“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「デジタルの皇帝たち」(ヴィリ・レードンヴィルタ著/みすず書房)

2024-08-29 10:16:53 |    情報工学



<新刊情報>



書名:デジタルの皇帝たち~プラットフォームが国家を超えるとき~

著者:ヴィリ・レードンヴィルタ

訳者:濱浦奈緒子

発行:みすず書房

 テクノロジーと自由を誰よりも愛したサイバーリバタリアンのジョン・バーロウ、人々の信頼を裏切る中央当局を排除するために仮想通貨Bitcoinを世に放ったサトシ・ナカモト、完全な自由市場のはずが「ソ連2.0」へ傾くUberの創設者トラビス・カラニックとギャレット・キャンプ、宇宙にまで手をのばすAmazonの皇帝ジェフ・ベゾス……。これらデジタルプラットフォーム君主たちの野望や、栄光と蹉跌の経済学的メカニズム、そして彼らに抗った人々を、生い立ち・思想・行動の面から、ストーリーとデータで描く。デジタルテクノロジーを駆使する彼らが直面する、中世ヨーロッパやソ連の人々と共通の課題とは?自由のためのプロジェクトが不自由をもたらすのはなぜか、君主への反乱の成否は何が決めるのか、デジタル帝国が強大な力を握ることの問題はなにか・・・。サイバーリバタリアンの理想が生んだ「雲の上の帝国」と、地上の国家の比較から、私たちがコントロールを取り戻す道筋を引きだす希望の書。プラットフォームも、国家も、重要なのは「制度」だ!
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「会社や社員が犯罪に巻き込まれたときどうする?」(海老谷成臣、林 秀人著/技術評論社)

2024-08-29 10:16:24 |    企業経営



<新刊情報>



書名:会社や社員が犯罪に巻き込まれたときどうする?~小さな事件からITセキュリティまで警察への依頼の仕方~

著者:海老谷成臣、林 秀人 

発行:技術評論社

 会社内で問題が起きたとき、警察に依頼すべきかどうか、現場担当者にとってそれは非常に悩ましいもの。同書は、元警察官がそうした悩みに応えるべく書き下ろされたもの。社員による窃盗、もしくは暴力団などの反社会勢力との対決といった問題から、最近のトレンドであるインターネットセキュリティに関わる問題まで、企業はさまざまな問題に耐えねばなりらない。時流の変化は残酷で過去にうまくいった対処方法も、すぐに陳腐化してしまう。また、新しい技術を使った犯罪は対応しきれるものではない。その中で最も有用で費用もかからない対処方法は問題が起きたら「警察」にお願いすること。企業活動は人間の行動結果の写し鏡。警察にはそうした問題に対応するノウハウが叩き込まれている。同書は、具体的な事例をもとに、どのように警察に依頼すれば効果的なのか、元警察官が自身の経験で得られたさまざまな対処方法からベストなアドバイスを提示する。企業経営における、いろいろな悩みをすっきり解決しよう。
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●科学技術ニュース●理研と北海道大学、冬眠の仕組みの一端を数理モデルで解明

2024-08-29 10:15:50 |    生物・医学
 理化学研究所(理研)数理創造プログラムの儀保 伸吾 特別研究員、黒澤 元 専任研究員、北海道大学 低温科学研究所の山口 良文 教授らの国際共同研究グループは、冬眠を行う哺乳類に見られる大きな体温変動の背後に、信号の周波数を変化させて伝えるFMラジオのように周波数(体温の周期変動)を変化させる仕組みが存在することを発見した。

 哺乳類の中には、食料が限られ気温低下に見舞われる冬を生き延びるために、冬眠を行う種がいる。冬眠中の体温は、環境温度近くまで低下するが、この低温状態が冬眠中ずっと継続するわけではなく、環境温度に近い低温と通常の体温の間を何度も変動する。この大きな体温変動は冬眠の重要な部分だが、その生理学的な意味や制御のメカニズムは十分に理解されていない。

 同国際共同研究グループは、長期かつ高解像度の体温データセットに対応する数理モデルを探索することによって、冬眠中の大きな体温変動が短い周期(数日)と予想外に長い周期(数百日)の相互作用によって支配されており、そうした周期の変動(周波数)が徐々に変化していくこと(周波数変調)を発見した。

 この結論はシリアンハムスターとジュウサンセンジリスという異なる2種類の冬眠動物について導かれた。

 これは複数の冬眠動物において、冬眠中の大きな体温変動の背後に「周波数変調」というシンプルで共通の原理が存在することを初めて示した成果。

 同国際共同研究グループは、動物が冬眠するときの体温変化を詳しく調べモデルを用いて検証する手法を確立した。

 この研究は、今後いろいろな動物がどうやって冬眠するのかを比べたり、冬眠の仕組みに迫ったりする上での手掛かりになる。

 具体的には、体の中の遺伝子やタンパク質が変化した個体を冬眠させた際に、今回の研究で見いだした数理モデルに含まれる細かな設定(短い周期や長い周期など)の値がどのように変化するかを調べることが可能になる。これにより、冬眠の仕組みに関わる遺伝子やタンパク質の発見や、それらの働きの理解が進むことが期待できる。

 今回の研究は、冬眠の際に大幅な体温変動を伴うシリアンハムスターとジュウサンセンジリスで行われた。大型のヒグマやツキノワグマなど、他にも冬眠する動物がたくさんいる。これらの動物の冬眠の際の体温変動パターンを調べる上でも、今回用いたアプローチが有用かどうかの検証も興味深い課題。

 今後さらに研究を進めることで、冬眠中に体の中でどんなことが起こっているのか、また、どうやって冬眠するように進化したのかが解明されることが期待される。<理化学研究所(理研)>
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●科学技術ニュース●アストロスケール、JAXAの商業デブリ除去実証フェーズIIの契約を獲得

2024-08-29 10:15:07 |    宇宙・地球
 持続可能な宇宙環境を目指し、スペースデブリ(宇宙ごみ、以下、デブリ)除去を含む軌道上サービスに取り組むアストロスケールホールディングスの子会社で人工衛星システムの製造・開発・運用を担うアストロスケールはこの度、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との間で、大型デブリ除去等の技術実証を目指し実施する商業デブリ除去実証(CRD2:Commercial Removal of Debris Demonstration)のフェーズIIの契約を締結した。契約額は約130億円。

 CRD2は、JAXAの進めるデブリ除去プログラムを起点に新しい宇宙事業を開拓し、日本企業が新たな市場を獲得することを目指したプロジェクトであり、軌道上にある日本由来のロケット上段を対象に、二つのフェーズで大型デブリへの近傍接近と除去の実証を目指すもの。

 ロケット上段は長期間軌道上に存在していたため、現在の状態が分かる情報が少なく、かつ非協力物体である。

 フェーズⅠでは、このデブリへの接近、近傍制御を行い、デブリの運動や損傷・劣化が分かる画像データを取得した。

 アストロスケールは、2020年1月にCRD2のフェーズIの契約相手方として選定され、商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(アドラスジェイ、Active Debris Removal by Astroscale-Japan)」を開発、2024年2月よりミッションを実施している。

 フェーズIIでは、フェーズⅠと同様にデブリへ接近、近傍制御し、さらなる画像データを取得するとともに、デブリ除去として、その捕獲や軌道離脱も行う。

 今後、捕獲機構であるロボットアームを含め、フェーズIIで運用するADRAS-J2(Active Debris Removal by Astroscale-Japan2)の開発を進める。

 フェーズIIにおいては、アストロスケールが現在運用中のADRAS-Jミッションの知見が幅広く活かされる。

 ADRAS-Jは実際のデブリに対して安全な接近を行い、近距離でデブリの状況を調査する世界初の試み。

 具体的には、大型デブリ(日本のロケット上段:全長約11m、直径約4m、重量約3トン)への接近・近傍運用を実証し、デブリの運動や損傷・劣化状況の撮像を行っている。2024年2月22日にデブリへの接近を開始して以降、遠距離からの接近や、定点観測、周回観測などに成功している。<アストロスケール>
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