“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「数学思考のエッセンス」(オリヴァー・ジョンソン著/みすず書房)

2024-08-22 09:42:29 |    数学



<新刊情報>



書名:数学思考のエッセンス~実装するための12講~

著者:オリヴァー・ジョンソン

訳者:水谷淳

発行:みすず書房

 「週末のバーベキューが雨で台なしになる確率は?」「買い物のレジ待ちで早く進む列を見分けるには?」「パーティーを抜けるベストなタイミングは?」――こうした身近な問いをもとに、数式をほとんど使わずに、数学者や統計学者の考え方の勘どころを伝授する実用的数学入門。「構造」「ランダムさ」「情報」の3つのパートごとに解説する。著者は、コロナ危機時に正確な情報発信で話題となった英ブリストル大学数学科の情報理論教授。「3つのパートで採り上げる数学のツールキットを身につければ、世界の変化の根底にある構造的原理を理解し、その伝えられ方を支配するランダムさと不確かさを認識し、正しい情報と嘘の情報を区別できるようになるだろう。(略)10年後にどんなニュースが世間を席巻しているかを予測するのはほぼ不可能だが、このツールキットを身につければ、どんなニュースが来てもそれを合理的な形で分析して、シグナルとノイズを峻別する力を高めることができる」(「はじめに」より)
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「永久磁石同期モータ」(森本茂雄、真田雅之、井上征則著/コロナ社)

2024-08-22 09:42:12 |    電気・電子工学



<新刊情報>



書名:永久磁石同期モータ~PMSMの基礎から設計・制御・評価まで~

著者:森本茂雄、真田雅之、井上征則

発行:コロナ社

 永久磁石同期モータ(PMSM)の制御と設計の基礎から、具体的な制御システム・モータ設計手法・特性評価法までを解説。できるだけ多くの設計事例や実験結果を含め、理論だけではなく具体的なイメージを持てるように配慮した。
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●科学技術ニュース●理研など、天然物の生合成において鉄硫黄タンパク質がルイス酸触媒として機能し[4+2]環化付加反応を促進することを発見

2024-08-22 09:41:49 |    化学
 理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター 天然物生合成研究ユニットの高橋 俊二 ユニットリーダー、テイ・ウ 基礎科学特別研究員、坂井 克行 特別研究員、静岡県立大学 薬学部の滝田 良 教授(東京大学 大学院薬学系研究科 准教授(研究開始当時)、理研 環境資源科学研究センター 天然物生合成研究ユニット 客員研究員)、大阪大学 蛋白質研究所の栗栖 源嗣 教授、宮ノ入 洋平 准教授らの共同研究グループは、天然物の生合成において、鉄硫黄タンパク質(Fe-Sタンパク質)がルイス酸(Lewis acid)触媒として機能し、[4+2]環化付加反応(ディールス・アルダー反応)を促進することを発見した。
 
 同共同研究グループは、放線菌の二次代謝産物である「ヴァーティシラクタム(verticilactam:VTL)」の生合成において、水酸化反応を触媒するシトクロムP450(VtlG)と、[4+2]環化付加反応を触媒する酵素(VtlF)を同定した。

 さらに、生化学実験と理論計算を効果的に組み合わせることで、酵素分子内の鉄硫黄クラスターが[4+2]環化付加反応を効率的に促進することも明らかにした。

 同研究成果は、天然物生合成において、天然の酵素が、ルイス酸触媒を用いて[4+2]環化付加反応を行う最初の例になる。

 鉄硫黄クラスターを有し、電子伝達体として知られるタンパク質が、多様な[4+2]環化付加反応の設計のための有望な出発点となることが期待できる。

 同研究成果は、複雑な構造を持つ天然物の生合成経路において、[4+2]環化付加反応をルイス酸触媒として触媒する天然由来の酵素の最初の例になる。

 発見以来、電子伝達体として知られているFdが、今後は、多様な有機ルイス酸触媒の設計のための有望な出発点となると期待できる。

 同研究成果は、国際連合が定めた17項目の「持続可能な開発目標(SDGs)」のうち「3.すべての人に健康と福祉を」に大きく貢献するもの。<理化学研究所(理研)>
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●科学技術ニュース●徳洲会、大阪大学とリバーフィールド、低軌道衛星通信を活用した移動型遠隔手術システムの世界初の実証実験に成功

2024-08-22 09:37:20 |    ロボット工学
 徳洲会グループ、大阪大学大学院医学系研究科、リバーフィールドは、大阪府八尾市の八尾徳洲会総合病院において、低軌道衛星通信を用いた移動型遠隔手術システムの実証実験を世界で初めて実施した。

 衛星通信による遠隔手術は古くから理論的には可能とされてきたが、これまでは試作ロボットと高額な衛星通信システムを用いた実験レベルにとどまっていた。

 同実証は、薬事承認された手術支援ロボットと、安価で常用利用が可能な衛星通信サービスを活用し、世界で初めて「実用レベルで」遠隔ロボット手術の実現可能性を検証したもの。

 災害が多く、インフラの壊滅的被害により、地上通信網が使用不能となりえる我が国において、このような取り組みを世界に先駆けて実施できたことは大変意義深いと考えられる。

 日本の地方部では深刻な医師不足が続いており、高度な医療へのアクセスが困難な状況にある。

 遠隔手術システムは、この問題解決の「切り札」と期待され、研究開発が進められてきたが、通信インフラの整備にかかるコストや災害時のシステムの脆弱性が課題となっていた。

 近年、ロボット制御技術や低軌道衛星通信技術が急速な発展を見せており、低コストで強靭な遠隔医療システムが現実味を帯びつつある。

 同実証では、リバーフィールドが開発した手術支援ロボット「Saroa サージカルシステム」を以下のように配置し、実験を実施している。

 サージョンコンソール(操作側):八尾徳洲会総合病院の手術室内

 ペイシェントカート(患者側):屋外に配置したトラック内

 低軌道衛星通信には、米国スペースX社が運営する「スターリンク」のサービスを利用した。また、接続のフレキシビリティを確保するため、クラウド上に中継用VPNサーバーを設置している。

 実験には6名の外科医が参加し、通常のロボット手術構成と遠隔のロボット手術構成での比較を行った。

 臓器の弾力性を再現したトレーニング用モデルを用いて、縫合・結紮などの手技(傷口を縫い合わせたり、糸を結んで固定したりする作業のこと)を行った。

 なお、「Saroa サージカルシステム」は、2023年5月に日本国内にて薬事承認を取得したが、衛星通信や、その他通信を用いた地理的に離れた施設間での遠隔手術は、薬事承認範囲に含まれていないことより、同実証には、同実証専用機を用いた。

 実験に参加した医師6名全員から、遠隔のロボット手術構成においても、通常のロボット手術時と同様、縫合や結紮などの繊細な手技が可能であることが確認された。

 さらに、フルHD画質、4Mbpsの滑らかな映像伝送に成功した。また、中継用VPNサーバーにより、固定IPアドレスのない環境でも安定した接続性の確保が確認された。

 同システムは、へき地・離島と都市部の医療格差の是正、災害時の迅速な医療支援、さらには国境を越えた医療支援活動や、あらゆる地域の医師らのトレーニングに幅広く活用できる可能性がある。<リバーフィールド>
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