A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

終わりの無いワルツを踊り続けて~追悼・若松孝二監督

2012年10月19日 00時35分41秒 | 映画やDVDのこと


社会派監督として映画史に燦然と輝く若松孝二監督の突然の訃報に戸惑いとショックを隠せない。今後監督と直接関わった数多くの著名人による監督の偉業についての思い出話や弔辞が寄せられると思うので、ここでは極私的な追悼の意を表したいと思う。

若松監督の名前は学生時代から知っていたが、興味を持ったのは1995年公開の「Endless Waltz エンドレス・ワルツ」だった。元INUの町田康(町蔵)氏が主演し、灰野さんが本人役で出演しているこの作品は伝説のアルトサックス奏者阿部薫さんの激動の生涯と昭和の香り漂う地下文化シーンを如実に描いており、奥さんの鈴木いづみ役の広田玲央名嬢のベッド・シーンも多くて何度も観に行っては興奮したものである。テーマが音楽なだけに興味深いのは確かだが、ハチャメチャな時代を冷静にドキュメンタリー視線で捉えた演出には不思議な魅力があった。



「エンドレス・ワルツ」のパンフレットに若松監督のバイオ/フィルモグラフィーが載っており、1960年代から「ピンク映画の黒澤明」と呼ばれた実力派であること、反体制的な視点で描く作品は学生運動家を始めとする若者から大きな支持を得ていることを知った。当時のフリージャズやニューロックをサントラに起用しているのがとても魅力的だった。「13人連続暴行魔」(1978年)のCD-ROMを入手し動く阿部薫さんの姿に感動した。



ジム・オルークが大の若松ファンで若松映画の音楽を作りたくて日本語を勉強し、2006年に東京へ移住したのも印象的だった。移住したばかりの頃に訊いたら「もう音楽は辞めて映画の勉強をする」と言っていたが、2008年に念願叶って「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」の音楽を担当、その頃から演奏活動も始め、灰野さんや坂田さん、中原昌也氏、石橋英子嬢など数多くの日本のアーティストと共演している。今年公開の若松映画「海燕ホテル・ブルー」の音楽も手がけた。



2008年には「若松孝二傑作選」として山下洋輔トリオ、ジャックス、フード・ブレインといった伝説的アーティストによる若松映画のサントラCDシリーズがリリースされ貴重な音源が聴けるようになった。









若松監督は「自分自身が面白いと思った映画しか撮らない」という反骨精神を貫き、国内外で様々な映画賞を受賞するようになってもその姿勢にはブレがなかった。実際に今年のベネチア映画祭では記者会見で東電に宣戦布告するなど若松節炸裂だったという。

76歳にして気骨溢れる活動を続けていただけに交通事故という不慮の死は残念でならない。しかしこれも天命という他ないだろう。少なくとも残された数多くの映画作品に若松監督の精神は宿っているのだから。

反体制
貫き続けて
天国へ

合掌。
コメント (4)
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