の息吹のなかに立っている事が実感される。これ程に自然が豊かだと、囲炉裏に一年中火を入れて虫害を避ける必要がありそうだ。

草庵  前橋市荻窪町

2014-09-17 21:54:36 | 蕎麦
住所は前橋市だが、前橋の中心街からは10キロ近く離れた、江木の駅前にあるお店である。




お店の造りはなかなか立派で、事前に電話を入れれば座敷を用意してくれそうな格である。


使われている焼き物や、塗りの器もなかなかのもので、蕎麦が出て来る前なのに、気持ちをぐっとリフレッシュさせてくれる。




まずは三昧そばを注文した。最初に更級が出て来た。
そばの透明感が高く、いかにも更級を大事にするお店らしい。




続いてせいろ。よく、整っているが、それが蕎麦の味を消していない。荒々しくなくとも蕎麦の香り、味はちゃんと感じる事が出来る。


締めは変わりそば。紫蘇切りとお見受けした。
この日の一番の売りだったのかもしれない。足利の一茶案から30キロと離れていない距離を感じさせるそばであった。
変わりそばの、生地に季節を練り込むテクニックは、和菓子の技に近いものを感じた。


御馳走様でした。

冨沢家住宅  群馬県中之条町

2014-09-16 23:51:14 | 古民家、庭園
群馬県中之条町から、国道17号線沿いの湯宿温泉までを結ぶ県道53号線は、今では随分山深い街道ではあるが一部の対面交通が困難な場所での判断を間違わなければ、心地よいドライブを楽しめるルートである。


そのルートの真中辺り、標高700メートルを越す大道地区に、随分規模の大きい冨沢家が突然現れる。もちろん、県道53号線に面している訳ではなく、看板が突然に出て来る感じである。そこから、細道を少しばかり上がれば冨沢家である。




元々は、もう少し厳めしい形の兜作りであったのではないかと想像するが、近世に入ってから家の二階部分にも十分な日照を求めて、家の様子が大分変化したのではないかと想像する。


ここは群馬県北部の高原、冬場には道に降った雪がガチガチに凍り付くであろう土地である。
いかに、家の南面であろうと障子ひとつでは冬の寒さは堪え難いであろう。
採光を重視した現在の家の形は、室内に手焙りなどの暖房器具が導入されたから成立したのでは、と思いたくなる。






以前に訪れた時は、この屋敷の内部に入るのが許されるのか曖昧で、室内の様子は屋外から望遠で撮影した記憶がある。今回訪れたところ、館に隣接して立派な駐車場が整備され、入館料を取る分、館の内部もしっかりと見て回る事が出来た。
個人的には、見学料がきっちり決まっている古民家の方が、気が楽で好みである。



山せみ  神楽坂

2014-09-12 22:13:24 | 蕎麦
この所の出店が続き、飯田橋駅西口から神楽坂を上り大久保通りにぶつかるまでの間に、それぞれ個性的な蕎麦屋さんが7-8軒ほどになった。
その中でも、羽賀さんという打ち手が蕎麦を大事に調理する「山せみ」さんは、コストパーフォーマンスの点でも、また行列が長くなりすぎない点でも、気楽に行って楽しめるお店になったと思う。


まずは天婦羅を蕎麦前に合わせる。こちらの天婦羅は、数人でつつく盛り合わせと、一人客にちょうどいい量のものの、2種類があるので使い分けに注意が必要。なにしろ、鮮魚まで扱う蕎麦屋さんで天婦羅の油は実に軽くて問題無し。最近の流行だと思うが、凝った塩が付いてくるのも嬉しい。実に上々のスタートを切った。




続いては「せいろ」ではなく、色黒の「田舎」を注文した。
これがまた、しっかりした歯ごたえのある蕎麦で、噛み締めると素晴らしい。


こちらのお店、短い間に数回試したが、今回のパターンの応用系で注文するのが、私にはもっともしっくりくるように思われた。
御馳走様でした。