黒澤・野良犬

2009-03-24 13:51:57 | 本の話
写真は秋山邦晴の『日本の映画音楽史Ⅰ』です。
田畑書店1974年刊

本の最後に続巻の予告はありましたが結局出版されて
いないと思います。
当時、大変に面白く読んだ記憶があり次を待っていた
のですが。

この本でも大きく取り上げられている音楽家早坂文雄
は幅広い活躍をされましたが早くに病没されました。
(1914~1955)
彼は、映画音楽でも素晴らしい仕事をしていることが
この本に書いてあります。

著者秋山邦晴も多彩な音楽活動をされたようです。
この本の続巻が出ていたら面白かったでしょう。


いや、まずクロサワの『野良犬』からでした。

タイトルバックで野良犬が、ハアハアしているところ
からして笑っちゃう、今から見れば「古~い」映画
ではありますが良いところも多かった。

実は、つい最近までなぜかこの映画を未見でした。
私の世代の映画ファンで黒澤作品の中に見ていない
ものがあるなんて(モグリ)ですよね。

最近やっとNHKの黒澤特集でビデオにとり鑑賞できた
のです。
以前に見ていたらもっと感動したでしょう。

ドキュメンタリーの味わいを滲ませた娯楽作品で
なかなか、そのバランスがよろしいのです。
この二つの融合は難しそうですから。

すぐに思い浮かぶのがイタリアのネオ・リアリズモ。
リアルでドキュメンタリー風のタッチでありながら
甘いドラマの味があるのです。(悲劇でも)

ロベルト・ロッセリーニ『無防備都市』'45
ヴィットリオ・デ・シーカ『靴みがき』'46 『自転車泥棒』'48
ルキノ・ヴィスコンティ『揺れる大地』'48

『野良犬』が'49です。
ただ、上記伊映画の日本公開が'50~らしいので
黒澤が直接影響を受けているわけではなさそうです。
世界中、時代も社会も同方向に向いていたのでしょう。

脚本にはムリが目立つのですが映画の目が戦後日本を
リアルに写すことに向きドラマの出来を二の次にした
というところがあるのでしょう。
証拠はありませんが。

『野良犬』の一年前『酔いどれ天使』はドラマ性を
前面に出して成功したのですが次はもっとリアルな
映画を撮りたくなったに違いありません。

その『酔いどれ・・』で主人公がひどく落胆して
街を歩くシーンがあります。
そこにマーケットの拡声器から聞こえてくる
『カッコウワルツ』

悲しいシーンに明るい音楽を対比させ、主人公の
気持ちを見ている人に深く伝えます。

秋山さんは本で「対位法的な映画音楽」と
書いておられます。

今では陳腐ともいえる手法ですが当時は斬新で
評判になったそうです。
映画音楽の賞もとっています。

これは黒澤監督が音楽の重要性をよく知り
かつセンスがあったからなのですが
音楽担当の早坂さんとのコンビも抜群であった
ということです。


早坂文雄の映画音楽と映画『野良犬』については
もう一回書きます。
いつもハンパに終わってスミマセン。


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