A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【爆裂ライブレポート】爆団バンド『初爆裂』センチメンタル思春期/PRINCE & ROMY/ゆらぴこ@大久保水族館 2022.9.28wed

2022年10月01日 02時39分45秒 | ロッケンロール万歳!


2022年9月28日(水)Live Bar 大久保水族館
爆団バンド『初爆裂』
19:00 open / 19:30 start 予約・当日共に2500円+1D

【出演】
爆団BAND
センチメンタル思春期(Special Guest)
PRINCE & ROMY(Opening Act)
サプライズゲスト有



爆裂女子のカバーバンド結成を思い立ったのは2019年秋頃だったと思う。爆団(爆裂女子のヲタクの総称)に楽器をやる人を見つけたので、最初は爆団だけでバンドを作るつもりだったが、ヲタ活や仕事の理由で参加できない人が多く一度も集まれないでいるうちにコロナ禍になってしまった。ドラマー候補が健康上の理由で離脱したため、自分でドラムをやる決意をして、テレワークをいいことに部屋で椅子をドラム代わりに練習し始めたのは2020年春頃だった。コロナ禍の影響もあり、メンバーは自分とギターのウイリアム王子の二人だけになってしまったが、緊急事態宣言が緩和された2020年秋頃に二人でスタジオ練習をスタート。ドラム初心者でもなんとか叩けるようになり、2021年初頭に地下音楽関係で知り合ったあおこ姉さまがヴォーカル、でんぱ組&ネクロ魔ヲタクのミノルがベースで参加、さらにネクロ魔ヲタクでメタラーのあれきし(一人だけ20代)がギターで参加し2021年春には5人体制になった。当初の目標は「爆裂女子のバックバンドを務めること」だったが、想定外に2021年9月28日新宿ロフト「爆裂大解散」を最後に爆裂女子が解散してしまった。その後目標を「爆裂女子の曲を歌い継ぐこと」へと変更し、爆団バンドとして練習を続けた。

デビュー・ライヴの開催は悲願だったが、2022年になってもコロナ感染が収まらない状況で出演できる場所がなく半年ほど過ぎた。それでも9月28日解散ライヴから丸一年の記念すべき日にライヴを開催する決意をして、以前筆者のバンドMOGRE MOGRUで出演した大久保水族館を押さえていよいよデビュー・ライヴを開催することになった。対バンとして当初は別のバンドのギタリストのソロで打診したが都合が合わず、ダメ元で元爆裂女子の凛茶魔の新バンド、センチメンタル思春期に依頼したところ快諾。さらにサプライズゲストとしてゆらぴこちゃんにも出演OKをもらった。アイドル系ライヴ会場でフライヤーを撒いたり、SNSで動画を作って告知したり、高校時代のバンド活動を思い出させるワクテカな日々を送り、いよいよ本番当日。週末ごとに訪れる台風もなく秋晴れのライヴ日和、元メンバーの路亜ちゃんとあっこちゃんや、モガーズの名波みやびさんも含め、20人近いお客さんに来場いただき、とても楽しいライヴになった。ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。


●PRINCE & ROMY(Opening Act)


PRINCEことウイリアム王子(vo, ag)とROMYことひろミサ(vo, violin, 縦笛)によるフォークデュオ。ウイリアム王子はフォークバンド「かすみ草」で活動しているし、筆者も最近フォークソングを愛聴している。受け狙いの前座に終わらないようにちょっと工夫を凝らした演奏はプログレッシヴ・フォークという声も聴かれた。今後も何とか活動を続けたい所存である。

➀ 学生街の喫茶店
② 精霊流し
③ 岬めぐり




●センチメンタル思春期(Special Guest)


凛茶魔(vo & g)、ふじさわ(b)、HIKO_HIKO(ds)により令和4年1月結成!センチメンタルな青春3ピースバンド。2022年8月25日新宿Motion「真夏の入学式」にてデビュー。今回が3回目のライヴになるが、爆裂女子の頃以上に弾けた凛茶魔のヴォーカルとノーエフェクターのギター、リズム隊のタイトなビートが甘酸っぱいメロディをストレートに伝えてくる。爆裂女子のラストシングル「最底辺ロマンス」をチラッと演奏したのがエモかった。

🐟SE
📛ひとりごと
📛憂鬱ヘラ子ちゃん
📛RESTART
📛キミハ...
📛かえりのうた
📛生命線


●爆団BAND


いよいよ初ライヴ。ライヴが決まってからメキメキ実力がアップした気がする。個人的には全く緊張はしなかったが、気合が入りすぎて曲のテンポが速くなり、ワイルド過ぎる演奏になった。スタジオ練習中に「GREAT FXXKING~」で感動のあまり泣きそうになったこともあるが、本番は演奏に集中していて泣くどころではなかった。安いドラムスティックだったので4本折ってしまった。やはりパンクは最高!との思いを強くした。

Opening SE
➀ ナンシー
② 衝動
③ All lie
④ Against The Drain
⑤ セルナンバー8
⑥ Dead or Alive
⑦ GREAT FxxKING MY WORLD




●ゆらぴこ(Surprise Guest)


サプライズゲストはゆらぴこちゃん。同じ9/28にソロCD『Precious』をリリースし、この日は夜のインストアイベント終了後に駆けつけてくれて大感謝。リリイベの疲れも見せず、全身全霊のパフォーマンス。爆裂女子解散ライヴでの思いをそのままに、これからの活動にかける決意をこめた熱血ぶりに心が熱くなる。爆団バンドへの激励の言葉も嬉しかった。

SE
①Rain
②生きていく
③HERO
④Precious
⑤YOU ARE MY 44


●アンコール


アンコールとして爆団バンドと凛茶魔、ゆらぴこ、路亜ちゃん、あっこちゃんの共演で「ナンシー」を披露。爆裂女子が解散した1年後に、まさか元メンバーが4人集まってこの曲を歌うことになるとは、誰も想像していないかった奇跡に違いない。4人の歌と踊りとパフォーマンスは、後ろから見ても魅力と迫力たっぷりだった。またいつか共演が出来ることを祈ってやまない。その時は今日来れなかった元メンバー(零ちゃん、都子ちゃん、若ちゃん)にも参加してもらいたい。

ナンシー(アンコール)/爆団BAND with 凛茶魔、ゆらぴこ、路亜、あこ @初爆裂 20220928 大久保水族館


夢にみた
共演ライヴが
現実に

▼爆団バンドへの出演オファーお待ちしています!(PRINCE & ROMYもよろしくです!)

爆団バンド L to R:あれきし(g), あおこ(vo), ミノル(b), ひろミサ(ds), ウイリアム王子(g)
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【ロックのライヴ盤はLP2枚組で決まり!】キャロル/クールス/パンタ&HAL/ザ・スターリン

2022年07月14日 02時18分12秒 | ロッケンロール万歳!


最初に自分で買ったLPはジョン・デンバーの『ジョン・デンバー・ライブ(An Evening with John Denver)』だった。日本盤LP2枚組、1976年4月4日金沢・山畜片町店にて4000円にて購入。中学2年生になったばかりの筆者のこづかいは1か月1000円。おそらく貯めておいたお年玉をはたいて買ったのだろう。今ではハードオフのジャンクレコード・コーナーでよく見る安レコの代表格だが、当時聴いたときの感動は今でも心の中に刻まれている。A・B・C・Dの四面あるので、朝起きると今日はどの面を聴こうかと楽しみにして登校していた。学校が終わって家に帰り、居間の家具調ステレオのスイッチを入れてアームがレコードの端にゆっくり動いて針が盤面に降りるのを見ている時のドキドキ感は、他に比べるもののない至福の時間だった。流れ出すジョン・デンバーの明るい歌声は、遥かなるロッキー山脈やグランドキャニオンの青空へと連れて行ってくれた。ライナーノーツには湯川れい子さんが実際に観たステージの模様を詳細に綴っていて、ライヴの最初から最後まで一緒に観ている気分に浸ることができた。もちろん実際のライヴは2時間近くあるからLP2枚には入りきらないが、自分の部屋でライヴを疑似体験するには、LP1枚40分強じゃ物足りない。実際にその後ビーチ・ボーイズ『コンサート(Concert)』『ライヴ・イン・ロンドン(Live In London)』、ジョニー・ウィンター『ジョニー・ウィンター・アンド・ライヴ』『狂乱のライヴ(Captured Live!)』など、1枚もののライヴ・アルバムを買ったが、ジョン・デンバーのような濃厚なライヴ体験は出来なかった。

中学3年の時に東京へ引っ越してロック好きの友達に出会い、当時人気のハードロックのライヴ盤を聴かせてくれた。キッス『地獄の狂獣/キッス・アライヴ』、ディープ・パープル『ライブ・イン・ジャパン』、レッド・ツェッペリン『永遠の歌/レッド・ツェッペリン・ライヴ!』、すべて2枚組だった。LPの半分近くを占めるドラム・ソロは苦手だったが、やはりレコード2枚に亘ってたっぷり聴けるライヴ演奏は格別だった。筆者も廉価盤で再発されたグランド・ファンク・レイルロードの『グランド・ファンク・ライヴ・アルバム』2枚組を買った記憶があるが、すぐにパンクロックに衝撃を受けハードロックがダサく感じられるようになり、あまり聴かないうちに手放してしまった。

しかしCD時代に入ると1枚のCDの収録時間が長くなり、2枚組LPが1枚のCDに入ってしまうようになる。当時は「得した」と喜んでいたが、実際70分ノンストップで聴くことはなく、途中まで聴いて続きは明日、という感じで、LP時代の「今日は何面を聴こうか」と迷う楽しみがなくなってしまったのも事実。CDボックスでフルコンサート完全収録というのも何となく安易で食指が動かない。やはりロックのライヴ盤はLP2枚組に限る!と改めて実感している次第である。

そんなわけで最近聴いている日本のロックのLP2枚組ライヴ・アルバムを紹介しよう。

●キャロル『燃えつきる=キャロル・ラスト・ライブ!1975.4.13』


雨の日比谷野音で開催された解散コンサートのライヴ盤。70年代日本のロックの最高峰ははっぴいえんどでも裸のラリーズでもなく、ロックンロールの初期衝動をバンド・メンバー4人だけで発散し続けたキャロルなのではないだろうか。スタジオ盤もカッコいいが、灰になるまでロックンロールし続けるライヴ演奏を4面連続プレイすれば、心と身体を解放して、自由な世界へ羽ばたける気がする。


●クールス『ハロー・グッドバイ!』


キャロルの解散コンサートで親衛隊を務めたモーターサイクルチームのメンバーで結成されたクールス。1977年解散(舘ひろし脱退)コンサートのライヴ盤。アメリカのロックロールショーバンド、シャ・ナ・ナをモデルにした複数ヴォーカルによる賑やかなバンドサウンドは、『アメリカン・グラフィティ』の世界を彷彿させるロカビリー魂に溢れている。舘ひろし脱退後もバンドは続き、バラエティ豊かなロックンロール・ミュージックを追求している。


●パンタ&HAL『LIVE! TKOナイトライト』


頭脳警察解散後1975年にソロ・デビューしたパンタが77年に結成したロックバンド、PANTA&HALの1980年7月16日日本青年館でのライヴ盤。メッセージ性だけでなく音楽も重視するという構想のもとで結成されただけあり、フュージョンやワールドミュージックの要素を取り入れたサウンドは、頭脳警察のシンプルな曲想とはずいぶん異なるが、パンタの自己主張溢れる歌声はやはり魅力的。ライヴならではのアドリブや躍動感が80年代日本のロックの幕開けを告げる。


●ザ・スターリン『フォー・ネヴァー』


1985年2月21日調布・大映スタジオでの解散コンサートのライヴ盤。日本のパンクロックの草分けとして数々のセンセーションを巻き起こしたスターリンの集大成と言える長時間ライヴを収録。四つの面をアザラシ面、魚面、サル面、ブタ面と分けてあるのがレコードならではのこだわり。封入ポスターも嬉しい。映像もリリースされているが、音だけで聴くほうが遠藤ミチロウの歌の核心にある叫びを感じられるような気がする。

ロックなら
レコード2枚で
出してくれ



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【日本のパンクロックの凄み】THE STAR CLUB "悪たれ不良" TOUR@新宿ロフト/BOLSHIE『1979 Unreleased Studio Tracks』

2022年02月28日 02時13分38秒 | ロッケンロール万歳!


2022年2月26日(土)  新宿LOFT
THE STAR CLUB
GIGS SC 45TH ANNIVERSARY
"悪たれ不良" TOUR EARLY DAYS 1977-1984
[guest]STRONG STYLE



今年結成45周年を迎えるTHE STAR CLUBはおそらく世界最長寿のパンクロック・バンドと言えるだろう。70年代にデビューして一度解散・活動停止して90年代辺りに再結成したバンドは多数いるが、45年間一度も立ち止まることなくストレートなパンクロックを演奏し続けるバンドはスタークラブだけだろう。スタークラブが結成された1977年は中学3年生で14歳だった筆者がパンクロックに出会い人生が変わるほどの衝撃を受けた年。それから40年過ぎてすっかり忘れていたパンクロック衝動が、パンクロックアイドル爆裂女子と出会って再燃して以来、筆者はスタークラブのギグに通い続けている。コロナ禍でモッシュも声出しもできないライヴ現場は、パンクスにとっては(アイドルヲタク同様に)不完全燃焼に陥りそうだが、そんなフラストレーションなど忘れさせるほど容赦なく激しいスタークラブのパフォーマンスは、45年前のパンクロック衝動を上回る衝動を与えてくれる。

今回の"悪たれ不良" TOURは1977-1984年の初期ナンバーのセットリスト。前半は1983年のライヴアルバム『HOT & COOL』(City Rocker)をほぼそのままの曲順で再現、さらに80~83年のインディー時代の代表曲を連発。メジャー時代に開花するポップな曲調ばかりではなく、ダークでサイケデリックな曲も多いが、社会や政治へ問題意識を提示したHIKAGEの歌詞は、現代も通用するどころか、アンコールで「まさか今この曲が似合う時代になるとはな」と自嘲気味なMCで歌った『WORLD PEACE』に象徴される、今こそ発信すべきメッセージに溢れている。

STAR CLUB " WORLD PEACE " HIKAGE


サポートのSTRONG STYLEを合わせて2時間半の熱いライヴに心地よい疲れを感じながら帰宅して、昼間に高円寺BASEレコードで購入したBOLSHE(ボルシー)のCDを聴く。



ボルシーは1979年にリリースされたオムニバスLP『東京ニュー・ウェイヴ'79』にSEX、自殺、PAIN、8 1/2とともに収録されていた平均年齢16.5歳のパンクバンド。それから43年経って突然未発表のスタジオ録音と当時のライヴ音源がまとめてCDで発売された。メンバーのインタビューを読むと78年に高校に進学したというからおそらく筆者と同学年。結成のきっかけとなった原宿のパンク・ブティックSMASHには、筆者も2,3度行ったことがある。クラッシュのTシャツやバッジを買ったが、こづかいが少なかったのでボルシーのメンバーのように入り浸ることはできなかった。79年5月の解散直前のスタジオ録音を中心にした『1979 Unreleased Studio Tracks』には<1979年>という時代の空気がたっぷり詰まったソリッドなパンクロックが聴ける。『東京NEW WAVE’79』のG,B,Dsのトリオにキーボードが加わっているが、サウンドの幅を広げるのではなく、厚みを増す役割をしているのが潔い。メンバーの解説にもあるようにWIRE的な方向性を見せていることはピンク・フロイドの1stの曲のパンクカバーでもわかる。

Bolshie '79 UNRELEASED TRACKS


2年前に再発されたオムニバス盤『都市通信』にも感じたが、1979年という年は日本の(パンク)ロックに於いて特別な年だったことは間違いない。1977年に英米のパンクロックに感化されてアンダーグラウンドから湧き上がってきた未成熟なロック衝動が、80年代になるとニューウェイヴ・ブームの中で商業化され牙が抜かれて初期衝動は忘れられていった。そのギリギリの時代の空気がボルシーの音楽に真空パックされている。ライヴ音源などを集めた5枚組CD-BOXを聴くのも楽しみだ。

『都市通信』と79年の塩ビ盤〜東京ニュー・ウェイヴ'79/スジバン/シナロケ/パワーポップ/ピストルズ/ツネマツ/ミラーズ/フリクション

そう考えると、1977年のパンクロック精神を現在まで保ちつけるTHE STAR CLUBがますます輝きを増すのも確かである。

いつまでも
心の中に
パンクロック'77

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【私のポストパンク禁断症#13】我が愛しのB級パワーポップ~ダーリング/ヨッツ/ザ・レッズ/ザ・サイレンサーズ

2021年11月28日 01時31分46秒 | ロッケンロール万歳!


筆者にとっての最高のパワーポップ・バンドはスコットランド、エジンバラ出身のザ・レジロスである。高校1年生の時FMラジオで特集されたデビュー・アルバム『レジロス登場』は中学3年生で衝撃を受けたセックス・ピストルズやクラッシュに負けない影響を受けたが、パンクのような反抗精神や欲求不満の発露ではなく、純粋にロックンロールの楽しさを謳歌するポジティヴィティを感じた。それから30年以上たった現在でも、決して現状に満足しているわけではないが、怒りをぶちまけるよりも、すべてを忘れて音楽をとことん楽しみたい。まるで彗星のように4年周期で巡って来るパワーポップ禁断症状に身を委ねて、我が愛するB級パワーポップバンドを紹介しよう。
【パワーポップUSA】THE POP/THE A′s/THE RUBINOOS/THE dB′S/MILK′N′COOKIES etc.

●ザ・レッズ The Reds


1979年A&Myoriデビューしたフィラデルフィアの4人組ザ・レッズのデビュー・アルバム。RED(赤)なのにGREEN(緑)ヴァイナル。補色関係の二色の対比にクリスマスを感じる1枚。いかにもパワーポップという感じの骨太なギターロックだが、EPではザ・ドアーズのカヴァーもやっていて、ルーツに60年代サイケの要素があることが分かる。80年代半ばに解散するが、リック・シャファー(g,vo)とブルース・コーエン(b.key,vo)のデュオとして2002年に再結成し、現在も活動中。

The Reds - Break On Through (The Doors Cover)



●ヨッツ Yachts


イギリス、リヴァプールで1977年4月に結成された4人組。前身バンドAlbert Dockは76年にセックス・ピストルズのリヴァプール公演の前座を務めたという。エルヴィス・コステロの前座で注目されスティッフ・レコードからシングル・デビュー、その後レイダー・レコードと契約しリリースした1stアルバムが本作。ザ・フーやジョー・ジャクソンのサポートでアメリカ・ツアーを行うが、2ndアルバム『Without Rader』(80)リリース後81年に解散。コステロやニック・ロウに通じるパブロック風味のパワーポップは意外に通好み。

Yachts - Yachting Type



●ダーリング Darling


1973年にロンドンで結成されたグラムロックバンドSlack Aliceのメンバーを中心に1979年に結成された4人組のデビュー・アルバム。ルックスはニューウェイヴだが、サウンドはドスの効いた女性ヴォーカルが毒を吐くグラムパンク。ヴォーカルのアリス・スプリングはサンドラ・バリーの芸名で60年代から女優・歌手として活動していた。アメリカのパワーポップにはない陰影の深さが英国ロック好きにアピールするだろう。

Darling - Lookin' Kinda Rock 'N' Rolled (1979)



●ザ・サイレンサーズ The Silencers


ジョー・ジャクソンの1979年のアメリカ・ツアーに影響されてピッツバーグで結成された5人組。80年にデビュー、2枚のアルバムをリリース。MTVでオンエアされた最初のピッツバーグのバンドとなる。ストレートなロックンロールだけでなく、ブルースやカントリーの要素のある多彩な音楽性はパワーポップというよりアメリカン・インディ/カレッジ・ロックの先駆者と呼ぶ方が相応しい。84年に解散。なお、イギリスにも同名のグループがいるので要注意。

The Silencers - Peter Gunn, Remote Control and Illegal


パワーとポップ
水と油じゃ
ありません

Rezillos - Flying saucer attack 1978
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【エレキでビート!】ソノシートで聴く偽ベンチャーズ~ポップ・キッカーズ/ビート・フィーチャーズ/クレージー・ビートルズ/ブルー・ファイヤー/スウィング・ウェストetc.

2021年11月09日 00時41分09秒 | ロッケンロール万歳!


「ソノシート」と言うとこのブログを読む異端音楽ファン諸氏は80年代のパンク/ニューウェイヴ系の自主制作盤が頭に浮かぶだろうが、ここで紹介したいのはそれより遡る事20年前、60年代の日本で流行した、いわば第一次ソノシートブームの作品である。ハードオフのジャンクレコードコーナーに行けば50円で投げ売りされているソノシートの歴史は、日本の音楽ビジネスの裏街道と言える。1958年にフランスのメーカーが開発し翌年1959年に日本で「音の出る雑誌」として売り出されたソノシートは、安価で扱いやすいため瞬く間に人気商品になった。ソノシート専門メーカーが次々登場し音楽物のソノシートも数多く発売されたが、当時音源の権利を独占していたレコード会社がライバル視して自社音源の使用を認めなかったために、ソノシートメーカーは音源を自主制作するしかなかった。安いスタジオ・ミュージシャンやキャバレーのセミプロバンドを雇って低予算で録音された音源は、驚くほどチープ、言い方を変えればプリミティブなものが多かったが、それこそ80年代インディーズと同じ「DIY精神」の産物に違いない。

それが最も顕著に花開いたのが、ソノシートブームと同時に起こったエレキブーム便乗作品である。60年代初頭のベンチャーズの大ヒットにより日本を席巻したエレキブームで、各地にアマチュアエレキバンドが生まれ、テレビの「勝ち抜きエレキ合戦」が人気を集めた。あまりのブームに教育委員会から「エレキは不良の音楽」とレッテルを張られたが、そんなの関係ねぇとばかりに、若者たちは安い国産エレキギターを手にしてテケテケテケテケとベンチャーズの真似をした。英会話や詩吟や童謡の教材として売り上げを伸ばすソノシート業界がそれに便乗しないわけがない。有象無象の和製ベンチャーズが捏造され、あたかもソノシート界の勝ち抜きエレキ合戦の様相を呈した。それはまさに60年代ガレージパンクのコンピレーション『Nuggets』『Pebbles』に匹敵する、日本で最初の草の根ロック衝動の記録と言えるであろう。

●熊木忠とポップ・キッカーズ fest. 鳴海誠『エレキギター・ヒット曲ベスト16』(現代芸術社)


1964年5月に結成された楽団でナイトクラブ、キャバレー、各種音楽吹込みで活躍。メンバーはタンゴ・バンド出身のピアニスト、熊木忠をリーダーに、望月康平(g)、加藤朝雄(as)、萩原利夫(ts)、小林茂夫(b)、今本憲二郎(ds)。主なレパートリーはダンス音楽を中心にして、ヒット曲やカンツォーネなどポピュラー全般をメンバーのアレンジで手掛ける。このソノシートではエレキ・ギターの鳴海誠をゲストに迎えてベンチャーズ・ナンバーに挑んだというが、ロックンロールのノリがどうにも分からないようで、盆踊りっぽい野暮ったさが貫くサウンドは、田植えのBGMに似合いそう。演奏自体は下手じゃないのだが、聴かせどころのテケテケテケテケもいまいち垢ぬけない。アー写はどう見ても社会人ブラスバンド同好会。逆に言えば和製ベンチャーズならではのフェイクな魅力に溢れるバンドと言えよう。


熊木忠とポップ・キッカーズ

●舟山幸一とビート・フィーチャーズ『パンチオブエレキ 18曲』(現代芸術社)


1960年の現代音楽祭でジョン・ケージと共演したという若手クラシック・ギターの第一人者・舟山幸一が、レパートリーを広げるために結成したエレキバンドがビート・フィーチャーズ。舟山を第1ギターに、第2ギター秋山実、第3ギター北村澄、ベースギター加藤稔、ドラムス吉野公彦。秋山は美空ひばりや青江三奈、北村は五木ひろしのバックを務めるギタリスト、加藤も実力派クラシックギタリスト、吉野は50年代から活動するジャズドラマーという異色のスーパーバンドだった。それだけに演奏もタイトで録音もよく、和製ベンチャーズの中では頭一つ抜けた存在である。溝と溝の狭間にチャンス・オペレーションの芽生えを感じるのはソノシートならではのローファイ音質が生む錯覚だろうか?


舟山幸一とビート・フィーチャーズ

●クレージー・ビートルズ『エレキNo.1』『ビート・ヒット・パレード』(ミュージック・グラフ)


名前の通り和製ビートルズとして人気があったグループ。ドラムのリーダー仲儀英は日大芸術部四年生で22歳(1966年当時)、お寺の長男で小さい頃から太鼓をたたいて育ったという音楽の虫。リード・ギター田代かつあきは高校時代に女優・炎加代子のバンドにいたのかキッカケでこの道に入った。ベース・ギターの渡辺アキラはハワイアンからロカビリーへの転向組。サイド・ギターの丘タケシは最年少で鈴木ヤスシのバンド・ボーイ出身。ここで聴けるエレキインストは、録音のバランスの悪さも手伝って、情熱はあるがテクがいまいち伴わないアマチュアバンドのデモテープのような初々しさがある。しかし本当にやりたかったのはビートルズの歌入りカバーに違いない。彼らのビートルズ・カバーのソノシートがあるらしいが、果たして出会うことが出来るかどうか、地図のないソノシート探索の旅は続く。


クレージー・ビートルズ

●6ヴェドウィンズ『1965 ベンチャーズ・ヒットナンバー』(音楽出版販売)


最近(1965年1月時点)結成された楽団で、クラブやキャバレーあるいは各種音楽吹込みで活躍中。メンバー名はないが写真を見るとギター3人、ベース、ドラム、オルガン(?)の6人組。オルガン奏者が最年長に見える。これがかなりの優れもので、ツインギターのハモり、細かいフィンガリングの奇妙なフレーズ、スカバンドっぽいハイピッチなドラム、グルーヴィ―なベース、ツボを押さえたオルガン、と工夫を凝らした演奏は、決して雇われミュージシャンの小遣い稼ぎではなく、本気のバンドサウンドに違いない、などと感心しながら写真を眺めていたら、メンバーの風貌や立ち姿が舟山幸一とビート・フィーチャーズとそっくり、というか同じメンバーに間違いないと気づいた。メーカーが違うのでグループ名を変えて吹き込んだのだろうか?楽器を持っていないのでオルガン奏者だと思った年長の男性は、プロデューサーかレコード会社のディレクターかもしれない。今となっては確かめようがない。ソノシート界の謎は深い。


6ヴェドウィンズ

●麻生京子とブルー・ファイヤー『フルー・ファイヤーのエレキ☆クリスマス』(勁文社)


ティーン・エージャーのお気に入りの「ブルー・ファイヤー」は、ジャズ喫茶、ステージ、テレビにと大活躍。以前のバンド・ネーム「ファイヤーボール」から今年(1965年)の四月に再編成され、ベンチャーズ、アストロノーツのスタイルを取り入れて、若さと強烈なビートを打ち出している。メンバーはエレキ・ギター:野島美樹、ベース:川本正美、エレクトーン・ピアノ:関根英雄、ギター:特別出演・酒井吉夫、唄:麻生京子。演奏は悪くないが、次に紹介するスウィング・ウェストの切れの良さに比べると、育ちのよさというか煮え切らなさを感じる。兄弟グループの「ブルー・コメッツ」がグループサウンズで大成功したのに対して、ブルー・ファイヤーは自然消滅。麻生京子は内田裕也に引き抜かれて、麻生レミと改名してザ・フラワーズに参加し「和製ジャニス・ジョプリン」と呼ばれて日本の女性ロッカーの草分けとなる。ブルー・ファイヤーの音源は勁文社のソノシートでしか出ておらず、その一部は麻生京子のコンピレーションCDに収録されているが、ソノシートでしか聴けない曲も多い。ソノシート墓堀人の血が騒ぐってものよ。


麻生京子とブルー・ファイヤー

●植田ヨシヤスとスウィング・ウェスト『エレキギタークリスマス10』(コダマプレス)


スウィング・ウエストは1957年にロカビリーバンドとして結成され、60年にエレキバンドに転身、さらに60年代後半にグループ・サウンズとしてヒットを飛ばした名門バンド。ロカビリー期のリーダー堀威夫(後のホリプロ社長)に代わって植田ヨシヤスがリーダーとなったエレキバンド期は、レコードとしてはオムニバスLPに数曲収録されただけなので、10曲入りのこのソノシートはある意味貴重かもしれない。ベンチャーズにクリスマスソングのレコードがあるが、これはカバーではなく、スウィング・ウェスト独自のアレンジによるオリジナル・エレキ・クリスマス。さすが名門バンドだけあって、演奏もアレンジもキレまくりのガレージロックが最高にカッコいい。楽譜が読めなくてもエレキ・ギターが弾ける図解つきで、解説もひらがな多めで親切。

●ザ・サンズ『最新エレキ・ギター特集』(日本ビクター)


グループのプロフィールの記載がなく詳細不明。メジャーレーベルのビクターだからそれなりの実力派スタジオ・ミュージシャンだと思われる。達者だが妙に線の細いリードギター、効果音風の合いの手を入れるサイドギター、テケテケテケテケを軽々とキメるベース、エレクトーン上がりのオルガン、鼓笛隊っぽいドラムなど、宴会バンド風のベタなノリ。本物志向のプロミュージシャンがアルバイトのお遊び感覚で適当にやった演奏が、ソノシートならではの絶妙な偽物感を生み出していて好感が持てる。

●ザ・ファイヤー・バーズ『New Hit Pops』(勁文社)


1968年歌謡ポップスのヒット曲のインストカバー集。グループサウンズやビートポップスをベンチャーズ・スタイルのエレキサウンドで聴かせるのがザ・ファイヤー・バーズ。プロフィールは不明だが、他にもGSカバーのソノシートに参加しているようだ。安っぽいオルガンサウンドはアジア大陸的な風味がある。当時あったかどうかわからないが、フィリピンパブのBGMに似合いそう。他には大沢保郎プラスストリングス、横内章次と彼のグループ、秋本薫とストリングスといったムード・ジャズ楽団を収録。いずれもそこはかとない偽物感がオレのソノマニア心を鷲掴みにする。

ソノシート界の深い闇の中にどんなNuggets(金塊)やPebbles(小石)が隠れているのか、探索する楽しみに武者震いする秋の夜長も悪くない。

パチモンと
片づけられない
偽ベンチャーズ


1.熊木忠とポップ・キッカーズ/ダイヤモンド・ヘッド
2.舟山幸一とビート・フィーチャーズ/急がば回れ
3.クレージー・ビートルズ/蜜の味
4.6ヴェドウィンズ/十番街の殺人
5.麻生京子とブルー・ファイヤー/ジングルベル
6.植田ヨシヤスとスウィング・ウェスト/サンタが町にやってくる
7.ザ・サンズ/アパッチ'65
8.ザ・ファイヤー・バーズ虹色の湖
Compiled by Takeshi Goda 剛田武 @盤魔殿
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夏休みのロックンロール~The Birthday『サンバースト』/ザ・クロマニヨンズ『ドライブ GO!』

2021年08月27日 01時29分05秒 | ロッケンロール万歳!


猛暑!あっちぃ~と思ったらゲリラ豪雨で水浸し、このまま秋が来るのかと思ったら再び猛暑のエンドオブサマー。気候の変化は何年かたったら忘れてしまうかもしれないが、コロナやワクチンや五輪や緊急事態宣言云々に翻弄されるよりも、自然界の気紛れに一喜一憂している方が精神衛生上好ましい。とはいえコロナ禍で推しアイドルのイベントが延期や中止になって心が折れそうなときに救ってくれたのは心と身体が踊るロックンロールだった。ライヴ会場ではマスク着用・移動/声出し禁止だが、自宅で楽しむ分には何の制約もない。隣人から苦情が来るギリギリの音量までステレオのつまみを廻して、家具や調度を破壊しない程度にポゴダンスをキメれば、気持ちはいつでも十四歳。心臓の鼓動と同期したビートで呼吸すれば酸素ステーションも必要ない。これから季節は秋から冬へ、そして春から夏へと巡っていくが、ロックンロールはいつも変わらず僕らのそばで転がり続けるだろう。

The Birthdayとザ・クロマニヨンズ、どちらも15年前の2006年にデビューした同期であり、The Birhdayはチバユウスケ(vo,g)とクハラカズユキ(ds)、ザ・クロマニヨンズは甲本ヒロト(vo)と真島昌利(g)と、どちらも以前のバンド時代からタッグを組む二人を中心に結成された、まさに日本のロックンロールの遺伝子を宿した義兄弟バンドと言えるだろう。

●The Birthday『サンバースト』


ファーストシングル「stupid」リリースから15年、フジイケンジ加入10周年を迎えたThe Birthdayの11枚目となるフルアルバム!真骨頂であるライブが制限される世界で、かつてないほど楽曲制作に向き合った末に産まれた作品。近年、改めてバンド界隈からのリスペクトがクローズアップされている中で、しっかり格の違いを感じられる作品に仕上がっている。

チバユウスケのダミ声が叫びをあげるブルージーなギターロックからスタートして、突進するガレージロック、クールなジャズブルース、12弦ギターのフォークロックと音楽性は広がっているが、逆にバンドのイメージは研ぎすまされていく。歌詞の中にセキセイインコ、モモンガ、犬、カモメ、コウモリ、オンドリ、といろんな生き物が登場することに気が付いて嬉しくなった。重量盤2枚組、厚手の見開きジャケットの重みが頼もしい。

The Birthday - 月光



●ザ・クロマニヨンズ『ドライブ GO!』


SIX KICKS ROCK&ROLLと題し、6ヵ月連続でシングルを発売。その第1弾(ザ・クロマニヨンズ通算20枚目のシングル)を8月25日に発売。7inchアナログ盤には、6ヶ月連続シングルをすべて収納できる特製BOX付。

AB面とも初めて聴いてもシンガロング出来る最高のロックンロール。7インチシングルを毎月リリースし、半年後にアルバムとして完成するという、小学館の雑誌の付録のような企画。普通なら1か月後にアルバムが出るのでシングル盤を何度も聴くことはあまりないのだが、この方法ならば毎日何度もターンテーブルに乗せるかもしれない。からっぽの収納BOXを埋めていくのが楽しみでならない。ロックンロールはガキの音楽だから気持ちもガキに戻らなきゃだめだね。

ザ・クロマニヨンズ 『ドライブ GO!』


ロックンロール
聴けばいつでも
夏休み

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【私のB級サイケ蒐集癖】第31夜:ガレージサイケに感染したロックアイドルが生んだ万華鏡ポップワールド~ゲイリー・ウォーカー&ザ・レイン『アルバム No.1』

2021年04月24日 03時23分05秒 | ロッケンロール万歳!


今朝ベイ・シティ・ローラーズ(以下BCR)のヴォーカリストだったレスリー・マッコーエンの急逝が報道され軽いショックを受けた。70年代半ば、筆者が洋楽に目覚めた中学生の頃、BCRは日本でアイドル的人気を誇っていた。クラスでも熱狂的な女子ファンが騒いでいて、キッスやエアロスミス好きな男子は“BCRはミーハー向け”と馬鹿にしていた。それを決定づけたのがNHKテレビの『ヤングミュージックショー』だった。BCRは全曲あからさまな口パクで演奏し、曲も聴かずに大騒ぎするファンに向かって手を振ってばかりで楽器を弾いていないのにギターの音が出ているのを見て「やっぱりBCRは楽器も弾けない偽物バンド」といった印象が定着してしまった。後で聞くと契約やギャラの関係で生演奏を拒んだそうだが、下手でもいいからライヴパフォーマンスを見せていれば評価は違っていたかもしれない。そんなわけで完全に馬鹿にしていたが、時々ラジオやレコード店でBCRがかかっているとぜんぜん悪くないどころか、ポップロックとしての完成度の高さに驚くこともある。レスリーの冥福を心からお祈りします。

Saturday Night - Bay City Rollers


ベイ・シティ・ローラーズの10年前、1966,7年頃に日本で大人気を誇った洋楽バンドがウォーカー・ブラザーズだった。元々アメリカ出身のスコット、ジョン、ゲイリーからなる3人組で「太陽はもう輝かない」「ダンス天国」「孤独の太陽」などのヒットを放ち、67年に初来日、ビートルズをしのぐほどのセンセーションを巻き起こした。特に学ランを着たスコット・ウォーカーの姿は、当時の日本のGSに熱を上げていた10代女子の目を洋楽に向けさせるきっかけとなったという。

The Walker Brothers - Land Of 1000 Dances (1966)


1967年にいったん解散し、メンバーそれぞれソロ活動をスタート(68年、75年に再結成)。スコット・ウォーカー(本名:スコット・エンゲル Scott Engel)は抒情派シンガーとして活動し、内省的・哲学的な歌世界を展開し、デヴィッド・ボウイやトム・ヨークなどに影響を与える。ジョン・ウォーカー(本名:ジョン・ジョセフ・マウズ John Joseph Maus)も正統派シンガーとして活動し、10数枚のシングルと7枚のアルバムをリリースした。

そして残りの1人、ドラマーのゲイリー・ウォーカー(本名:ゲイリー・リーズ Gary Leeds)が今回の主役である。



1942年3月9日生まれ。1962年末~64年、ロサンゼルスのガレージバンド、スタンデルズ The Standelsにドラマーとして参加。脱退後P.J.Probyのバンド・メンバーとして英国をツアー。ブライアン・ジョーンズと交友を深める。米国に帰国後ウォーカー・ブラザーズのスコットとジョンと出会う。ウォーカーズのサウンドが“スウィンギング・ロンドン”にピッタリだとして、ロンドン行きを説得。65年2月ウォーカーズのメンバーとなり、スコット、ジョンと共にロンドンに拠点を移す。その後ウォーカーズは大ヒットを放ち人気グループとなる。スタンデルズ~ブライアン・ジョーンズの流れから想像できるのはゲイリーは生粋のガレージサイケ好きではないか?ということだ。その証拠に1966年の2枚のソロシングル『夜明けに恋はない You Don't Love Me b/w ゲット・イット・ライト Get It Right』『トゥインキ―・リー Twinkie-Lee b/w すてきなあの娘 She Makes Me Feel Better』はどちらもガレージ感覚たっぷりの粗削りなサイケポップ。シングル曲はUK サイケ発掘ものコンピレーションに収録されている。

You Don’t Love Me


1968年1月ウォーカー・ブラザーズとして2度目の来日の際、日本のGS、ザ・カーナビーツと共にレコーディングしたのが『恋の朝焼け Cutie Morning Moon b/w ハロー・ゲイリー Hello Gary』。スコット・ウォーカーが作詞を担当、プロデューサーとしてレコーディングに立会った。ファズギターとコーラスが印象的なカーナビーツの演奏がメイド・イン・ロンドンに聴こえる本格的サイケポップ。B面はカーナビーツのカラオケに乗せてゲイリーがラリッタように「Hello How Are You?ミナサン コニチワ」と語り掛ける、ダニエル・ジョンストンもビックリのアシッド・ソング。

Cutie Morning Moon


ウォーカー・ブラザーズは実質的に67年5月に解散しており、ゲイリー・ウォーカーは次の活動のためにレインというバンドを結成した。メンバーは ゲイリー・ウォーカー(ds,vo)、ジョーイ・モランド Joey Molland (g, vo)、ポール・クレイン Charles "Paul" Crane (vo, g)、ジョン・ローソン John Lawson (b)。1968年1月にシングル『スプーキー Spooky b/w いつまでも僕のそばに I Can't Stand To Lose You』をUKポリドールからリリース。2ndシングル『孤独な影 The View』、3rdシングル『マガジン・ウーマン Magazine Woman』、さらに1969年1月リリースの唯一のアルバム『アルバム No.1 Album No.1』は日本のみのリリースだった。68年7月にレインは来日し、ザ・カーナビーツを前座に日本ツアーを行い人気を博したというから、日本のレコード会社の要望でアルバムが制作されたのかもしれない。ロンドンの霧に七色の閃光が光るようなドラム&ベースのビートとファズギターで幕を開けるアルバムは、サージェント・ペパーズ症候群の感染拡大を露わにするとともに、ゲイリーがスタンデルズ以来追い求めてきたガレージサイケへの憧れが最大限に開花した夢のサウンドといえるだろう。

Gary Walker & the Rain - The Sun Shines


アルバムの後69年にUK Philipsからシングル『Come In You'll Get Pneumonia』をリリースしレインは解散。ポール・クレインはプロデューサーに、ジョン・ローソンはハニカムズの後継バンドLaceに加入、ジョーイ・モランドはバッドフィンガーのメンバーになる。ゲイリーは英国滞在許可期間が切れたため米国に帰国。75年に英国に戻りウォーカー・ブラザーズ再結成に参加、78年に再び解散。79年にイギリス人女性バーバラと結婚し、公の場から姿を消し、特殊な樹脂混ぜた砂を使って城や船など様々な模型を作る事業を始めた。2005年に27年ぶりにステージに登場しジョン・ウォーカーと共演したという。2007年にジョンと共にラジオ出演した動画を見つけた。しかしジョン・ウォーカーは2011年5月7日に死去、スコット・ウォーカーも2019年3月22日に没したため、現在79歳のゲイリーがウォーカー・ブラザーズの最後の生き残りとなってしまった。願わくば長生きしてほしいものである。

Gary & John Walker with Mike Quinn Part 1


「サイケデリックは精神の在り方である。サウンドエフェクトやファッションやアートワークの見せかけのギミックに騙されるな」と90年代のサイケマニアは悟ったように語ったものだが、サイケはもっと自由で多様性があることが明らかになった2021年現在、ゲイリー・ウォーカー&ザ・レインのような埋もれた宝石に現を忘れて耽溺するのが、21世紀のサイケデリアの正しい在り方のひとつであることを声を大にして宣言したい。

アイドルは
ガレージサイケの
夢を見る

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【7インチ・シングルの危険な歓び】ザ・クロマニヨンズ/坂本慎太郎/爆裂女子/FLASHLIGHTS/ザ・ハイマーツ/一色萌

2020年12月15日 01時56分07秒 | ロッケンロール万歳!


無人島に持っていくレコードを10枚選べと言われたら、以前はできるだけ曲がたくさん入ったLPレコードで2枚組でもいい?などと欲張っていたが、最近は本当に好きな曲が1曲あればいいと思うようになった。実生活では不可能な断捨離を夢の中でやってしまおうという潜在的な願望の現れかもしれないし、1曲3分に命を賭ける短距離走者の孤独を味わいたいからかもしれない。しかし実際にオーディオでアルバム(LP)を聴くときとシングル盤を聴くときでは、聴き手の心構えが異なることをご存じだろうか。実際に30センチのLPの外周から1センチは約5分、17センチのシングル盤は外周から1センチは2分である。人間の時間感覚は相対的にできているから、1分間に33回転のLPと1分間に45回転のシングルでは認識する時間の長さが違ってくる。回転の遅いLPを聴くときは時間的余裕を感じて、ジャケットのクレジットや解説書を読んだり、読書やパソコンをしながらの”ながら聴き”をすることが多い。しかし回転が速いシングルを聴くときは余計なことをする余裕はない。音を聴き洩らさないように神経を集中させるか、音楽に心と身体を任せてその瞬間を楽しむかのどちらかだ。『集中力積算関数による相対性聴覚理論(Relativity Hearing Theory by Concentration Integration Function)』の研究によれば、12インチのLPを1枚聴くのと、7インチのシングル盤を6枚聴くのとでは、どちらも現実の経過時間は変わらないが、認知上ではLPの方が時間の進み方が約2.5倍遅い一方で、脳に伝えられる刺激はシングル盤の方が2.5倍多いという実験結果が報告されている。また実験用マウスを使って、LPだけ聴かせて育てたグループと、シングル盤だけ聴かせて育てたグループの平均寿命を比較した実験では、後者(シングル・グループ)のほうが平均寿命が倍以上長いという驚きの結果が確認されたという。その一方で、シングル・グループの実験を担当した研究員は、3分ごとにレコード盤を裏返さなくてはならず、休憩はもちろん睡眠すら取れない激務のために早死にする、というマウスとは真逆の現象も確認された。これは何を意味するのか?少なくともいえることは、シングル盤を聴くことは、濃厚な刺激と感動を味わえる一方で、命を危険に晒す覚悟が必要だという事実である。さあ、命知らずの人生の挑戦者たちよ、いざ7インチ・シングルを聴くがよい!

●ザ・クロマニヨンズ『暴動チャイル』


ザ・クロマニヨンズの19作目のシングル。14歳の時にレコードでロックンロールに目覚めた時の衝動をそのまま保って44年後も暴走し続けるヒロトとマーシーを、筆者は勝手に戦友と呼んでシンパシーを感じている。高速回転するドーナッツ盤に針を落とした瞬間にオレの中のチャイルドの暴動がはじまる。

ザ・クロマニヨンス゛「暴動チャイル(BO CHILE)」60fps



●坂本慎太郎『好きっていう気持ち』


脱力サイケシンガーソングライター坂本慎太郎の新作シングル盤2作連続リリース。この人の作品はいつも知らないうちにリリースされていて、そのたびにレコード屋を探し回る羽目になるが、今回は高円寺Los Apson?で遭遇。何気なく生まれてきた感じが引きこもり気味の気分にピッタリ。昨年出たアメリカのサイケシンガーPeter Iversの未発表アルバムによく似ている。

The Feeling Of Love / Shintaro Sakamoto (Official Audio)


『ツバメの季節に』


By Swallow Season / Shintaro Sakamoto (Official Audio)



●FLASHLIGHTS『NEW ROMAN』


姫カットの女性ベーシストYokoちゃんにつられてアルバムを購入して即気に入った東京の4人組。たいていパンク・コーナーに置いてあるが、パンクと言うより哀愁パワーポップって感じで泣きのメロディとクールで甘いヴォーカルが胸に迫る。ネオン輝く街を独り車で走るような疾走感とノスタルジアが同居したサウンドは、ハマると泣けるデトックス効果がある。にしてもYokoちゃんのコーラスには萌える。




●ザ・ハイマーツ『恋はもう・・・・』


オレの中のガールズガレージ萌えを10年ぶりに復活させたGSガールズバンド、ザ・ハイマーツの3枚目のシングル盤レッドビニール。野良猫ロックシリーズを思わせる映画のジャケも最高(本当の映画かどうかは分からない)。キャッチ―なGSナンバーを聴くと、トリプルピックアップの白いSGで思い切りファズで踏むSuzuちゃんの長いおみ足を思い出す。最近ドラマーが抜けてしまったようだが、来年早々新体制のライヴを観れるだろう。

Rockin'Jelly Bean作品スケバンベイベー 主題歌「恋はもう...」by The Highmarts ショートバージョン



●一色萌『Hammer & Bike b/w Taxi by Moe feat. Deaf School』


プログレッシヴアイドルグループ、キスエクことXOXO EXTREMEの萌氏こと一色萌のソロ・デビュー・シングル。渋系ロックおやじ殺しのDeaf Schoolの日本語カバーと云う発想は、オレにとってはヘビメタとアイドルを融合したBABYMETAL以上の衝撃度。萌氏のアイドル味を封印したシティポップ・スタイルのヴォーカルがこれまた萌える。本家のキスエクも新体制になってから観れてないが、自分へのクリスマス&誕生日プレゼントとしてチケットを押さえてある。

Deaf School - Taxi



●爆裂女子『Against The Drain w/The Starbems 』


オレのいち推しアイドルグループ爆裂女子のミニアルバム『Story』収録の3曲がすべてシングル盤でリリースされた。でんぱ組.incはメンバー別シングル盤など多数のレコードをリリースしているし、ネクロ魔ことNECRONOMIDOLもほとんどのアルバムがLPレコードで出している。また第4の推しグループのキスエクもLPやシングル盤を出し始めたし、オレが推すアイドルが皆レコードを出してくれる状況は、自分の推し方が正しいことの証明というほかない。爆裂女子の3部作はB面が楽曲提供アーティストのオリジナル・ヴァージョンというありそうでなかった素晴らしいカップリング。次はアルバムをレコードでリリースしてほしいな。

爆裂女子-BURST GIRL-/Against The Drain【OFFICIAL MUSIC VIDEO】


『スリルジャンキー w/DJ後藤まりこ 』


爆裂女子-BURST GIRL-/ スリルジャンキー【OFFICIAL MUSIC VIDEO】


『Miracle Story w/Rinda & Marya』


爆裂女子-BURST GIRL-/ miracle story【OFFICIAL MUSIC VIDEO】


7インチ
17センチの
メンタル革命

▼40年近く前のシングル盤。7インチの世界は今とまったく違いはないね。


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【ROCK配信ライヴウィーク日誌】ヒカシュー/G.I.S.M./THE HARDY ROCKS/ザ・クロマニヨンズ+SAVE THE GOK!プロジェクト

2020年12月12日 01時01分25秒 | ロッケンロール万歳!

photo by 船木和倖

時短要請が出たからという訳ではないが、12月に入ってからはほとんど夜間外出はしていない。年末で仕事が溜まっていることもあるし、何かと物入りで経済的に余裕がない事もある。そんな師走らしい夜のお楽しみはもっぱらPCモニターで観る配信ライヴだった。特にこの一週間は筆者の好みにピッタリのロックバンドの配信ライヴが連続し、一足早いクリスマスプレゼントに自室で独り即興ロックやハードコアパンクや激烈ロックカヴァーやロックンロールに耽溺して寒い冬の夜を過ごした。


12月6日(日)
GOK SOUNDドネーションライブ -DAY1-
出演者:ヒカシュー / Phew / 坂田明


数々の名作・名レコーディングを生んできた吉祥寺の音楽スタジオGOK SOUND救済プロジェクト「SAVE THEGOK!」のひとつドネーションライヴ初日。いずれも30年以上音楽シーンの個性派として活躍する3組はまさに俺得のラインナップ。とりわけ12/23に24枚目のニュー・アルバム『なりやまず』のリリースを控えたヒカシューのライヴは、スタジオの四方にメンバーを配したサラウンドスタイルの演奏。バイノーラル録音で、ヘッドフォンで聴くと臨場感が倍増するこだわりのレコーディングは流石GOK SOUND。そのせいか、いつものライヴより自由度が高いインプロヴィゼーションの応酬で、ポップとアヴァンギャルドの境界を曖昧にするヒカシューならではの別世界ロックを堪能した。



12月8日(火)
BEAST ARTS & DOMMUNE Presents
G.I.S.M 「EXTREAM GUERRILLA LIVE STREAMING」


1983年のデビューアルバム『DETESTATION』正式リイシュー記念ゲリラ配信ライヴ。DOMMUNEらしい企画である。画面越しとはいえ初めて生で観る横山SAKIVIの堂々とした雄姿は、40年近く世界のハードコア/メタルファンから信奉されてきたバンドならではの年輪が刻まれている。バンドメンバーもハードコア界の実力派揃いで重量級のスピードパンチを繰り出した。6曲で延べ20分強、一言も発さずあっさりと去る潔さが美しい。



12月10日(木)
GOK SOUNDドネーションライブ -DAY3-
出演者:THE HARDY ROCKS / 水中、それは苦しい / 林栄一Gatos MEETING


SAVE THE GOK!ドネーションライヴ三日目。林栄一のファンキーなジャズロック、水中、それは苦しいの言葉の弾丸ハードコアに続き、いよいよ灰野敬二率いるTHE HARDY ROCKSが登場。いきなりThe Rolling Stones『(I Can't Get No) Satisfaction』、The Who『My Generation』の連発という俺得なセトリ。狂暴なガレージロック・サウンドが素晴らしい。アナログ機材にこだわるGOK SOUNDだからこそ可能な録音だ。特にThe Doors『End Of The Night』のリヴァーブたっぷりのサイケデリックな音処理は完全にマインド・トリップさせる。この音響は生ライヴでは再現が難しいかもしれない。実はこのライヴ映像は、11月27日高円寺ShowBoatでのワンマンライヴ以前に収録されたものである。
Set List
1. (I Can’t Get No) Satisfaction / The Rolling Stones
2. My Generation / The Who
3. 骨まで愛して Down To The Bones / 城卓矢
4. End Of The Night / The Doors
5. A Change Is Gonna Come / Sam Cooke
6. 男の怒りをぶちまけろ / 赤木圭一郎
7. Born Under A Bad Sign / Albert King
8. 何故に二人はここに The Two Of Us / Kとブルンネン



12月11日(金)
ザ・クロマニヨンズ
「MUD SHAKES 全曲配信ライブ」


12/2リリースの14枚目の最新アルバム『MUD SHAKES』リリース記念で、クロマニヨンズ初の配信ライヴが実現。無観客のロックンロールはどうなるのか、と興味津々だったが、カメラの向こうにいる目に見えない観客へ向かって音を放つ4人のスタイルは何の違いもなかった。なんと配信ライヴの音もレコードと同じモノラルだった。塊になって目の前・耳の奥に突き刺さるロックンロールは、ライヴ会場で聴くよりもずっとダイレクトに体の芯に響き渡った。今週観た配信ライヴの中で最も軽妙なMCを聴かせたが、音のパワーは誰にも負けやしない。この勢いで生き続けたいものである。


配信は
生とは違う
音の歓び

▼12月後半の配信対談も楽しみだ。
SAVE THE GOK!プロジェクト
近藤 祥昭×ミュージシャン対談

GOK SOUND近藤とミュージシャンとのアーカイブ付き有料生配信!

スタジオで収録された作品についてのエピソードからライブの裏話まで!?
豪華な出演者をお招きしての超貴重な対談です。
※出演者の都合により、生配信ではない場合がございます。

12/16:近藤祥昭×ミュージシャン対談 - DAY1 - ゲスト:西寺郷太
https://twitcasting.tv/goksound/shopcart/37795

12/18:近藤祥昭×ミュージシャン対談 - DAY2 - ゲスト:灰野敬二
https://twitcasting.tv/goksound/shopcart/37797

12/20:近藤祥昭×ミュージシャン対談-DAY3-ゲスト:黒色すみれ
https://twitcasting.tv/goksound/shopcart/37799

12/23:近藤祥昭×ミュージシャン対談DAY4 ゲスト:巻上公一/坂出雅海
https://twitcasting.tv/goksound/shopcart/37803

12/25:近藤祥昭×ミュージシャン対談 -DAY5- ゲスト:平沢進
https://twitcasting.tv/goksound/shopcart/37805
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【私のポストパンク禁断症状#10】G.I.S.M.『DETESTATION』/HUMAN GAS『Super Violence Hardcore 1984-1989』~ハードコアパンクの美しさ

2020年12月10日 02時04分23秒 | ロッケンロール万歳!


ハードコアパンクという言葉が使われ始めたのは1981年頃からだと記憶している。77年にクラッシュやセックス・ピストルズを聴いてパンクロックに目覚めた筆者は、78年初頭にピストルズが解散すると、ノートに「パンクは死んだ」と殴り書きしてレジデンツやクロームやポップ・グループやグラクソ・ベイビーズやキャバレー・ヴォルテールといったオタネイティヴの非ロック的な音楽表現を好むようになった。ロック方面では、性急なビートのロックンロールやハードパンクやハードコアパンクの肉体性が鬱陶しくなり、耽美なネオサイケや退廃的なポジティヴパンクの精神性に魅力を感じた。特にハードコアパンクのライヴでよく見られた集団ヒステリーのような暴動は、根暗な文学青年に憧れる筆者にとっては全く共通点を見いだせなかった。他人に暴力を振るう消毒GIGの暴虐よりも、自らの肉体を切り刻む自殺未遂GIGの自虐の方が怖かったにしろ遥かに共感できた。

その頃『宝島』や『DOLL』といった雑誌で読んでハードコアパンクのライヴの過激さは知っていたが、実際にその模様を目の当たりにしたのは1982年5月に東京大学五月祭で開催された「東大赤門オールナイトGIG」だった。とはいってもライヴを観たわけではなく、その翌日に窓ガラスがすべて割られ、消火器の泡塗れになった学生ホールを見ただけだ。非常階段の放尿ライヴや財団呆人じゃがたらの流血ライヴの他にも、他の学園祭のパンク系ライヴで発煙筒や消火器が撒かれて騒動になった話も聞いていたので、その時はまたパンクスが暴れたなと思ってあまり驚かなかった。このライヴを企画した学生は「壊した器材は弁償はしたが、責任問題はお咎めなしだった」と言うが、令和の時代に大学構内でこんな破壊行為が行われたら、退学問題や警察沙汰になるに違いない。学生運動はとっくに下火になっていたが過激派のセクト抗争が時折話題になった昭和末期ならではのハプニングだと言える。
百鬼夜行の回想録~80'sインディーズ特集 第3回「パンク/ハードコア編」

しかし40年近くの年月が過ぎた現在、ノスタルジーを排除したうえで筆者が共感できる音楽は、精神を蝕む暗黒系抒情派ロックではなく、アナーキー&ヴァイオレンスを旗印にストレートなビートを叩きつけるハードコアパンクに傾きつつある。パワーとスピードだけの潔さこそ、人生の3分の2を経過し下り坂に差し掛かったた心と身体を回復させるワクチンなのかもしれない。

G.I.S.M.『DETESTATION』(2020 USA / Relapse Records ‎– RR74661)


上記のオールナイトGIGにも出演したGISMこそ、日本ハードコア界で最も恐れられるバンドと呼ばれている。盤魔殿関係者にもGISMと横山SAKAVIに近づいたら危険という者もいる。しかし海賊盤を売ったレコード屋に謝罪文を書かせる行為などは、正当な権利を主張する立場で考えれば妥当なことだ。無暗矢鱈に暴力を振るうのではなく、自らの表現手段として戦略としてAnarchy & Violenceを謳っていることは明らかである。

それはともかく1983年に雑誌DOLLのDogmaレコードから出た1stアルバムが正式リイシューされたことが大きな話題になっている。45rpmで8曲。当時台頭してきたヘヴィメタル色もあるが、根底に漲るアンダーグラウンドハードコアパンク魂が感電する勢いで駆け抜ける精錬潔白な一枚である。昨日DOMMUNEで配信された無観客ゲリラライヴストリーミングは伝説云々を抜きにしてメガトン級の潔さが伝わる心地よい体験だった。

G.I.S.M. 新宿LOFT 1982年



HUMAN GAS『Super Violence Hardcore 1984-1989』(2020 Italy / F.O.A.D. Records ‎– F.O.A.D. 210)


84年に北海道本別の中学生4人が結成したHUMAN GASのBOXSET。実を言うと某レコードショップのメールマガジンで見るまでは存在すら知らなかったが、バンド名と「超暴力的ハードコア」というタイトルにヤバさを感じて即予約して限定スプラッターヴァイナルを入手した。当時リリースしたスプリット7インチと3本のデモ音源カセット、帯広パンクのコンピカセットに加えメンバー所有の未発表ライヴやセッション音源を2枚のLPと1枚のCDに収録、さらに2本のライヴセットをDVDに収録し、写真満載のオールカラーブックレットが付いた集大成。手にしたときの重みに比例した内容の濃さにはハードコアパンクファンじゃなくても驚愕するに違いない。

パッケージ以上に驚くのは演奏の熱さと暴走するエネルギー(語彙)。ハードコアバンドは総じて演奏が上手いと思っていたが、10代半ばの彼らのタイトでシャープな(語彙)パンクロックには、無駄なものをすべて削ぎ落したジャコメッティの彫像と同じように剥き出しの人間の魂を感じる。「尊い」という言葉はこの音のためにあるのではなかろうか。

HUMAN GAS - Super Violence Hardcore 1984-1989 | BOXSET


Human Gas - Poison (Live at Bessie Hall 87)


人間の
殻を剥ぎ取る
ハードコア

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