A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【Disc Review】望月治孝 『PAS (パ)』~「孤」の存在と「個」の否在の隙間に鳴る音界

2014年07月31日 01時13分40秒 | 素晴らしき変態音楽


望月治孝 『PAS (パ)』

2014:12” LP レコード番号なし
¥3,000 (税抜)

望月治孝 Harutaka Mochizuki Alto Saxophone Solo

Side A. 静岡 あざれあ音楽室 2013年1月30日
Side B. 静岡 あざれあ音楽室 2013年2月20日

Recorded on Jan. 30 & Feb. 20, 2013 at AZAREA MUSIC ROOM Shizuoka, Japan
Line Notes: Written by Manabu Takayama
Photographed by Yasuhiro Ohara
(Thanks to Munemori Sato, Koenji Bar TEN)
Produced, Designed by Harutaka Mochizuki



静岡県は、温暖な気候と共に、東京・名古屋・大阪から日帰りできる絶妙な立地により、古今東西の文化の交差地点として、独特の音楽的風土がある。特に地下音楽やノイズ/アヴァンギャルド系のユニークなアーティストが複数存在し、個性的な音楽シーンを育んでいるに違いない。なぜ断言できないかというと、筆者が未だ静岡のライヴ現場を体験したことはなく、もっぱら録音・録画物や動画と、時折行われる静岡県出身のアーティストの東京公演から想像するしかないからである。

昨年6月、轟音ギターで知られる浜松のロックバンド、UP-TIGHTのフロントマン青木智幸が上京し、荻窪のライヴハウスに出演した。UP-TIGHTの屈強且つ抒情的なサウンドは、10年来筆者のお気に入りで、東京では年数回しか観られないので、どんなチャンスも見逃がさないようにしている。青木のソロ演奏は以前に観たことがあったが、この日は初めて観るデュオ演奏だった。ギターをストロークして情念的な歌を唄う青木から数メートル離れた暗い照明の中に、サックス奏者が佇み、地面を睨みつけるように身を低く構えたまま殆ど動かず、不穏なオーラを放っていた。やがて絞り出すように細く甲高い音色が流れ出す。フリーキーな激しさではなく、暗闇が軋むように静謐で残忍なほど冷たいトーンが、深いリバーブに響く歌とギターの轟音の狭間から、鋭利なナイフのようにくっきりと浮かび上がった。それは単なる共演・セッションとは次元が異なる、「個」と「個」がお互いを意識しつつも敢えて無視を貫く、冷徹な意志に満ちた邂逅だった。

サックス奏者の名は望月治孝。静岡県に多い望月姓の、今年37歳になる青年である。公式バイオによれば、1977年、静岡市生まれ。昭和音楽大学短期大学部卒。1999年頃よりアルトサックスによるソロ演奏をはじめた。荻窪グッドマン、武蔵小金井アートランドなどを拠点に演奏活動し、サックス以外にピアノやギターも弾き、歌を唄うこともあった。2004年にリリースしたCD『Solo Document 2004』が2005年度 英WIRE誌のジャズ/即興部門ベストディスク15枚に選定され、海外で注目され、スコットランドのライヴイベントに出演したこともある。これまでに数枚のCD、CD-R、7"EP、DVDをリリース。

当時は東京をベースに活動していたが、2007年に住処を実家のある静岡に移して以来、生まれ育った故郷で演奏を続けている。当然演奏の場は東京に比べ圧倒的に少ない。そんな環境で、望月は既存のライヴハウスやホールだけではなく、公共施設の音楽室を自らの表現の場と定め、ソロ演奏会を定期的に自主開催してきた。かろうじてピアノはあるが、PAや照明は自前で、パイプ椅子を並べただけの、質素というより空虚な空間と言えるだろう。しかし視点を変えれば、決められた使用時間の制限以外は何の規制もない自由な場である。ほんの数人の観客の前で、思う存分自分らしい表現行為を追求出来る場所。「あざれあ音楽室」での定例イベントは、望月治孝の魂の開示の場であり、修練の場でもある。

限定100枚のアナログLPでリリースされた本作には、昨年1月と2月のあざれあ音楽室に於けるアルト・サックス・ソロ演奏を収録。1点1点手作業でセットしたに違いない、丁寧な作りのジャケットの表紙の壮絶なポートレイトが強烈に迫り、1年前に暗い地下のライヴハウスで感じたゾッとするような存在感を思い出す。収録された演奏を一文字で表すとすれば「孤」。「孤独」にも「孤立」にも「孤高」にもなりうる未知の可能性を含んだ不定形な存在。何かが潜んでいるような長い無音の中から、リードミスにも聴こえるハイピッチの悲鳴が絞り出される。ボディの振動とキイを押さえる音とマウスピースから漏れる息の音が重なり合う。シャープな音だが、立ち込める闇は深く、突き破ることはない。無音の暗黒に争う独りきりの魂。もしかしたら目に見えない霊魂の悪戯が音楽のように聴こえるだけなのかもしれない。想像力を逞しくすれば、無限のイメージが喚起される。しかし、この演奏を目の前で観たとしたら、一体何を感じることになるのか、それだけは想像できない。

「PAS(パ)」とはフランス語の否定副詞で、ne~pasの形で「~ない」という否定文になる。語源は「一歩」という意味で、そこから「ほんの少し」という意味に派生したという。本来単独で使用されることはなかったが、現代の話し言葉では「pas」だけで否定を表すこともあるらしい。また名詞の「pas」はダンスのステップの意味である。否定としての「pas」、一歩のステップとしての「pas」、望月がどちらの意味を含ませたのか、もしくはどちらも見当違いの邪推なのかはわからないが、無音の中に限りない生命の迸りを想像させるこの演奏に、相応しいタイトルだと言って良かろう。

深い暗闇、土色の肖像写真、未完成の孤(独?立?高?)。手に入れたものだけで満足するべきか、恐いもの見たさで、この目でしかと確かめるべきか。正直言って、未だに決心がつかずに居る。




無限大
存在するのか
しないのか


Augusut 2014 release
青木智幸/望月治孝  
Tomoyuki Aoki Harutaka Mochizuki
Title"S/T"
CD - Ltd.200 copies



LINER NOTES : Hakamata Hiroyuki (cinema variete)
PHOTOGRAPHY : EMA
PRICE : JPY 2,000
RESERVATION : fuzainoisu@yahoo.co.jp

1. 交わらぬ二重
2. 私信-哀歌
3. 断章
4. 断章
5. 長いお別れ
6. 跳躍へのレッスン I
7. 跳躍へのレッスン II
8. 跳躍へのレッスン III
9. なぜぼくの手が



<Tomoyuki Aoki Harutaka Mochizuki Summer Tour>
8月11日 月曜 - 岡山 ペパーランド with MONARCH / BIRUSHANAH / BOMB KETCH / THE NOUP / ushayuga etc...
8月12日 火曜 - 難波 ベアーズ with NASCA CAR(1)=中屋浩市solo / andmo’
8月13日 水曜 - 京都 ウーララ with cherry5 / AUX / 東賢次郎
8月14日 木曜 - 浜松 ズート ホーン ロロ
8月16日 土曜 - 高円寺 bar 天 with 穂高亜希子 / あみのめ / デーモンズ
8月17日 日曜 - 新宿 ソウルキッチン with ロス・ドロンコス / ツージーズ 

問い合わせ:
fuzainoisu@yahoo.co.jp
http://www.geocities.jp/fuzainoisu/

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【ネタバレ注意】きゃりーぱみゅぱみゅ@戸田市文化会館 2014.7.27(sun)

2014年07月30日 00時15分15秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


きゃりーぱみゅぱみゅ
「ピカピカふぁんたじんツアー きゃりーぱみゅぱみゅの雲の上のHEAVEN’S DOOR」




昨年秋の「なんだこれくしょんツアー~きゃりーぱみゅぱみゅの宇宙シアター』に続いて2度目のホールツアーがスタート。地方都市の1000~2000人キャパの会場での公演は、最近握手会が「おかあさんといっしょ」状態だというきゃりーの大きな購買層であるちびっ子/ファミリー層も来場し易く、老若男女あまねく集う気安さが楽しい。ガチなコスプレよりも、手作り感いっぱいの微笑ましい衣装は、デビュー当時は奇々怪々とされたきゃりースタイルが、徐々に市民権を得つつある兆しだろうか。それはテーマパークで鼠の耳を被ったり、ハロウィーンに死人メイクで電車に乗ったりするのと同様の解放感がある。「私のコンサートはテーマパーク。特別な世界を楽しんで下さい!」と煽るきゃりーは、トンネル天国ならぬカワイイ地獄行き列車の女車掌の如し。



物語仕立てのステージで馬と梟のゆるキャラに天国か地獄かの選択を迫られた挙げ句、時間を巻き戻す掟破りの魔法で第三の道を突き進むきゃりー。善悪二元論 [1] に傾きがちな昨今のアンビバレントな社会状勢を鋭く風刺し、3rdオルタナティヴソルージョンの可能性を示唆。黒でも白でもなければ灰色?または玉虫色?それともカフェオーレ?といった単純素朴な発想では勿論ない。彼女の死後の世界革命思想 [2] に賛同して天国の扉を開ける者は、果たして栄光の導きの光に迎えられるのか、はたまた地獄の業火に焼かれ粉塵に帰するのか、最後まで目を離すことは出来ない。



きゃりーぱみゅぱみゅ、『ポジティブな死後の世界』をコンセプトにホール・アリーナツアースタート!

そう考えると『ピカピカふぁんたじん』とは、人類をレベルアップし高次元へ導く啓示であると共に、雲の上から垂らしたクモの糸にしがみつく亡者にシリアス瞳で鉄槌を喰らわす無慈悲な三行半(みくだりはん)でもあることは明らかだ。「楽あれば苦あり」「仏の顔も三度まで」「一寸先は闇」「いい事ばかりはありゃしない」。永遠に仮想現実に生きることは出来ない、いつかはリアルな世界に足を踏み出さねばならない。夢眠がちな子供たちに向けた愛のメッセージは、老若男女全ての人類の不可避な宿命を描いた黙示録なのかもしれない。



きゃりー世界ツアー終え凱旋ステージ

10カ国を回った世界ツアーの凱旋ライヴだったこの日の夜、奇しくも秋葉原で開催されたもうひとつの凱旋ライヴ『Multiple Tap』が、混沌と轟音に満ちた日本を世界に発信する希望の光を提示した。対照的に、カワイイジャパンを世界にお届けする天使が、この国の未来に警鐘を鳴らしたことは、主客転倒、天地無用、上下反転、ポジとネガが入れ替わる現代日本カルチャーの縮図さながらのスペクタキュラーといえよう。ホールからアリーナへ日本全土を席巻する「KPP天国の扉ツアー」の不穏な動きに関しては、今後も折に触れてご報告して行く所存である。

▼きらきらキラー~死ね死ね(殺せ殺せ)団のテーマ




▼RING A BELL~闘いのベルを鳴らせ!



注釈
1. ゾロアスター教(ゾロアスターきょう、ペルシア語: دین زردشت‎ /Dîn-e Zardošt/、ドイツ語: die Lehre des Zoroaster/Zarathustra、英語: Zoroastrianism)。古代ペルシアを起源の地とする善悪二元論的な宗教。『アヴェスター』を根本経典とする。
2. 『死者の書』 (ししゃのしょ、独: Totenbuch) は、古代エジプトで冥福を祈り死者とともに埋葬された葬祭文書。パピルスなどに、主に絵とヒエログリフで、死者の霊魂が肉体を離れてから死後の楽園アアルに入るまでの過程・道しるべを描いた書。「日のもとに出現するための呪文」と呼ばれることもある。

世界革命戦争宣言
「カワイイ」対「カオス」
明日はどっちだ?

▼天国の扉を叩け、さらば救われん。



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Multiple Tap凱旋LIVE!!@秋葉原Club Goodman 2014.7.27(sun)

2014年07月29日 00時15分15秒 | 素晴らしき変態音楽


<Multipul Tap 凱旋LIVE!!>

非常階段/JOJO広重/JUNKO/美川俊治/河端一/ドラびでお/PAINJERK/中村としまる/毛利桂/秋山徹次/池田ケン/石川高/伊東篤宏/川口貴大/大城真/田中悠美子/若林美保/康勝栄

2014年2月22日(土)、23日(日) ロンドンのCafe OTOで行われ日本のエクストリーム・ミュージックの健在ぶりを見せつけた「Multipul Tap」が遂にホーム日本の地で行われる凱旋公演!
その噂を聞きつけ、あのJAPANのデヴィッドシルヴィアン氏まで会場に駆けつけたと言われる今年2月のロンドン公演。日本の現在のエクストリーム・ミュージックの健在っぷりを見せつけるには充分というか、これ以上ないというメンツでしたが、そのロンドン子を興奮の坩堝に誘った「Multipul Tap」が日本で体験出来るチャンスがやって来ました!ロンドン来襲時とほぼ同じメンツでの凱旋公演。是非見逃さないで下さい!!!!!



1. 美川俊治+PAINJERK

photo by takako_t

見逃した。観た人の話だと、ハーシュノイズの応酬では無く、立体的な電子音響セッションだったとのこと。

2. 田中悠美子

(写真の撮影・掲載については主催者の許可を得ています。以下同)

三味線を楽器というより、音源発生装置として使用。ファズ大正琴も。最後に「忘れてた」とバチで三味線演奏。

3. JUNKO+中村としまる+康勝栄


珍しくハーシュエレクトロな中村と物音ノイズギターの康、声が楽器のJUNKOはフード姿が謎めいていて良い。

4. 川口貴大+大城真+若林美保


無意味の集積物パフォーマーの川口+大城に、裸体パフォーマーの若林の組み合わせは、サイレン鳴り響く戒厳下のストリップティーズ。

5. JOJO広重+河端一


力技ギターノイズのハレーション。根っこにあるのがロックだから、音量合戦にならず、スカッと爽快な快眠快便演奏。

6. 伊東篤宏


徹頭徹尾ダンスビート。腐食テクノイズは初期EGよりもエスプレンドーなゲオメ虜。

7. 秋山徹次+池田ケン


ストイックのひと言。普通にギターを弾いているのにギターに聴こえない魔術。

8. 毛利桂


轟音爆撃女番長。耳栓をしても重低音には効果がないことが判明。

9. 石川高


この文脈で聴くと、和テイストでは無く極北オーロラ音響に聴こえた。

10. 非常階段+ドラびでお


極悪ノイズ演奏が、耳を眩ますレーザー光線で、とてもポップでキッチュに彩られた。追尾を飾るファンファーレ。



萌えキュンカオスを世界にお届け!~画期的イベント「Multiple Tap」ロンドン&東京にて開催決定!!!
Multiple Tap:非常階段/ドラびでお/伊東篤宏/PAINJERK etc.@神宮前 Galaxy 銀河系 2013.11.30(sat)
【進撃の混沌】ロンドンへ向けて全日本カオス軍、暁の出撃!~Multiple Tap@Cafe OTO, London

世界から
待ち望まれた
Multiple Tap

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【至福の地下音楽】時代からはみ出し続けるネームレス即興ロック~陰猟腐厭『初期作品集1980-1982』

2014年07月28日 01時22分27秒 | 素晴らしき変態音楽


5月に30年ぶりの新作『抱握』をリリースした地下音楽トリオ『陰猟腐厭 Inryo-fuen』の初期音源がリリースされた。1981年に横浜のロック喫茶夢音の自主レーベルの第1弾としてリリースされたソノシート『妥協せず』、7インチシングル『品品』(1982)、12"LP『陰猟腐厭』(1984)収録曲をマスターテープから高音質マスタリング。発売済みの全6曲収録のCD盤に加え、LP盤も7月30日にリリースされる。

33年前に購入した『妥協せず』は、過激派のアジ演説を収録しており、ビルからぶら下がる破壊工作員のような写真のジャケットと相俟って、80年代初頭の混沌としたイメージを象徴していた。一方でアジ演説にエフェクトをかけて電子ノイズに変形させた音響が偶然にしては出来過ぎのような気がした。その頃『HEAVEN』『宝島』『夜想』といったサブカル誌、ピナコテカレコードのフリーペーパー『アマルガム』などには、太平洋戦争のスローガン、過激派思想、猥褻写真、屍体愛やSM趣味など、ワザと悪趣味で差別的な言葉や写真を掲載し、センセーショナルなイメージを喚起する風潮があった。スネークマンショーのナンセンスギャグやゲルニカの大正浪漫主義も同じかもしれない。

しかし、陰猟腐厭『妥協せず』に嘘やポーズはない。レコーディングされた神奈川大学は、当時学生運動の最後の砦とされ、全学バリケード・ストライキや内ゲバがあったという。深夜のロックコンサートに酔っ払った運動家が乱入し、マイクを奪って演説を始めたハプニング。PAエンジニアが面白がって声にエフェクトをかける。それを無視してトニー・コンラッド&ファウストの曲を淡々と演奏するバンドの三者による時代を切り取ったドキュメンタリーである。当初はリリースするつもりは無かったが、溜まり場にしていたロック喫茶夢音のマスターの提案で、クラゲイルレコードから発売することに。『妥協せず』というタイトルは、たまたま目についた新聞記事から取り、ジャケット写真は元写真部の原田が撮った窓ふきの写真をコピー。その結果が、自動車をたたき壊す吉野大作&プロスティテュートのEP『Daisuck & Prostitute』のジャケと並び、「ヨコハマ・サイケデリック・ビート」と呼ばれた横浜のインディーロックシーンの印象を、過激に彩った。



EP『品品』、LP『陰猟腐厭』はいずれもタイトルも曲名も記載されていない。高校生の時にシュールレアリスム研究会で出会った3人は、音楽であれ文学であれアートであれ、何事も決め事なしの、瞬間瞬間の表現を形にしては、捨てるように発表してきた。即ち「シュールレアリスムの”自動記述”の音への転換」というコンセプトである。自動記述だから、表題のつけようがなく曲名なし。聴き手の自由な感性に任せようという意志の現れだったのかもしれない。『陰猟腐厭』というバンド名は、人から忌み嫌われる漢字を思いつくまま全て書き出し、その中でゴロのいい文字を並べて決めたと言う。そんな活動をしていたのだから、魑魅魍魎の80年代地下音楽シーンでもとりわけ異端の存在だった。まさに幻というしかない作品に30年経ってタイトルが付され、当時の意志をそのまま保ち続けるメンバー自身の手により完全盤として復活した。

ここに収められた30余年前に記録された演奏は、30余年後の時代の意志を先取りしたものであるばかりか、さらに30余年後に聴いた時、まったく同じ主旨で評する者がいるに違いない。『抱握』のライナーノーツで原田が書いたように、「即興演奏に於いて『数十年』といった時間差はあまり意味を持たない~中略~。音楽にはそもそも『右肩上がりの進化』など存在しない」のだから。


陰猟腐厭公式サイト
エムレコード公式サイト(試聴可)
【考察】即興演奏の意志と時間~橋本孝之『サウンド・ドロップ』/陰猟腐厭『抱握』

名前など
いらない
必要ない

不失者 (Fushitsusha)
名前を つけないで ほしい 名前を つけて しまうと 全てで なくなって しまうから



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【深層解析】でんぱ組.inc × 阿部薫『ちゅるりちゅるりら・オブ・スピード』♡

2014年07月26日 00時15分15秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


でんぱ組.inc × 阿部薫
ちゅるりら・オブ・スピード


いっしょに。

今最も熱いアイドルと伝説のジャズミュージシャン 
時代を超えた最速のカップヌードルCMタイアップ曲





誰よりも速くなりたい [1]」とは夭逝した前衛サックス奏者阿部薫の言葉だが、グリグリハングリーに勝ちに行くでんぱ組の想いも同じに違いない。言うまでもないことだが、ストップウォッチやスピードガンで計れる物理的な時速や秒速ではなく、表現能力の速さ(鋭さ)であり、心から溢れ出す強い気持ち・強い愛を伝えるスピードである。

他のアイドルが皆、戦慄しない太陽が輝く灼熱のビーチやプールサイドで、ビキニ姿で定番の夏うたで盛り上がる季節に、海や夏祭りや花火大会に行かなくても、非リア充でも楽しいもん!と反旗を翻す攻撃性は、「私たちは季節を超えるスピード感を持ちたい [2]」 という強い信念に貫かれている。

秋葉原を父とし、原宿を母親としてでんぱ組は生まれた。そして私たちは日本の国境を、私たちの萌えきゅんソングによってどうしても超えなければならない。それは指命なんです。[3]

熱狂の(日本)武道館公演から2ヶ月後の勝負シングルは、時代を乗りこなし戦国の世に踊る侍ロック。「萌えきゅんソングは徹底的に萌えきゅんソングでしかないって。もうそれでいいのよ。萌えきゅんソングだけ歌えばいいのよ、とにかく [4]」 と言い放つ、攻めの言葉のマシンガンが、これまでに無くシンプル&ストレートにハートを直撃する。

昭和のサックス吹きは一匹狼に徹したが、「私たちは元気が爆発するところまでやる。そこですべてが現れ私たちは笑顔になり、私たちを聞いたみんなは 微笑む [5]」 と語る平成育ちのアイドル6人組は、新たな日本の魂を歌って、世界中の笑顔に包まれる。


注釈・参照:阿部薫語録より
1.「僕は誰よりも速くなりたい 寒さよりも、1人よりも、地球、アンドロメダよりも どこにいる どこにいる 罪は」
2.「おれは季節を超えるスピード感を持ちたい」
3.「エリック・ドルフィーを父とし、ビリー・ホリディーを母親として俺は生まれた。そして俺はエルック・ドルフィーを、俺のアルトの演奏によってどうしても超えなければならない。それは義務なんだ。」
4.「音は徹底的に音でしかないって。もうそれでいいんだよ。音だけだしゃいいんだよ、とにかく。」 
5.「俺は静けさが爆発するところまでやる。そこですべてが現れ俺はめくらになり、俺を聞いた者は 死ぬ。」



でんぱ組.inc New Single「ちゅるりちゅりるら」7月30日発売!

作詞・作曲 / 前山田健一 編曲/釣 俊輔
Director:志賀匠

★現在、でんぱ組が出演中のカップヌードルCMタイアップ曲「ちゅるりちゅるりら」がシングルリリース!
★前山田健一氏による作詞作曲で、でんぱ組らしくオリジナリティに溢れた高速ジャパニーズサウンドナンバー、
まるで現代と戦国時代がマッシュアップされたような独特な世界観の楽曲に仕上がっている。
★カップリングに収録の「檸檬色」は、「キラキラチューン」の作詞も手がけたmegrockによる作詞曲。


■通常盤(CD)¥926+税 TFCC-89508
[CD] ※初回限定盤A/初回限定盤B/通常盤 収録内容共通
1.「ちゅるりちゅるりら」
2.「檸檬色」
3.「ちゅるりちゅるりら(Off vocal)」
4.「檸檬色(Off vocal)」


■初回限定盤A(CD+DVD)¥1,389+税 TFCC-89506
[DVD]
・「ちゅるりちゅるりら」Music Video
・「ちゅるりちゅるりら」Music Video メイキング映像
・「ちゅるりちゅるりら」Music Video Dance Shot Ver.


■初回限定盤B(CD+DVD)¥1,389+税 TFCC-89507
[DVD]
・「檸檬色」Music Video
・「檸檬色」Music Video メイキング映像
・「檸檬色」Music Video メンバーソロShot

封入特典①:当たりにはレア生チェキランダム封入!(初回限定盤A/初回限定盤B/通­常盤の初回生産分のみ)
封入特典②:DVD+CDダブル購入者キャンペーン でんぱ組.incオリジナルグッズが当たる!
<応募締切:2014年8月13日(水)当日消印有効>

もふくちゃん
速度が
問題なのだ

▼日夜お江戸の平和を守るヒーローで組の娘えいたそ(*´∀`*)/!町の人の笑顔と元気の為に身を削って日々戦うが、ひょんなことから福嶋城の殿もふくと仲良くなる。しかしそんな幸せも束の間、なんとお殿様が(´;ω;`)! (えいたそ☆成瀬瑛美 @eitaso)


▼真剣(キリッ (えいたそ☆成瀬瑛美 @eitaso)


▼しかしどうしても笑いがこらえられない!!!wわーっはっはっは☆ (えいたそ☆成瀬瑛美 @eitaso)



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グンジョーガクレヨン+橋本孝之(.es)@阿佐ヶ谷Yellow Vision 2014.7.23(wed)

2014年07月25日 00時33分00秒 | 素晴らしき変態音楽


ぱらぽ~ら・!****
企画:グンジョーガクレヨン

=出演=
・橋本孝之(.es・as)
・グンジョーガクレヨン(組原正・g/前田隆・bs)




大阪の即興ユニット.es(ドットエス)の橋本孝之はこの春から東京に在住している。仕事の都合だというが、数年前から筆者を含め多くのラヴコールがあったにも関わらず、昨年12月まで東京でのライヴを行わなかった彼が、あっさりと都内に移ることになったことは運命の悪戯と云うべきだろうか?否、むしろ2009年の結成から約4年の月日をかけて、やっと実現した東京上陸がきっかけになって、彼らの運命が大きく啓かれたと言う方が正しい。昨年の東京2デイズを含め、工藤冬里、向井千恵、浦邉雅祥、美川俊治、福岡林嗣、河端一、佐藤薫、鈴木創士、田端満などベテランから、冷泉やソルジャーガレージなど若手まで錚々たる音楽家と交わってきた.es(ドットエス)が、さらに交流の範囲を広げ、大海に漕ぎ出す時が到来した。


(写真の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)

そのひとつの果実がこの日のグンジョーガクレヨンとの邂逅である。長年セルフコンテインド・グループとしてメンバーだけで音楽を熟成させてきたグンジョーも、時を同じくして外の音楽家との交際を開始し、啓かれた活動に意欲を燃やしている。1年前には想像すらしなかった両者の出会いは、ある意味起こるべくして起こった惑星直列現象と言えるかもしれない。



この日はドラムレスのG&Bトゥー・ストリングス編成だったが、グンジョーの音像にブレはない。橋本を迎えての第1音からハイテンションの一斉掃射が炸裂する。まるで共演者を脅し煽るような容赦ない音の強度で攻め立てる。ガソリンに火を注ぎ炎上する演奏環境は、橋本にとっては我が意を得たり。引き裂くようなフリークトーンで応酬する。それに鼓舞され、前田がベース弦を引き千切る勢いで掻き毟る。音楽演奏というより、破壊衝動が全開した30数分が過ぎ去った後に残された、ブーンと蜂が飛ぶような耳鳴りと脳髄の痺れが心地よい。



第2部は打って変わって橋本のソロでスタート。実はライヴでソロ演奏をするのは初めてに近く、心構えが出来てなかったというが、組原が時折叩くハイハットだけをバックに立ち昇る残響感のあるアルトの音色は、もし周波数解析したならば、予想もつかない多種多様な色彩が浮き出るだろう。もはや弦楽器の痕跡すらないグンジョーふたりの音塊が如何に激しく襲い掛かろうとも、橋本の強固なテクスチャーは一瞬たりとも揺るぐことはなかった。



延べ70分に亘る長時間演奏は、橋本にとっては初の体験だったという。三者が一歩も譲らず諍い語り合い睦み合った芳醇な時間は、紛うことなく明日への糧として、演者・聴者いずれにとっても、類い稀な経験になったことは間違いない。この出会いの更なる発展に、運命の女神がほほ笑むに違いないことは、終演後の三人の充実の笑顔を見れば明らかだろう。



1+2
3にならずに
絡み合う

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The Birthday@ZEPP TOKYO 2014.7.21(mon)~生き続ける為のロケンロー

2014年07月23日 00時56分55秒 | ロッケンロール万歳!


The Birthday
COME TOGETHER TOUR 2014



5月31日(土)横浜Bay Hallからスタートした「COME TOGETHER TOUR 2014」の前半戦最終日。17ヶ所でライヴを繰り広げ、正に転がる岩の如き勢いが超満員の「ZEPP TOKYOの古い方」(by チバユウスケ)で炸裂した。最小限のMCで只管ロッキン&ローリンする4人は、波打つ絨毯のような客席と一続きのステージ上の絨毯の上で、4つの火の玉となり、氷柱となり、何よりも尊い人間存在であり続けた。The Birthday=誕生日というバンド名に籠めた思いは、この世に「生」を受けたからには全身全力で生き続けよう、という宣言なのかもしれない。此の4人にとって「生きる」ということはロケンローすることである。こんなくそったれの世界でも、否、くそったれだからこそ、どうしようもなく愛おしい。「明日も生きていてくれるかな?明日も死なないでいてくれるかな?」という言葉はアーバンギャルドのエンディングのコール&レスポンスだが、無口なロケンロー4人組の想いもまったく同じに違いない。心の底から「生きろ!」と叫ぶことこそ、このこんがらがった世界に必要なメッセージなのである。



SET LIST
1.LOVE GOD HAND
2.Buddy
3.アイノメイロアイノネイロ
4.ROKA
5.星の首飾り
6.KIMAGURE KING
7.STAR MAN
8. KNIFE
9.LEMON
10.VIRGIN NUDE BEAT PARTY
11.JOIN
12.なぜか今日は
13. SAKURA
14.PIERROT
15.情熱のブルース
16. 星に願いを
17.くそったれの世界
18.COME TOGETHER
encore1
19.PISTOL
20.涙がこぼれそう
encore2
21.READY STEADY GO
The Birthday@横浜ベイホール 2014.5.31(sat)

●アベフトシ


奇しくも翌日7月22日はThee Michelle Gun Elephant時代の盟友アベフトシの命日。当然チバやクハラカズユキの心には深い想いが漲っていたに違いない。若くして生=ROCKを捨てざるを得なかったアベの分も精一杯生きてROLLし続けよう、そんな気持ちがZEPP TOKYOを光り輝くROCK'N'ROLL BIRTHDAY PARTYに導いたことは間違いない。




冥界から
とんでもない歌
鳴り響く

この機会に、二人の方に追悼の意を表したい。

●副島輝人


70年代から音楽の前衛を見つめ語り育ててきた副島氏に会ったのは2回きり。昨年6月8日「世界フリージャズ記」のプライベートな出版記念の集いに縁あって呼んでいただき、初対面の若輩者の戯れ言を、辛抱強く聞いていただいたこと。7月20,21日の「JAZZ ARTせんがわ2013」でお会いして、喫茶店で80年代のヨーロッパのジャズ祭での貴重なエピソードを聞かせていただいたこと。限りない探究心と包容力が副島氏の生の証だった。
アヴァンギャルド革命のドキュメント~「世界フリージャズ記」

●ジョニー・ウィンター


中学時代の友人の話では、休み時間に仲間とキャンディーズやピンク・レディー、クイーンやキッスやベイ・シティ・ローラーズの話をしていた時に、それまで口もきいたことのない転校生に「ねえジョニー・ウィンターって知ってる?」と話しかけられたのが筆者と出会いだったという。中3の春、筆者のヒーローは間違いなくジョニー・ウィンターだった。卒業祝いに買った初めてのエレキギターはグレコのフィアーバード・モデル。高校でも下敷きにジョニーの雑誌の切り抜き写真を入れていた。それを見たクラスメイトに「ギターがもの凄くうまいんでしょ」と言われて無性に嬉しかったことを覚えている。ジョニーに関しては2011年と2012年の来日公演である程度想いを遂げた気がする。


ジョニー・ウィンター@Zepp東京 2011.4.15(fri)
ジョニー・ウィンター/サニー・ランドレス他@日比谷野音 2012.5.27 (sun)

「明日も生きていてくれるかな?」という問いに本心から「いいとも!」と応えても、それが許されない人もいる。自分にもいつどんなことが起るか判らない。だからこそ、間違いなく生きているこの瞬間を愛おしみ大切にしようと決意を新たにするのである。




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HARDY SOUL/湯浅湾@六本木SuperDeluxe 2014.7.20(sun)

2014年07月22日 00時15分15秒 | 灰野敬二さんのこと


HARDY SOUL + 湯浅湾
Rock, Rhythm & Blues パーティ!!!!!


HARDY SOUL:灰野敬二(vo), 川口雅巳(g), 山崎怠雅(g), 宮崎理絵(b), 藤掛正隆(ds)
湯浅湾:湯浅学(vo/g), 牧野琢磨(g), 松村正人(b), 山口元輝(ds)
DJ: 37A



灰野のR&B/ゴスペル・バンドの3回目のライヴ。前2回を観て筆者が感じた通り、オールスタンディングの会場設定になった。コンクリートの床で、テーブルひとつないスーパーデラックスは些か殺風景だったが、ミラーボールが回る下のステージの両脇に豪華な生花が飾ってあり、ナイトクラブ風の雰囲気を醸し出している。

●湯浅湾

(写真の撮影・掲載については出演者・会場の許可を得ています。以下同)

幻の名盤解放同盟で知られる文筆家兼(音楽)評論家・湯浅学を中心とする4人組ロック・バンド。既に結成10年を超えるベテランだが、気まぐれな活動と少ないリリースで、存在自体「幻」と言えるかもしれない。何度か観たライヴでは、牧野の卓越したギタープレイと、フォークとサイケとアメリカンロックを融合した音楽性に感銘を受けると共に、何だか不思議な戸惑いを覚えたのも確か。見通しのいいスーパーデラックスのステージで観て、その理由が分かった気がした。



湯浅湾の歌は、突然段ボールを想わせる一見ナンセンスなものだが、ミミズとか豚とかケツの穴とか漁業王子とか露悪的で耳障りな語彙が飛び出す歌詞は、殆ど韻を踏んでいないのだ。普段歌を聴くとき意識することのない、いわば暗黙のルールである「韻・ライム」を敢えて破壊した言語感覚は、文学的というには直截的で、口語というより文語調で、親しげなようで他人行儀。流麗なギターと緩急あるグルーヴを奏でるバンド演奏と、ガクガクした棘のある歌詞が同時に左右の耳から震動として伝わり、音楽脳(右脳)と言語脳(左脳)の間に齟齬と陥穽が生じ、どっちつかずの空白に困惑するのではないか?そしてそれこそ湯浅湾が卓越した表現テロリストであるが故の魅力であろう。本人がどう思っているかは別にして、筆者にとっての湯浅湾は感受性の攪乱者なのである。




●HARDY SOUL


今回のライヴに関して灰野は「驚くようなステージになる」と語っていた。まあ、灰野のライヴはいつも蓋を開けるまで何が起るか判らないし、英語で歌い、R&B/ソウルのカヴァーをして、楽器を弾かずヴォーカルに専念するHARDY SOULの存在自体、未だに信じ難い気持ちがしない訳ではない。勿論灰野は真剣そのものだし、HARDY SOULに相当の熱意と自信をもっていることは、これまで2回のライヴで火を見るよりも明らか。なので、何かが起ることは確かだろう。今回山崎が愛用のSGではなく、ストラト型ギターを使用したことが、演奏の印象を大きく変化させた。SGの粘り気のあるファットな音では無く、シャープで線の細いシングルコイルの音は、川口のテレキャスターと音質的な区別がつきにくく、両者の隙間の多いプレイが、まるでキャプテン・ビーフハートのマジックバンド風の不定形なカオスを産み出した。スーデラのPAの音の抜けがいいこともあり、ブルース進行の曲が解体・分離され、姿の違うモノに作り替えられるような異化作用を及ぼした。



灰野は前回よりも格段にバンドを自家薬籠中の物にしており、メンバーの方を向いて身ぶりで指示を出したり、腕を広げて舞ったりする。灰野の動きがバンドに伝わり、表情豊かな演奏が引き出される。これ以上無理な程に高まった演奏をもっともっとというように両腕を上に挙げて煽り、際限なく燃え上がらせるスタイルは不失者でも見られる。ユニットが違っても灰野の信念は変わらない。しかし、HARDY SOULの演奏に濃厚なのは、これが間違いなく5人組のバンドである、ということである。灰野がフロントマンでありリーダーであるのは間違いないが、個々のプレイヤーは迷うこと無く自分自身の演奏をしている。相当量のスタジオ練習を通してバンドとしての信頼関係が築かれていることが伺える。



オーティス・レディング、リトル・リチャード、ジェームス・ブラウン、スモール・フェイセズなどのカヴァーを含む90分強のステージは、ウィルソン・ピケット「ミッドナイト・アワー」の見事な演奏で終了。聴き覚えのない曲もあったが、特に驚くような選曲はなかったと思っていたら、終演直後に読み上げられた演奏曲目を聞いて、我が耳を疑った。一曲目は何と「君が代」。君が代の元になった和歌が収められている古今和歌集が編纂された10世紀頃、その当時使われていたとされる英語での歌唱だという。つまり君が代の発祥と同時代の古い英語で歌った訳だ。日本国歌を敢て古い英語で歌った真意は?いつか本人の口から語られるのだろうか。

1.君が代
2.黒い花びら
3.アウト・オブ・フォーカス
4.昭和ブルース
5.ルシール
6.イン・マイ・ルーム
7.トライ・ア・リトル・テンダネス
8.ブーン・ブーン
9.ティン・ソルジャー
10.骨まで愛して
11.メンズ・メンズ・ワールド
12.ルイ・ルイ
13.シー・ザット・マイ・グレイヴ・イズ・ケプト・クリーン
アンコール:ミッドナイト・アワー

[7/22 13:20追記]
ドラびでお公式ブログ「灰野敬二 Hardy Soul」

真実の
ロックとR&Bは
ゴスペルだ

灰野によれば、ステージに飾ったふたつの花は、ジョニー・ウィンターと副島輝人に捧げたものだという。
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【再録ディスクレビュー#2】でんぱ組/Drop's /スピッツ/ハナエ/ふぇのたす+㊙

2014年07月21日 00時49分28秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


アニメ、ファッション、ポップ・ミュージック…、クールジャパンカルチャーマガジン『81JAPAN』の夏号はでんぱ組.inc特集。創刊号がきゃりーぱみゅぱみゅ特集だったので、原宿&秋葉原という現代日本文化の陽の顔が出揃ったことになる。マイナスからのスタートが現在の快進撃に至ったでんぱ組の思想は、従来の日本的な下剋上とは次元の違う「恋と革命とデイアステージ運動理論」の有効性を証明している。宇宙を救うまでは志を捨てることのないこの6人組+もふくちゃんに学ぶべきことは限りなく大きい。

 
でんぱ組が雑誌でYOSHIKIと競演
人気急上昇のでんぱ組.inc ふところ事情の変化にニンマリ

もし筆者が編集長なら、次号は現代日本文化の陰の顔(アーバンギャルド&キノコホテル)をフィーチャーするところだが、広告収入と発行部数に左右される大手出版社では夢のまた夢。最後の望みは金や権力と無関係なミニメディア、たとえばこのブログに掛っている。気を引き締めてばびゅんと行くしかなあーーーっい!!!といってもキノコ&水玉世界革命戦争論については昨日書き連ねたから、ちょっと一休みして、某音楽レビューサイトの過去記事再録でお茶を濁すことにしたい(死体・姿態・肢体)。付録として執筆を途中で断念し掲載に至らなかった幻のレビューを可能な限り再現してみた。


●Drop's『DAWN SIGNALS』


まずはYouTubeで「赤のブルース」と検索してDrop'sのPVをご覧頂きたい。どっしりしたギターのリフにドスの効いた女性ヴォーカル。人生の酸いも甘いも知り尽くしたような姉御肌のハスキーヴォイスは、カルメンマキや金子マリといった70年代日本のロックの伝説的女性シンガーの香りがある。しかしこれが女子高生の演奏だと判る人はおるまい。

Drop'sは2009年に札幌で同じ高校に通う女子高生5人で結成された、俗にいう「けいおんガールズ」だが、当時コピーしたのはSuperflyだった。高校2年生の夏休みに作った初のオリジナル曲で挑んだ高校生バンドコンテストでグランプリを獲得し、一躍注目を集めた。うるさがたのロック薀蓄オヤジを驚愕させ、The Birthdayが所属するRockin' Bluesのレーベルから2011年、高校3年生の7月に、ミニアルバム『Drop's』でデビュー。リードトラック「赤のブルース」をはじめ、7曲全てがハイティーン女子とは信じがたい硬派のブルースロックだった。徐々に彼女たちの評判は北海道を超えて全国に知れ渡り、高校を卒業した2012年に北海道の夏フェス「Join Alive」に出演を果たし、東阪名ツアーを敢行。今年3月の2ndミニアルバム『LOOKING FOR』に続き、満を持してフルアルバム『DAWN SIGNALS』でメジャー・デビューを果たした。

いぶし銀のヴォーカルと泥臭くブルージーなサウンドは、ミッシェルガン・エレファントやThe Birthdayといった本格派R&Rのファンを唸らせる説得力に満ちている。花柄のワンピースが似合う小柄な中野ミホの書く歌詞の赤裸々な状況描写の中には、テン年代を生きる若者の焦燥と希望が溢れている。時代に流されない真の代弁者として、同世代から大きな支持を集めるに違いない。オヤジ世代は「イマドキの若者にも気骨のある連中がいるな」、と頼もしさに笑みを浮かべながら娘たちのブルースに身を任せるのが吉。(2013.9.9)




●スピッツ『小さな生き物』


スピッツの3年ぶりの14thアルバム『小さな生き物』がリリースされた。今までジャケットには女性を起用してきたが、珍しく男性モデルのアートワークである。『空の飛び方』よろしくハンググライダーで飛び立とうとする少年像は、引退を表明した宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』へのオマージュか?スピッツにとっての新たな旅立ちを示唆するのかもしれない。

先行シングルの「さらさら」でも明らかな通り、アルバム全体には特に新機軸への挑戦はない。昔ながらのマサムネ節が貫かれている。デビュー作『ヒバリのこころ』以来スピッツの歌には「空」「宇宙」「鳥」など「ハネモノ」が溢れている。夢占いでは「空を飛ぶ夢」のキーワードは、永遠の少年/自由な冒険心/性的欲求である。スピッツのシンボル・カラーは間違いなく「青」であり、人生で最も青い季節は「思春期=青春」に他ならない。すなわち、スピッツとは青春を生きる少年の自由な空想力と欲求不満の苦悩を描き続けるバンドと言える。草野マサムネのナイーヴな感性は永遠の少年そのものであり、それは45歳の中年になった今も変わることは無い。

描かれた13篇のショート・ストーリーは旅立ちの予感に満ちている。刹那的な逃避行ではなく、自由で未知の世界でのあなたとの出会いを信じて最果てを目指す旅路。「けものたちは故郷をめざす」(安部公房)、「青年は荒野をめざす」(五木寛之)と人はいつも何かを求めて旅に出た。さてスピッツの4人がめざす先はいずこ? その答えを永遠に探す旅なのかもしれない。(2013.10.8)




●ハナエ『十戒クイズ』


21世紀初頭の日本のポップの流れは相対性理論以前/以降に区分できる。無表情なヴォーカル、ポップ過ぎて毒のないサウンド、無意味な言葉が韻を踏む歌詞、匿名性を武器にしたメディア戦略がテン年代のJ-POPに与えた影響は大きい。特に彼らのあとに登場した女性メインのロック・バンドは少なからず影響を受けている筈だ。ただし、模倣するのは簡単だが、個性をアピールするのは逆に困難を伴うことも確かである。

昨年6月に相対性理論を離脱した真部脩一がプロデュースを手掛ける19歳の美少女シンガーがハナエ。相対性理論の音楽面の要だった真部だけに、明らかにポスト相対性理論的なサウンドをクリエイトしているが、『十戒クイズ』とタイトルされたデビュー・アルバムには、それだけに収まらないハナエ本人の謎めいた魅力が横溢している。福岡出身のハナエは、12歳で宅録をはじめ、13歳の時にレコード会社に送ったデモテープが認められ、デビューに至った若き才能。可愛いだけじゃなく退廃的なものを好み、レトロな少女文化に憧れるという。全曲真部の作詞作曲だが、クールなエレクトロ・ビートに乗せて少女特有のふわふわした不安定さを歌うハナエのウィスパーヴォイスは、例えばきゃりーぱみゅぱみゅのように、曲の魅力を過剰に増幅するオリジナリティに満ちている。聖書に因むアルバムタイトルや神様、UFO、神聖ローマ、ジーザスが飛び交う不可思議ワールドが心地よい。(2013.12.4)




●ふぇのたす『胸キュン’14』


テン年代という括りも古臭くなるほど、現在進行形の日本のポップスの変遷は激しい。見逃せないのはやはりアイドル・シーンの活況だろう。ロック、テクノ、クラブ・ミュージック、パンク、メタル、ラップ等あらゆるジャンルを呑みこむアイドル音楽には、90年代のバンド・ブームや渋谷系、アングラ音楽出身のベテラン・ミュージシャンに加え、ユニークな若手音楽家が多数参画し、音楽的才能を発揮している。

東京大学哲学科卒のヤマモトショウも寺嶋由芙や南波志帆、タルトタタンなど、アイドルを含む作詞・作曲・プロデュースで頭角を現す新進音楽家である。彼が率いる3人組音楽グループがふぇのたす(Phenotas)。ロリータ・ヴォイスの女性シンガーのミコ、デジタルドラムの澤"sweets"ミキヒコとヤマモトショウ(g,syn)が鳴らすサウンドは、スウィートでブライトなエレクトロポップ。軽快なダンスビートと「すし」や「ケーキ」をテーマにしたキュートな歌には、悩みなんて忘れてしまうほど、圧倒的にポジティヴなエナジーが溢れている。(2014.5.22)




前進とは
過去を遡ることで
未来を直すこと

【特別付録】本邦初公開!幻のレビュー!
●八代亜紀『夢の夜 八代亜紀 ライヴ・イン・ニューヨーク』


演歌の女王がジャズを歌う!と聞くと如何にもやらせっぽい、テレビの歌番組の定番ネタのようだが、女王が歌手を志したきっかけがジュリー・ロンドンだったと知れば、妙に納得してしまうのである。

カリフォルニアの田舎町で育ち、15歳でロサンゼルスに移り、エレベーター・ガールをしながら女優・歌手としてキャリアをスタートさせたジュリー。熊本県八代市に育ちバスガイドになったが、15歳で父親の反対を押し切り上京、銀座のクラブ歌手としてプロ・シンガーを目指した八代。ジュリーの「スモーキーボイス」と八代のハスキーボイス。驚くほど共通点の多い二人の接点は「ジャズ」であった。2012年、小西康陽のプロデュースでリリースした「夜のアルバム」で、自らのルーツであるスタンダードや流行歌をジャズ・アレンジで披露。憂いのある少女風のジャケット写真も印象的な好企画だった。このアルバムは世界75か国で配信され、八代は歌手活動42年目にして世界デビューを果たすこととなった。

その評判がアメリカに届き実現したニューヨークの名門ジャズクラブ、バードランドでのワンマン公演のフル・ステージを収録したのが本作である。その模様はテレビでも報じられたので、観た方もいるだろう。NYの凄腕ジャズコンボとのリハーサルでは中々(ここで断筆)(2013.9.5)



*断筆の理由:寝落ち
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キノコホテル@恵比寿リキッドルーム 2014.7.18(fri)~呪縛の胞子を浴びる快楽園

2014年07月20日 00時15分15秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


キノコホテル
<サロン・ド・キノコ~恋の蟻地獄>




4thアルバム『マリアンヌの呪縛』発売記念ツアー最終日。物販グッズのジャケの大蛇が蜷局を巻く蛇(ヘヴィ)イラストがPOP。2月大雪のエレクトリック・プルーンズ以来今年二回目の実演会参戦だが、プルーンズ、マニ・ノイマイヤー、スージー・クアトロといった海外ベテラン勢との対バンが続いたせいか、筆者を含めオヤジ層が増加しているような気がする。男子率が圧倒的に高いのは毎度のことなので、マリアンヌが限定女子会ライヴをやりたがる気持ちがわかる。
エレクトリック・プルーンズ/キノコホテル@新代田FEVER 2014.2.8(sat)



何度も観ている割にマリアンヌに女子らしさを感じたことは多くないのだが、指でイカせるベース女子ジュリエッタ霧島が加入し、バンドの力量が大幅アップするのに反比例してマリアンヌが支配人(リーダー)の重圧から解放され、ガールズパワーを発揮し始めているように思える。それは決して弱さや脆さではなく、夢想力と現実性が渾然一体とした少女期から、サディズムとマゾヒズムの使い分けを心得た大人の女へと成長する、人間本来の生命力の発露としての飛躍である。昨年に続き深夜ヘヴィ(蛇)ロックパーティー出演も伊達ではない。



その証拠に、繰り返されるキーボードを放置してのマイクアピールや、各従業員との絡み、挑発的な肌露出が、21曲130分最新曲から逆に年代を辿っていくようなセトリと違和感無く融和し、エンターテインメントとして完成の域に近づいている。2007年の創業同時から7年に亘り独自の世界を醸造し続ける希有な女子バンのステージは、まさしく現代日本の文化の断面だと言えよう。蛇ロックでも対バンする同じくコスプレ系のアーバンギャルドと帯同して裏JAPAN EXPO海外興行を鬱(打つ)のは如何だろうか?
【勝手に翻訳】アーバンギャルド『鬱くしい国』インタビュー~日本の心の戦争を暴く煽動者



THE ELECTRIC PRUNES『TOKYO』PV

外国に
キノコの胞子
撒き散らせ

               
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