昨年頃よりサエキけんぞうさん、戸川純ちゃん、野宮真貴嬢、ヒカシューなどなど東京ニューウェイヴ/テクノポップのレジェンドとのツーマンを繰り広げてきたアーバンギャルド、遂にMr.ナゴム=ケラ氏との対バンが実現。
以前も書いたがアーバンギャル&ギャルソンの若人達は幸福である。アーバンのライヴに通うことで日本のロック界の伝説のアーティストのステージを体験することが出来るのだから。80年代に青春時代を過ごした世代にとっても当時の憧れのミュージシャンが30年後の健在ぶりを観れるのはたいへん嬉しい。特にケラ氏はインディーズ御三家のひとつ有頂天のリーダー兼ナゴムレコードの主宰者でもあり、80年代ニューウェイヴを象徴する存在。現在はケラリーノ・サンドロヴィッチとして劇団ナイロン100℃を主宰する演劇界の重鎮である。ケラ&ザ・シンセサイザーズとテン世代のナゴム系とも呼ばれるアーバンギャルドとの共演は必然であり、20余年の時を経た歴史的邂逅でもある。
まだ明るい時間帯、WWWのある渋谷スペイン坂は水玉とセーラー服の少女達が列をなし異様な光景だったという。ニュー・シングル「さよならサブカルチャー」をリリースしてから初のライヴなのでアーバンギャル&ギャルソン待望の日なのだ。会場内ホール前方はアーバンフラッグを手にした若者で占められており、ケラシンセ・ファンは中段に陣取っている模様。WWWのライヴでは大抵最前列なので、この日は最後列から観戦。傾斜がありとても観やすいしPA席の真横なので音も最高。
珍しく幕の下りたステージからは時折サウンドチェックの音が聴こえるが、アーバンギャルたちはお構いなしにお喋りに花を咲かす。予定時刻15分押しで入場SEが鳴り幕が開く。鍵山喬一氏(ds)、瀬々信氏(g)、谷地村啓氏(key)、松永天馬氏(vo)、 浜崎容子嬢(vo)の順で登場。大歓声と旗の嵐。よこたんは赤いミニのワンピース。「かわい~」というため息が客席から漏れる。新曲「さよならサブカルチャー」からスタート。ファンはもう熟知しているので旗振りも乱れが無い。天馬氏はステージに転がって歌う。お馴染みコール&レスポンスで一斉に声を上げる少女達にケラシンセ・ファンは唖然としている。アーバンギャルがかつてのナゴムギャルに似ていること、雑誌の編集者/インタビューアーから「昔ナゴギャでした」と告白され驚くことが多いこと、谷地村氏が職場で「なごみ系」と言われたこと、などナゴム話のMC。"さよなら"と歌いつつも間違いなく現代サブカルチャーの象徴であるアーバンのルーツが見えた。
よこたんの愛ネコ、ソレイユが原宿のファッション・ブランドのキャラクターに起用され、ラフォーレ原宿でイベントをすること(詳細は10/9公表)を発表すると"原宿カワイイ"に対抗して"原宿キモイイ"で行こうと天馬氏。WWWを笑笑笑と呼んだり、きゃりーぱみゅぱみゅや前田敦子ネタなど天馬氏のブラックユーモアが冴え渡る。大盛り上がり大会で1時間のステージは終了。
▼セックスなう photo by 松永天馬
▼2009年のライヴ動画
<Set List>
1.さよならサブカルチャー
2.スカート革命
3.子どもの恋愛
4.ベビーブーム
5.コスプレイヤー
6.コミック雑誌なんかILLかい
7.なんとなく、カタルシス
8.生まれてみたい
9.ときめきに死す
10.堕天使ポップ
休憩中に民族大移動があるかと思ったらそれほどでもなく、アーバンギャルもケラシンセを待ち望んでいる様子。ケラ氏を生で観るのは20年ぶり。テレビや雑誌で顔を観て80年代当時の細面の面影なく太ってしまったのでどんな演奏なのか気になる。
15分程度の短いセットチェンジでケラ氏とギターの三浦俊一氏のふたりが登場、アコギ弾き語りでスタート。ケラ氏のヴォーカルは昔と変わらず歌詞がハッキリした明快な歌声。2曲目から福間創氏(syn)、RIU氏(b)、Reiko嬢(ds)が登場。有頂天時代そのままの幾何学模様ユニフォームが嬉しい。曲も80年代を思わせるピコピコシンセのタテノリビートで身体が否応なく反応する。隣でアーバンを大人しく観ていた女性がピョンピョン飛び跳ねて大ノリ。この日が40代最後のライヴというケラ氏のMCが抜群に面白い。アーバンフラッグを手に「これいくらで売ってるの?」と聞き、500円と知ると「ボロ儲けじゃん。俺らも作ろうか」、前列のセーラー服のアーバンギャルに「15歳くらいでしょ?こんなとこ来てていいの」、ムーンライダースの岡田徹さんの新作プロモーションでに天馬節が炸裂したとの話に「"節"が炸裂するのは10年早い」、アーバンが「もっと腹立つバンドかと思ったらちゃんとしたバンドだった」と福間氏が語ったこと、など話が尽きない。それでもいつもに比べて今日は話さないと言う。普通のライヴだと演奏時間の半分が話に終始するらしい。まるでさだまさしか武田鉄矢か綾小路きみまろ(きみまろさんはしゃべりの人だが)である。
全曲覚えやすいメロディ/歌詞の根アカ・ロックなので初めて聴くアーバンギャルも手を振り上げて合唱する。個人的には空手バカボンの「労働者M」をやってくれたのが嬉しかった。本編が終わりアンコールの後、二度目のアンコールでよこたんがゲストで登場。元ナゴギャのヘアメイクさんによるナゴムギャル・ファッション。「30年前だったらデモテープ送ってねって絶対声かけてたな。でも当時のナゴギャはもっと暗かった。自宅前でいきなり手首切った子もいたし」とケラ氏。そんな話が克明に綴られた本が2000年に発行された平田順子著「ナゴムの話ートンガッチャッタ奴らへの宣戦布告 」なのだが、来年ナゴム30周年記念で新装版が出版される予定とのこと。またケラ氏は愛ネコ「Gommi」の写真集を奥さんの緒川たまきさんと共同で自費出版しており、ネコ繋がりでよこたんと話が弾む。2曲目には天馬氏も加わってマニアックなナゴムトークに。その殆どが理解できるだけに楽しめたイベントだった。
<Set List>
1.夜明けの歌
2.ピノキヲ、サヨナラのセオリー
3.BODY and SONG
4.フィニッシュ・ソング
5.贅沢な骨
6.TOO LATE JONEE
7.Cace of insanity
8.労働者M
9.永遠のつづき
10.ハッピー/アンラッキー
-Enocore 1-
11.ニセモノ
12.神様とその他の変種
-Encore 2-
13.FINE (with浜崎容子)
14.オードリーヘプバーン泥棒 (with 松永天馬&浜崎容子)
▼会場に飾られた唯一の祝い花。ケラ氏によると「脚本早くしろ」という意味だとのこと。
ナゴムギャル
アーバンギャルの
お母さん
アーバンギャルドのニュー・アルバム「ガイガーカウンターカルチャー」は10/24リリース。