“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「仕事をつくる 私の履歴書<改訂新版>」(安藤忠雄著/日本経済新聞出版)

2022-09-20 09:44:18 |    科学技術全般



<新刊情報>



書名:仕事をつくる 私の履歴書<改訂新版>

著者:安藤忠雄

発行:日本経済新聞出版

 学歴も社会的基盤もない。仕事は自分でつくらなければならない。気力、集中力、目的意識、強い思いが、自らに課したハードルを越えさせる――。フランス、イタリア、ドイツ、アメリカなど欧米、そして中国、韓国、台湾などアジアでのビッグプロジェクトも注目を集める世界的な建築家が「明日を担う子どもたちが夢を見いだしてほしい」と、自ら建築費を負担して日本全国に図書館「本の森」をオープンさせている。80歳を迎え、ますます精力的に仕事をし続けるANDOを突き動かす、そのエネルギーの源泉はどこにあるのか。同書には、出世作「住吉の長屋」から2021年オープンのパリの現代美術館「ブルス・ドゥ・コメルス」までの代表作品がカラー写真で一同に並ぶ豪華なミニ写真集を挟み、目で見るANDOの軌跡にも読者は打ちのめされるだろう。
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●科学技術ニュース●富士通、世界最大容量の伝送を実現する光伝送技術を開発し伝送容量(Gbps)当たり世界最小の消費電力を実現

2022-09-20 09:42:41 |    通信工学
 富士通は、このたび、世界に先駆けて光1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送が可能なデジタルコヒーレント光伝送技術の開発に成功し、実際の光伝送装置として通信が可能なことを確認した。

 同技術を適用した光伝送装置を2023年度上期中に製品化し、グローバルに提供を開始する予定。

 同技術は最新の半導体プロセスを適用したデジタル信号処理LSI(DSP)の適用に加え、世界初の光伝送装置への水冷システムの導入や、機械学習を用いた光ネットワーク全体のリソースの最適化により、世界最高の光1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送を実現しながら消費電力を低減し、同社従来製品と比較してシステム全体のCO2排出量を70%削減。

 同社は、5Gおよび6Gテクノロジーから光バックボーンネットワークまで、レジリエントでヒューマンセントリックな未来のネットワークづくりを推進しており、同技術を適用した製品を広く市場に展開することで、通信事業者のカーボンニュートラル化を支援し、持続可能な社会の実現に貢献する。<富士通>
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●科学技術ニュース●大阪大学など、室温で異方性ホール効果を示す新物質の発見し世界で初めて2次元/1次元ハイブリッド超格子を実現

2022-09-20 09:41:18 |    化学
 大阪大学 産業科学研究所の林 永昌 招へい准教授、末永 和知 教授らの研究グループは、シンガポール南洋理工大学、北京大学などと国際共同研究を行い、全く新しいバナジウム系2次元(2D)/1次元(1D)ハイブリッド格子構造を合成することに成功した。

 特殊な走査型透過電子顕微鏡を用いてその特異なハイブリッド超格子構造を解明し、この新物質が380ケルビンの高温でも予想外の面内異方性ホール効果を示すことを明らかにした。

 従来の超格子は、半導体超格子に代表されるように、同次元の物質同士で形成されており、2次元物質(膜状)と1次元物質(鎖状)を組み合わせた周期的な積層構造を持つ異次元ハイブリッド超格子は実現されていなかった。

 シンガポール南洋理工大のZheng Liu 教授とJiadong Zhou 教授らの研究グループは、化学気相成長法により2次元VS2薄膜と、その3倍の格子周期を持つ1次元VS鎖配列が積み重なった超格子を合成した。

 末永教授らの研究グループは、独自に開発した走査型透過電子顕微鏡を用いて、この新規ハイブリッド超格子の原子構造解析と電子状態分析を行った。ホール効果の測定は、北京大学 Xiaosong Wu 教授の研究グループが行った。<科学技術振興機構(JST)>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「量子の不可解な偶然」(ニコラ ジザン著/共立出版)

2022-09-20 09:40:41 |    物理



<新刊情報>



書名:量子の不可解な偶然~非局所性の本質と量子情報科学への応用~

著者:ニコラ ジザン

訳者:木村 元、筒井 泉

発行:共立出版

 量子論は驚くほど整合的で美しい! 量子コンピュータや量子暗号、量子テレポーテーションといった近未来の科学技術は「量子もつれ」と呼ばれる量子の世界の性質に基づいている。量子もつれは、これまで我々が抱いていた常識的な世界観では理解できない、空間を跳び越えて働く不思議な性質(非局所性)を備えている。それゆえ、かのアインシュタインも生涯その正当性に疑いを持ち続けることになったが、現在では量子もつれの存在は量子技術の進展とともに実験的に確証され、新しい情報科学として応用されつつある。著者のジザンは量子物理学の世界的研究者の一人であり、量子の非局所性の基礎研究から量子情報技術の応用まで広い分野での顕著な業績で知られる。その彼が、量子もつれの本質から量子情報科学への応用に至るまでを数式に頼らず、直感的かつ正確に解説したのが同書である。特に量子もつれの不思議さの徹底した分析を通じて、「遠隔地に現れる偶然性」の考えのもとで量子の非局所性を理解する新しい自然観が提示される。現代は科学史上、ニュートンの時代に次いで最大の科学革命の時代だと言われる。それは主として量子物理学の革新によるものであり、とりわけ量子もつれのもたらす非局所性がその根幹を成す。読者は同書を読み進めることにより、新時代の科学革命の内容を新たな常識として身につけることができるだろう。
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