ー美し過ぎる母ーSAVAGE GRACE
2007年 スペイン/フランス/アメリカ
トム・ケイリン監督
ジュリアン・ムーア(バーバラ・ベークランド)スティーヴン・ディレイン(ブルックス・ベークランド)エディ・レッドメイン(アントニー・ベークランド)エレナ・アナヤ(ブランカ)ウナクス・ウガルデ(ブラック・ジェイク)ベレン・ルエダ(ピラール・デュラン)ヒュー・ダンシー(サム・グリーン)
【解説】
実際に起こった息子による母親殺害事件を映画化し、カンヌ国際映画祭などで話題となった衝撃作。監督は『恍惚』で禁断の愛と狂気の行方を描いたトム・ケイリン。持ち前の美ぼうで大富豪夫人となるものの、息子によって殺害されるという主人公バーバラを『エデンより彼方に』のジュリアン・ムーアが演じる。息子役は『グッド・シェパード』のエディ・レッドメイン。官能的なタッチとショッキングな結末、さらには役者たちの熱演に注目だ。(シネマトゥデイ)
【あらすじ】
貧しい家庭で育ちながらも、持ち前の美ぼうで大富豪ブルックス・ベークランド(スティーヴン・ディレイン)と結婚したバーバラ(ジュリアン・ムーア)。息子アントニー(エディ・レッドメイン)にも恵まれ、幸せの絶頂にいたバーバラだったが、ブルックスが若い女に走り、裏切られたバーバラはアントニーに偏った愛情を示しはじめる。(シネマトゥデイ)
【感想】
この物語が実話だということを予告編で知り、興味を持ちました。
公開当時、劇場鑑賞する予定だったのに、世間の評判があまりに悪いので止めた経緯があります。
でも、思ったよりドロドロではなかった。
このようにしか生きれなかった母と息子、むしろ哀れを感じました。
「ベークライトーフェノール樹脂(フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ベークライト、石炭酸樹脂)は、フェノールとホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂の一つで、世界で初めて植物以外の原料より、人工的に合成されたプラスチックである。硬化させた樹脂は、3次元的な網目構造を持つ。電気的、機械的特性が良好で、合成樹脂の中でも特に耐熱性、難燃性に優れるという特徴を持つ。耐油、耐薬品性も高いが、アルカリに弱い。また、これらの性能の割に、比較的安価である。
レオ・ベークランド(Leo Hendrik Baekeland, 1863年11月14日 ? 1944年2月23日)はベルギー生まれのアメリカ合衆国の化学者、発明家。合成樹脂「ベークライト」を発明、工業化に成功し、「プラスチックの父」とよばれる。ベークライトは製造の過程で爆発の危険があるなどしたため、その後、改良されたプラスチックが普及し、1960年代には姿を消すことになった。」(以上ウィキペディアより)
このレオの4代目が、主人公のアントニー・ベークランド(スティーヴン・ディレイン)。
彼の美し過ぎる母がバーバラ(ジュリアン・ムーア)。
アントニーの愛称がトニー。
赤ちゃんをあやすように母は「トニー」と呼び続けています。
結論から言えば、この悲劇、父親不在の家庭が原因。
核家族、富裕層独特の希薄な人間関係などなど他にも原因はあるのでしょうが。
でも、日本でも親殺しが増えている今日、他人事みたいには見れませんでした。
現代的な家族問題を内包している感じがしました。
このお父さん、ほんと、ひどいです。
自分の趣味の生活を大切にして、教養のない美貌だけの妻に飽きてしまっていることはまだしも、息子にも興味がなく、息子のガールフレンドを愛人にしてしまうなんて、そりゃ、息子も歪んでしまうというものです。
しかし、彼にも父や偉大な祖父に対してのコンプレックスがあるようでした。
傷つき残された母と息子。
母に知性と教養があれば、また違った展開もあったのでしょう。
また、息子がこんなに感性の鋭い純粋な青年ではなく、無神経なぼんくらなら、この悲劇を免れたのかもしれません。
すべての条件が揃って、悲劇は起こってしまうのです。
アントニーが父へ宛てた手紙を、父の玄関に隠している様子は哀れなものでした。
それを見ていながら声もかけない冷たい父親。
愛せない妻の生んだ子は、血を分けた息子といえどもかわいくないのでしょうか?
自分が父親に愛されたことがないから、愛せないのかもしれませんね。
父の名声や経済力に依存して、自分の人生を歩めない母。
母と息子は一心同体の様に、堕ちていくというわけです。
「母は、息子を使って自殺したのではないか?」と監督は語っています。
鬱病だったようなので、その可能性も否定できません。
アントニーは、心神耗弱を理由に数年で刑務所を出て、母方の祖母に引き取られますが、その祖母も1週間とたたないうちに刺して重傷を負わせ、あげくに自殺しているそうです。
親殺しのニュースを聞いて、いつも思うのですが、結局、親を殺しているようで、自分を殺しているんですよね。
自分と親の区別がついていないというかー。
思春期の子供にとって、親は経済的にも生活面でもなくてはならないもの、自分の命を守る存在です。
それくらい、子供にだって解っているはず。
その親を殺してしまうということは、自分の生きる道を閉ざすのと同じです。
人間関係の難しさを、ひしひしと感じます。
できるだけ、親子が1対1で対峙しないで、逃げ道をたくさん作っておいてほしいと思う。
愛し合っていることは、解りきっていることなんだから、求めすぎることなく、与えすぎることなく、そのしんどい時代さえうまくやり過ごしたら、また、いい関係も見えて来るのに、と思う。
少子化と核家族化が進んでいるいまだからこそ、家族以外の人とたくさんつながって、めんどくさくても、だるく感じても、社会的なつながりを広げていくことが、セイフティネットを広げることになるんだと切実に思います。
2007年 スペイン/フランス/アメリカ
トム・ケイリン監督
ジュリアン・ムーア(バーバラ・ベークランド)スティーヴン・ディレイン(ブルックス・ベークランド)エディ・レッドメイン(アントニー・ベークランド)エレナ・アナヤ(ブランカ)ウナクス・ウガルデ(ブラック・ジェイク)ベレン・ルエダ(ピラール・デュラン)ヒュー・ダンシー(サム・グリーン)
【解説】
実際に起こった息子による母親殺害事件を映画化し、カンヌ国際映画祭などで話題となった衝撃作。監督は『恍惚』で禁断の愛と狂気の行方を描いたトム・ケイリン。持ち前の美ぼうで大富豪夫人となるものの、息子によって殺害されるという主人公バーバラを『エデンより彼方に』のジュリアン・ムーアが演じる。息子役は『グッド・シェパード』のエディ・レッドメイン。官能的なタッチとショッキングな結末、さらには役者たちの熱演に注目だ。(シネマトゥデイ)
【あらすじ】
貧しい家庭で育ちながらも、持ち前の美ぼうで大富豪ブルックス・ベークランド(スティーヴン・ディレイン)と結婚したバーバラ(ジュリアン・ムーア)。息子アントニー(エディ・レッドメイン)にも恵まれ、幸せの絶頂にいたバーバラだったが、ブルックスが若い女に走り、裏切られたバーバラはアントニーに偏った愛情を示しはじめる。(シネマトゥデイ)
【感想】
この物語が実話だということを予告編で知り、興味を持ちました。
公開当時、劇場鑑賞する予定だったのに、世間の評判があまりに悪いので止めた経緯があります。
でも、思ったよりドロドロではなかった。
このようにしか生きれなかった母と息子、むしろ哀れを感じました。
「ベークライトーフェノール樹脂(フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ベークライト、石炭酸樹脂)は、フェノールとホルムアルデヒドを原料とした熱硬化性樹脂の一つで、世界で初めて植物以外の原料より、人工的に合成されたプラスチックである。硬化させた樹脂は、3次元的な網目構造を持つ。電気的、機械的特性が良好で、合成樹脂の中でも特に耐熱性、難燃性に優れるという特徴を持つ。耐油、耐薬品性も高いが、アルカリに弱い。また、これらの性能の割に、比較的安価である。
レオ・ベークランド(Leo Hendrik Baekeland, 1863年11月14日 ? 1944年2月23日)はベルギー生まれのアメリカ合衆国の化学者、発明家。合成樹脂「ベークライト」を発明、工業化に成功し、「プラスチックの父」とよばれる。ベークライトは製造の過程で爆発の危険があるなどしたため、その後、改良されたプラスチックが普及し、1960年代には姿を消すことになった。」(以上ウィキペディアより)
このレオの4代目が、主人公のアントニー・ベークランド(スティーヴン・ディレイン)。
彼の美し過ぎる母がバーバラ(ジュリアン・ムーア)。
アントニーの愛称がトニー。
赤ちゃんをあやすように母は「トニー」と呼び続けています。
結論から言えば、この悲劇、父親不在の家庭が原因。
核家族、富裕層独特の希薄な人間関係などなど他にも原因はあるのでしょうが。
でも、日本でも親殺しが増えている今日、他人事みたいには見れませんでした。
現代的な家族問題を内包している感じがしました。
このお父さん、ほんと、ひどいです。
自分の趣味の生活を大切にして、教養のない美貌だけの妻に飽きてしまっていることはまだしも、息子にも興味がなく、息子のガールフレンドを愛人にしてしまうなんて、そりゃ、息子も歪んでしまうというものです。
しかし、彼にも父や偉大な祖父に対してのコンプレックスがあるようでした。
傷つき残された母と息子。
母に知性と教養があれば、また違った展開もあったのでしょう。
また、息子がこんなに感性の鋭い純粋な青年ではなく、無神経なぼんくらなら、この悲劇を免れたのかもしれません。
すべての条件が揃って、悲劇は起こってしまうのです。
アントニーが父へ宛てた手紙を、父の玄関に隠している様子は哀れなものでした。
それを見ていながら声もかけない冷たい父親。
愛せない妻の生んだ子は、血を分けた息子といえどもかわいくないのでしょうか?
自分が父親に愛されたことがないから、愛せないのかもしれませんね。
父の名声や経済力に依存して、自分の人生を歩めない母。
母と息子は一心同体の様に、堕ちていくというわけです。
「母は、息子を使って自殺したのではないか?」と監督は語っています。
鬱病だったようなので、その可能性も否定できません。
アントニーは、心神耗弱を理由に数年で刑務所を出て、母方の祖母に引き取られますが、その祖母も1週間とたたないうちに刺して重傷を負わせ、あげくに自殺しているそうです。
親殺しのニュースを聞いて、いつも思うのですが、結局、親を殺しているようで、自分を殺しているんですよね。
自分と親の区別がついていないというかー。
思春期の子供にとって、親は経済的にも生活面でもなくてはならないもの、自分の命を守る存在です。
それくらい、子供にだって解っているはず。
その親を殺してしまうということは、自分の生きる道を閉ざすのと同じです。
人間関係の難しさを、ひしひしと感じます。
できるだけ、親子が1対1で対峙しないで、逃げ道をたくさん作っておいてほしいと思う。
愛し合っていることは、解りきっていることなんだから、求めすぎることなく、与えすぎることなく、そのしんどい時代さえうまくやり過ごしたら、また、いい関係も見えて来るのに、と思う。
少子化と核家族化が進んでいるいまだからこそ、家族以外の人とたくさんつながって、めんどくさくても、だるく感じても、社会的なつながりを広げていくことが、セイフティネットを広げることになるんだと切実に思います。