“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「AI時代のベンチャーガバナンス」(馬渕邦美、丸山侑佑著/日経BP)

2024-08-28 09:44:12 |    企業経営



<新刊情報>



書名:AI時代のベンチャーガバナンス

著者:馬渕邦美、丸山侑佑

発行:日経BP

 ビッグモーターや旧ジャニーズ事務所など、近年世間を騒がせた企業不祥事は、突き詰めればガバナンス(企業統治)の問題とされている。また、一連の問題にはある共通点がある。それは、上場していない企業が多いということ。そうした企業に対するコーポレート・ガバナンスの社会的要請は弱く、それが不祥事の背景にあると考えられる。しかし、未上場のベンチャー企業であっても、不祥事を起こせば会社は成り立たない。昨今の企業不祥事のニュースを目の当たりにして、経営者は自社のコーポレート・ガバナンスについて考え直していることであろう。その際、「ベンチャーに特化したコーポレート・ガバナンスについて知りたい」となれば、同書がお薦め。同書は、未上場企業のコーポレート・ガバナンスについて、国が求める原則、参考になる事例、筆者自身の経験に基づく経営者の考え方など、あなたの「知りたい」が詰まっている。
特筆すべきは、「AI(人工知能)」など先端技術による影響に踏み込んでいること。AIを事業や業務に使うことは増えているが、AIなどを使うと新たな問題が引き起こされる可能性がある。それを経営者は「知らなった」では済まされない時代である。AIはコーポレート・ガバナンスにとって新たなリスクなのである。一方で、AIを使ってコーポレート・ガバナンスを構築する動きもある。不正が行われていないかを調べることに使うほか、取締役会の一員にAIを加える動きも海外では進んでいる。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「改訂新版 前処理大全」(本橋智光、橋本秀太郎著/技術評論社)

2024-08-28 09:43:42 |    情報工学



<新刊情報>



書名:改訂新版 前処理大全〜SQL/pandas/Polars実践テクニック~

著者:本橋智光、橋本秀太郎

発行:技術評論社

 BigQuery、Pandas、Polarsを使った実用的なモダン前処理を学ぼう。データ分析において前処理が重要かつ多くの時間をとられる業務であることは広く知られてきた。同時に前処理を実現するためのライブラリは大きく改善されてきている。また、機械学習モデルの進化によって、求められる前処理の内容も変わってきている。同書は、初めて学ぶ方にも、昔学んでから知識をアップデートしていない方にも、悪いサンプルコードと良いサンプルコードを紹介しながら丁寧にデータ分析の前処理を学べる技術書。同書は,第一版の前処理大全から大きく構成や内容を変更している。SQLはBigQuery準拠に変更し、Pandasは最新バージョンの思想に沿い新機能を使ったコードに変更した。Rの代わりにR同様にパイプラインで書きやすく、かつ処理エンジンがRustベースで書かれているため高速なPolarsに変更した。また、前処理内容も大きく変更し、より現在よく使われる処理を実用ケースとともに解説している。また、新たな試みとしてコラムとして少しマニアックだけど役立つプログラムの裏側の解説や分析テクニックを紹介しており、中級者の方にとっても有用な知識を届ける。
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●科学技術ニュース●理研など、マウス体内の血液で触媒を作り抗がん活性分子を生体内合成し副作用を抑えたがん治療を行うことに成功

2024-08-28 09:43:09 |    生物・医学
 理化学研究所(理研)開拓研究本部 田中生体機能合成化学研究室の田中 克典 主任研究員(東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 教授)、六車 共平 基礎科学特別研究員(研究当時、現 同大学 科学技術創成研究院 助教)、今井 恭祐 研修生(同大学 物質理工学院 応用化学系 博士後期課程1年)、チャン・ツンチェ研究員(同大学 物質理工学院 応用化学系 特任助教(研究当時))らの研究チームは、マウスに遷移金属触媒や試薬を順に静脈投与することによって、(1)血液中のタンパク質(アルブミン)から遷移金属触媒複合体(人工金属酵素)を体内で作り、その触媒活性を利用して(2)がんに人工金属酵素を送り込むとともに、(3)抗がん活性分子を生体内合成し、副作用を抑えたがん治療を行うことに成功した。

 同研究成果は、金属触媒反応によって、マウスの静脈中に元々存在するタンパク質を原料として人工金属酵素を合成し、さらにその人工金属酵素による二度の金属触媒反応をがん治療に利用した世界初の例であり、生体内のタンパク質、さらには体内のあらゆる物質を原料とするがんの化学療法の開発に大きな貢献をもたらすと期待できる。

 今回の生体内での二度の金属触媒反応を巧みに利用する治療法は非常に革新的であり、この成果によって、田中主任研究員らの目指す、体内の現地で、体内の分子を有効に利用しながら薬剤や生物活性分子を直接合成して治療を行う「生体内合成化学治療」を用いた、「体内創薬化学研究所」の確立に大きく近づいた。

 がんの化学療法においては正常組織への副作用が長年の課題。その解決策の一つとして、遷移金属触媒を使ってがんのある場所でさまざまな抗がん活性物質を合成し、がんを治療する生体内合成化学治療が田中主任研究員らを中心に世界中で研究されている。しかし、これまでは反応容器内で合成・精製した人工金属酵素を体内に投与するのが一般的であった。

 今回、同研究チームは、遷移金属触媒とcRGD(環状アルギニンーグリシンーアスパラギン酸)ペプチドを静脈投与することで、血液中に存在するアルブミンから、人工金属酵素を作った。

 この人工金属酵素は、自らの金属触媒活性で表面に搭載したcRGDペプチドの効果によりがんに選択的に移行するとともに、がんでもう一度金属触媒活性を発揮して抗がん活性分子を合成し、副作用なくがんを治療することができた。

 同研究成果は、生体内での二度の金属触媒反応を巧みに利用することで、マウスの静脈中に存在するタンパク質を原料として人工金属酵素を合成し、がんの治療に応用した世界で初めての例。

 今回使用したルテニウム触媒だけでなく、多種多様な遷移金属触媒を含む人工金属酵素を血中で作り、そのまま体内でさまざまな治療分子を「現地」で合成して治療することが期待できる。

 この研究成果は、生体内のタンパク質を原料とするがんの革新的な生体内合成化学治療の開発、ひいては体内創薬化学研究所確立への大きな第一歩につながるもの。<理化学研究所(理研)>
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●科学技術ニュース●積水化学とTERRA、国内初、営農型ペロブスカイト太陽電池の共同実証実験開始

2024-08-28 09:42:51 |    電気・電子工学
 積水化学工業、TERRAの2社は、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に設置するための国内で初めての共同実証実験を、千葉県匝瑳市にて2024年8月2日より開始した。

 世界全体で気候変動が問題視され、2050年の脱炭素社会実現に向けてエネルギーの脱炭素化が求められるなか、フィルム型ペロブスカイト太陽電池は軽量で柔軟という特長により、従来のシリコン系太陽電池では設置が難しかった場所への設置が可能となり、再生可能エネルギー(再エネ)の導入量を拡大できる有力な選択肢として期待されている。

 積水化学は、独自技術である「封止、成膜、材料、プロセス技術」を活かし、フィルム型ペロブスカイト太陽電池開発の肝といわれる屋外耐久性において10年相当を確認し、30cm幅のロール・ツー・ロール製造プロセスを構築した。さらに、同製造プロセスによる発電効率15.0%のフィルム型ペロブスカイト太陽電池の製造に成功しており、さらなる耐久性や発電効率の向上、1m幅の製造技術の確立に向けて開発を加速させている。

 TERRAは、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に特化して自社発電事業・EPC・コンサルティング・部品開発を行う会社。グループ会社の市民エネルギーちばとも連動し、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の最先端企業として、Patagonia日本支社やサザビーリーグ、Jリーグとも協力、SDGsと2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを積極的に進めている。千葉県匝瑳市が採択された「脱炭素先行地域」(環境省)にも参画すると同時に、沖縄から北海道まで日本全国で様々な案件のプロデュースを手掛けている。とりわけ環境問題を総合的に捉え、農業経営の改善を大前提に考えたシステム提案に定評があり、「ソーラービール SORA ALE」などの6次化事業にも取り組んでいる。

 TERRAは、市民エネルギーちばが持つ、ペロブスカイト太陽電池を前提とした、断面がレンズ状のモジュールに関する特許についての占有権を有している。

 これまで蓄積してきた超細型の構造設計や係留方法などのノウハウを活かし、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を曲面レンズ型に配置することで、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に導入できると考え、同実証に取り組むことになった。

 今回、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の設置を行うことにより、レンズ型モジュールにおける曲面での発電効率や農作物の成長環境等、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)ならではの有用なデータ取得、検証を進める。<積水化学工業>
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