はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

柿の小さな実

2010-06-05 16:07:54 | はがき随筆


 ポト、ポトッ、パラ、パラッ。柿の小さな実が今朝も落ちてきた。サアーッ、サアーッと、いやというほど掃いた。
 今年も庭の柿に、小さな実がびっしりついた。4枚の蒂の真ん中に可愛い黄緑の小さな実
をつけている。夜来の風雨で、底一面に落ちて、すごい数だった。
 落ちた実は大部分が蒂と離れている。こんなに実がついていたのかと見上げた。今も風が吹いている。きっと明日もまた掃除かな。
 柿の小さな実さん、そんなに落として、あとは、大丈夫なの?
  出水市 畠中大喜(73) 2010/6/5 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はkusatomoさん

毒舌を懐かしみながら

2010-06-05 16:00:17 | はがき随筆
 息子に勧められてパソコンの練習を始めた。「できるだろうか」と言う私に、英語教師の息子は「優秀な講師がついているから大丈夫」と言う。「でも教え子のおつむの方がねえ」と戯れ言を交わしたが、メカには弱いし、パソコン用語にも質問攻めする私に、息子は内心まどろっこしいと思っているかもしれない。
 それでもやってみると面白い。面白いと思えるから何となく続けられるかも、と思っている。
 3年前に亡くなった夫は、素朴で悪気のない人だったが、相当な毒舌家だった。20年前、短歌を習い始めた私に熊本弁で「メシの種にもならんこつばして」とのたもうた。70歳になった時も医療費が要らなくなってうれしいという私に
 「お前も死に前が近うなったな」と言った。数えれば限りなくある毒舌の語録。
 私も負けずに「もう情緒レス」とか、「結婚の申し込みの時、『幸せにします』とか言って、一番上に『ふ』を付けるのを忘れていたんじゃない」と□争いしたのも懐かしい思い出だ。
 夫の写真を横目に見ながら悪戦苦闘の私に夫が声をかけるとしたら、きっとこう言うだろうと想像して笑ってしまう。
 「ふん。またそぎゃんこつばして、電気代の無駄たい」
 私は私で、天国か地獄か、どちらにお住まいか分からないけど、「そちらの住み心地は如何ですか」などと書いて練習している。
  大分市 木村すみ子・78歳 2010/6/5 の気持ち欄掲載