もりそばのような脂抜きの食事が続いたり、心地よい程度の肉体的疲労(だいたい、軽い運動程度)の後に、猛烈にカツカレーが食べたくなることがある。しかし、こちらはそれなりの年齢に達していて、カツの揚げ切りが悪かったり、それ以前に揚げ油が疲れていたりすると、揚げものの匂いを嗅いだ程度でお店から逃げ帰りたくなってしまう、厄介な食べ物だ。
シャレーさんは1980年代からのお店のように思っているが、私の記憶違いかもしれない。ともかく仕事が昔から丁寧で、4組以上お客が入っている場合、空腹感が強いならまず他を当たった方がよい感じである。それは、本当に昔も今も変わらない。あくまでも、お店のペースできちんとした仕事をしたお皿を順番に出してくる。ちょっとファミリー向けな感じもするお店の佇まいであるが、なぜか記憶に残るお店である。
この日は、お店がかなり混み合っていても不思議は無いような日だったのだが、たまたま先客は一組だけだった。その先客はスープから始めて、髭がピンと跳ねた海老フライなどをとても満足そうに平らげていった。私よりは大分人生の先輩に当たる方と推察したが、スープにサラダ、メインのフライにデザートまできっちり召し上がるのがお好みのようで、爽快感まで覚える食べっぷりだった。
それが私の中の何かを触発したようだ。注文は迷わずヒレカツ カレー。ヒレを使う所がありがたい。
ヒレカツは厚すぎなくて、カレーをかけた味がよくご飯にまで通じる。揚げ油は、とても上質。新鮮なラードをサラダ油に混ぜたような感覚だろうか。
カツの表面ににじむ脂の香りが、積極的に食欲を刺激する。決して、お腹を重くしたりはしない。
こういうカレーを食べるには、まず基本はスプーンだけで口に運びたい。それには、ご飯の上でカリッと揚がったヒレカツを調度よい大きさに切り分ける作業が必要だ。
お店のナイフとフォークで、実にやさしく切れ分けられる。そこへ、いよいよカレーをすくって丁寧にかけてやる。ご飯と、カツと、カレーが一さじに載って調度いい量をめざす。こういう場面でも、バランス感覚は重要なのだ。
その結果として、カレーの風味が高く、カツのころもがスプーンの中でもカリカリし、それをささえるご飯をかみしめられる一口が実現する。
シャレーさんは軽井沢バイパスに面していて、白の壁面とあえて重い色に塗装しない木製の建具が目印のお店である。