はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

中秋の名月

2008-09-15 22:56:12 | アカショウビンのつぶやき






 今日は久々の「ひとりごと」up。

 脚の怪我で随分サボっちゃったけど、何とか回復も近い感じ。今日は思い切って、台風の影響で土砂降りの雨のなかを酔狂にも、お月見の茶会に招かれて友人と出かけた。会場は市民ホール・リナシティのギャラリー。去年までは広々とした武道館に豪華なお供えのセットをしつらえ、控えの間では妙なる雅楽の演奏もあったのに、お供え物はこぢんまりとセットされ、楽しみだった雅楽の演奏も残念ながらなかった。やがておいしい月見団子が振る舞われる。

 お手前が始まった。「ああ、これがお茶のわびさびの世界なんだ」などと、あまりよく分からぬながら、日常性の対局にある静謐な雰囲気を感じる私たちだった。 やがて、お抹茶が運ばれる。きりりと和服に身を包んだ女性たちの、きれいな動きに、思わず姿勢を正してお茶を手に頂く。茶道にうとい私は、おいしいお抹茶をすすり、渋いお茶碗を眺め「まっこれで良いか…」。
 
 お茶席で重要な意味をもつ、掛け軸の文字が読めない。「掬水月在手」とようやく推測する。あとで伺った所では<手で掬った水に月の影が映っている>と言う意味だとか。これが日本人の美的感覚というものだろうなあ…と感心しながらもう一度、掛け軸を眺めた。
 
 帰りも土砂降り、中秋の名月は残念ながら雨雲の上。来月の満月も同じ月。でも 中秋の名月だけは特別なんだけどなあ…。

ポーチュラカ

2008-09-15 22:12:06 | はがき随筆
 25年前、夫が急逝して鶴田から川内に転居した。そこで、近所の60代の奥さんによく声をかけてもらった。
 「この花はね、摘んで挿せば増えるのよ。楽しいから、やってごらんなさい」
 そう言って、ポーチュラカを手折り、数本下さった。
 まねて挿したら、かわいい花が赤、白、黄色と咲き誇り、寂しさが紛れた。
 面白い花で、雨の日や、強い日差しの日は咲かない。気分屋だ。まるで私みたい。
 今年も、コスモスの根元や庭で、元気に育っている。
 花を見るたび奥さんを思う。
   阿久根市 別枝由井(66) 2008/9/15 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はmumboさん

命を絶つ

2008-09-15 21:44:39 | はがき随筆
 1本の朝顔のつるが門柱の傍らの電柱を支える鋼鉄線に絡みつき、たくさんの花をつけ、朝の一時、目を楽しませてくれた。日に数㌢も伸びようか。気づくと電線にまで届く勢いだ。高めの脚立を用意し、途中でつるを引きちぎることにした。つるは案外太く、抵抗は大きく、こん身の力でようやくちぎれた。
 明くる朝、鋼鉄線に絡みついたまま雨に打たれ、垂れ下がったつるを眺めていると、アフガンに豊富な食糧をと奮闘し、アフガン人に殺害された若き伊藤さんが思い浮かんだ。永らえるべき命が理不尽に、無残に絶たれることもあるのだと思った。
   肝付町 吉井三男(66) 2008/9/14 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はmumboさん